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第2章
テナシテを頼る
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「プラティヌゴーレムの情報ですか……」
「はい。何でもいいので!」
経緯を話して迫るようにように言うとテナシテさんは苦笑した。
「心配なさらなくても大丈夫ですよ。数える程ですが見たことも
ありますし」
「そうなんですか⁉」
「はい」
(魔王に連れ出してもらったときに見たのか……)
興奮気味の俺とは対照的に冷静に話すテナシテさん。
心を読めるというのにほとんど動じないのはスゴいと思う。
「ちなみにモトユウさんはゴーレム種と戦ったことは?」
「カッパーとシルバーならあります」
「そうでしたか。なら、ご存知でしょうけれど、物理は通りにくいですよ」
(あ、やっぱり?)
僅かな望みをかけていたが、現実を突き付けられてガックリと肩を落とす。
するとテナシテさんがわざとらしい笑みを浮かべた。
「ですがモトユウさん、あなたには秘薬があるでしょう?」
「へ?確かにありますけど……」
まさか薬が出てくるとは思わなかったので瞬きを繰り返す。
以前、エンシェントオーク討伐のときにテナシテさんが俺用に作ってくれた物だ。一時的にパワーアップできるが、
飲み過ぎると副作用がキツく、最悪1日寝たきりになってしまう。
「薬飲んだら俺だけでも倒せるんですか?」
「倒せるかどうかはわかりませんが、鉱石なら採れるのではない
でしょうか」
(確かに討伐が目的じゃないし、1人でできるのならそれに越したことは
ないな。あ、でも……)
城の外に行くときはデュークさんについてきてもらわないといけないの
だった。俺の監視という名目らしいが、たぶんそれだけではないと思う。
「何か不安な点でも?」
「えっとですね、城の外に行くときはデュークさんと一緒じゃないと
いけなくて」
「おや、そうでしたか。フフ、心配性ですねぇ」
「え?」
(魔王が?それともデュークさんが?)
「お2人ともですよ」
そのまま言葉が続くかと思っていたのにテナシテさんは口を閉じた。
ときどき、こういうことをしてくるので勝手に期待を裏切られて気分が
下がる。
「デュークさんなら喜んでついてきてくれると思いますよ、
申し訳ないという気持ちが勝つのであれば、他の方に頼んでみては
いかがですか?」
「少し考えます」
(さすがに他団長のアパリシアさんやへネラルさんは忙しいよな。
かといって副団長たちも暇とはいえないだろうし。
部下のモンスター借りてもいいんだろうけど)
モンスターに「墓地送り」は適用されない。もし俺のミスで死なせてしまったら謝るだけじゃすまないだろう。
そのことを考えると魔族1択だ。
(やっぱりデュークさんに頼むことになりそうだな……)
「そうですか。
プラティヌゴーレムの話に戻しましょう。生息地はここより南東の岩場
です。岩に擬態していますので、1つ1つ叩いていかないといけませんよ」
「擬態⁉」
(マジで⁉シルバーとか普通に動き回ってたのに?)
「今回のモトユウさんのように鉱石目当てで狩られてしまうことがほとんどですので、擬態を身につけたみたいですよ」
鉱石が採れるゴーレム種や木材が採れるツリーズ種は資源確保を目的とした冒険者や用心棒をつけた商人に狩られていた。
もちろん、自生している素材もあるのだがモンスターから採れる物の方が
質がよく、店で高値で取り引きされているらしい。
いくらモンスターたちも勝手に増えていくとはいえ狩られるスピードが早く、
繁殖が追いついていないという話も聞いたことがあった。
「すみません……」
「モトユウさんは依頼でしょう?それに討伐ではありませんから、罪悪感を
覚えなくても大丈夫ですよ。
薬は以前お渡しした分が残ってますよね?」
「はい。それに採りに行くのは今日じゃないので、また足りなくなったら
来ますね」
「わかりました。念のため用意しておきます」
帰ろうと思って立ち上がったが、今まで時々疑問に浮かぶことをテナシテさんに聞いてみることにする。
「テナシテさん、答えづらかったら言わなくて大丈夫なので、
1つ聞いてもらえませんか?」
「はい?」
「その、魔王さんって優しいですよね。もともとからですか?」
そう尋ねるとテナシテさんは眉をしかめて黙り込んでしまった。聞こうかどうか迷っていたのだが、
テナシテさんならデュークさん以上に知っている可能性が高い。
それに「目も当てられないような仕事をさせる」とか言いながら音沙汰がないのも引っかかる。
「そうですね、歴代に比べるとお優しいです」
「歴代⁉」
「何を仰ってるのですか。ニンゲンにも統治者がいて代替わりするのでしょう?
それと同じですよ」
「そ、そうですけど……」
(魔族って長生きで頑丈だし簡単に死なないし。
それに「墓地送り」が――あ‼)
そこまで考えて、魔王に殺されると「墓地送り」が効かないとデュークさんが言っていたのを思い出した。
しかしそれでも疑問は増えていく。
(魔王の入れ替わりって俺たちに倒された時ぐらいじゃないのか?
魔王じゃなきゃ魔族は殺せないんだろ?)
あれこれ考えているとテナシテさんが笑った。
「ずいぶん真剣に考えてますね、モトユウさん。
魔王様に直接聞かれたらいかがですか?」
「でもこんな思いきったこと――」
「今、ここにいらっしゃいますから」
「え゛⁉」
予想外の言葉に開いた口が塞がらない。
固まったままでいると部屋の隅に魔王が姿を現した。
「はい。何でもいいので!」
経緯を話して迫るようにように言うとテナシテさんは苦笑した。
「心配なさらなくても大丈夫ですよ。数える程ですが見たことも
ありますし」
「そうなんですか⁉」
「はい」
(魔王に連れ出してもらったときに見たのか……)
興奮気味