分析能力で旅をする ~転生した理由を探すためにレインは世界を回る

しき

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第二章

第18話『分析スキルは判別にも役立つ』

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アルガード国立高等学院に通い始めてから二週間は経っただろうか。特別講師として何事もなく…いや、相変わらずレミやピエールには遠ざけられているが、仕事としては何事もなく勤めている。図書館での情報収集もある程度満足している反面、私にとっての有益な知識が中々手に入らなくなり始めた。

今日は学院での手伝いもなく、一日自由に過ごせる日である。毎日図書館に通っているのもマンネリとしてきたので、今日は討伐依頼を受けようと考え、今はギルドの掲示板の前にいる。

まだ太陽が完全に昇りきったばかりの時間帯である。掲示板に貼られた依頼も新設されたばかりなので、冒険者が掲示板の前だったりテーブルの周りだったりいたるところにいる。

「今日は討伐依頼を受けてみようかな」

魔物から素材を採取する採取依頼と、魔物を倒すことを目的とする討伐依頼では難易度が結構違う。準ボス級やボス級を相手にする、といったら想像しやすいだろう。_果たしてそんなのFランク冒険者が依頼を受けられるのだろうかと一抹の不安も覚える。

依頼を一つ一つ見てゆく。ダットの森のマッドプラント討伐(E)、ベルベール山のアルビノワーム討伐(B)、夜中のスカルエンペラー討伐(D)…うん。ランクが足りない。やっぱりFランクじゃあ受けられる依頼の幅も狭くなっちゃうなぁ。

それでも、なんとか一つだけFランクでも受けられる討伐依頼を見つけた。当然他の依頼に比べて報酬も少ないから、他の冒険者がこれを手に取ることはなかっただろうけれど。

その依頼を持って受付でテオとやりとりをする。ちなみに契約金は大銅貨6枚。報酬金は小銀貨6枚だ。

「王都アルガード南部街道のメタモルストーンの討伐、の依頼ですね。受理しました」

「このメタモルストーンってどんな魔物なの?」

「岩だと思って小休憩する人間や動物を襲う魔物ですね。普段は地面に埋まっていますが、地上に出ると三メートルぐらいの大きさになります」

三メートル…ということは学院にある本棚ぐらいの高さか。結構な大きさだ。

「それってFランクでも倒せるものなの?」

「はい。動きが鈍いので。ただ、潰されると死にますので。気をつけてくださいね」

死にます、と真面目な顔で言われて身体が緊張した。魔物と退治することはここに来てから何度もあったが、死ぬかもしれない可能性を正面から言われたのはこれが初めてだったからだ。

ギルドを出た私はまず道具屋へ足を運んだ。必要以上の準備をするのに越したことはない。ポーション、魔力瓶を五つずつ買い、日を跨ぐ可能性も考えてテントや寝袋、ランタンなども買っていった。魔物除けのお香も買って、夜を過ごす準備をした。したはず。

実際野宿なんてしたことがないわけで。一度体験してみないと何が必要か分からない。


現在アルガード南部の街道。街道の先にはこのパドン大陸とガルナ大陸を結ぶ大きな橋があるらしい。そしてその橋を作るために生まれたのが二ーミャという町だ。

で、その二ーミャ町と王都アルガードを結ぶこの街道に出た、メタモルストーンという魔物を倒す、というのが今回の依頼の内容だ。群れて行動する魔物ではないらしく、世界のどこかしこに出現するらしい。だから戦闘は基本一対一を想定する形になる。

…はずなんだけど。

「えぇ~っと…?」

街道の脇の草原には丁度座れそうな丸っこい岩が点在していた。見たことない魔物だから岩との区別がつかない。一つ一つ確かめていくしかないのか?

いや、ここでこそ分析スキルの使い所だ。岩なら岩、魔物なら魔物と識別されるはずだ。私は一番近くにあった岩を視た。



【名称】パドンストーン
【成分】パドンストーン
【属性】地
【破損】0%
【効果】-



ふむ。これは正真正銘の岩…いや、石だ。パドンストーンか。ここがパドン大陸と呼ばれているから、そこから生成された石という意味でパドンストーンという名前を当てられているんだろう。他の石も調べてみる。

【名称】パドンストーン
【名称】パドンストーン
【名称】パドンストーン
【名称】パドンストーン

どれもこれも同じ石だなぁ。でも今のところこれしか見分ける方法がないから、虱潰しらみつぶしにやっていくしか…と、思った時に一つだけボートをひっくり返したような、とても座りやすそうな石をみつけた。一見材質は他の石と同じように見えるが、もしかして_。



【名称】メタモルストーン
【種族】魔物-ゴーレム
【体力】5,000/5,000
【魔力】1/1
【属性】地
【弱点】地・打
【スキル】石化耐性Lv1



思った通り、お目当てのメタモルストーンである。意外と分かりやすかったけれど、警戒しなかったら気づかなかったかもしれない。何も知らぬ冒険者が不用意に近づいてしまうのもわかった気がした。

さて、それにしてもどうやって倒そうか。少なくとも、これは地面に埋まっている状態だから、全身を地上へ出す必要がある。とりあえず軽くちょっかいをかけてみるか。

<<ストーンバレット>>!!

拳ぐらいの大きさの複数の石が、メタモルストーンに勢いよく向かっていく。生身の人間に当たれば身体が傷だらけになり、至るところで内出血は不可避だろう。メタモルストーンにとっては_少し表面が欠けた程度だった。

うーん、だめか。…というより、地属性なのに、弱点がその地属性なんてことあるんだ。目には目を歯には歯を的なものなのかな。_の割にあんまり効いている気がしなかったけど。あと、「打」っていうのはなんだろう。打撃って意味かな。それならハンマーみたいなもので攻撃するのがいいのかな。当然持っていないけど。

…と、あれこれ考えていたら、グゴゴと地鳴りのようなものが聞こえた。僅かに地面が縦に揺れている。メタモルストーンを見ると、露出している部分の両脇から新たな石が地面から這い出るようにゆっくりと現れた。それが完全に出切ったら、露出している部分の地面が盛り上がって、埋まっている部分が徐々に見え始めた。最後に足のような部位も出てきて、メタモルストーンは完全に姿を現した。

大きさはテオから聞いた通りに私よりも二倍程度大きい。一頭身の胴体は丸っこく、元々露出していた部分はモヒカンのように見える。腕も大きな石がビーズのように繋がっている。足も大きいもののとても短く、胴体だけで三メートルの大きさのようだ。

姿を現したメタモルストーンは私に向かって歩き出した。ドスン、ドスンと音を立てて、とても遅い速度で。逃げ切ろうとすれば足の遅い人でも容易だろう。私は杖を両手で握って体勢を整えた。

「今回は依頼だから、やっつけないとね」

<<フレイムサークル>>!!

メタモルストーンの足元の地面が円状に燃えている。その最中メタモルストーンは足の動きを止めていた。しかし、炎が燃え尽きると、再び私に向かってきた。効いている…の?

【名称】メタモルストーン
【体力】4,300/5,000

一応効いているか。でも、火魔術Lv2でも五分の一も削れないとは。地道に削ってゆくしかないか。相手の足が遅いのが幸いだった。

今度は別の魔法で攻撃してみよう。いまのが火魔術Lv2だったから、水魔術Lv2でどんなものか試してみた。

<<スプラッシュ>>!!

空から勢いよく溢れた水がメタモルストーンの胴体を目掛けて流れてゆく。普通石は水に侵食されて削られるものだが、見たところそんな様子はない。動きを止めることはできたが、流されてはくれなかった。どれだけ重いんだこの魔物は。

【名称】メタモルストーン
【体力】3,950/5,000

数値的に火魔術より効いている感じはしない。同じレベルの魔法を唱えているはずだけど、弱点でなくとも属性によって与えるダメージが変わるのかな。

だとしたら、地属性はどのくらい効くのだろうか。ちょっかいをかけたときはあんまり手応えがなかったけれど。

<<ストーンバレット>>!!

手の拳ぐらいの大きさの複数の石が、メタモルストーンに勢いよく向かっていく。すると今度は動きを止めるだけでなく、仰け反ったような振る舞いを見せる。本当に弱点なんだ。

【名称】メタモルストーン
【体力】3,500/5,000

…ん?地魔術Lv1<<ストーンバレット>>は水魔術Lv2<<スプラッシュ>>で与えたダメージよりも大きいのか?弱点を突くって相当大事なんだな。

でも、だとしたら火魔術はどうしてあんなに効いたんだろうか。草原だから…はあんまり関係なさそうだし、火魔術の攻撃力が増幅される要因…。

わかった。杖だ。今私が持っているのは鉄の杖で、属性は「火」。だからダメージが大きかったのか。そうはいっても、火魔術Lv2と地魔術Lv1では与えるダメージと対する魔力消費量の関係上、明らかに地魔術のほうが効率がいい。そうなると石の杖も欲しくなってくるな、と考えてしまう。

<<ストーンバレット>>!!

再び地魔術をメタモルストーンに向かって放った。無論避けられるはずもなく全弾命中する。それを二、三回繰り返すとメタモルストーンが先程よりも止まってから動き出すまでに時間を要していると気づいた。あともう少しで倒せるかもしれない。

…と、ここで自身のスキルレベルが上がっていることに気づいた。それはメタモルストーンの弱点を突き続けていた地魔術で、レベル2になっていた。折角なら、新しく覚えた魔法を試してフィニッシュとしよう。

<<ロックキャノン>>!!

岩石砲がメタモルストーンの胴体の中心に向かって発射された。なんと胴体を貫通し、空いた穴からヒビが広がってゆき、瞬く間にメタモルストーンは跡形もなくバラバラになった。

「ふう」

無事に倒せたことに安堵して一息つく。まだ倒しやすい魔物でよかった。だが如何せん相手の体力が多かったせいで、魔力をほぼ全て消費してしまった。念の為魔力瓶を取り出して飲み干す。ちょっと苦い味が喉を刺激した。半分ぐらいは回復したかな。

これで討伐依頼は完了した。バラバラになった大きさが疎らな石をいくつか集めたが_どうにもマジックバッグに入れる気になれない。いや、見た目はただの石だし、バッグの中身が汚れるってことも恐らくないんだろうけど、なんとなく嫌になる。もしこれが獣系モンスターの肉だとして、バッグに簡単に入れられるだろうか。いや、私には無理だ。

「魔物用のマジックバッグを買おうかな…」

今回は仕方なくバッグに入れて、持ち帰ることにした。それでもバッグの重さは変わらなかった。

結果的に野宿する必要はなくなった。よかったような、残念なような。でもまぁ。そのうちまた機会があるだろう。

メタモルストーンを倒した場所をちらっと見て、私はギルドへ戻っていった。
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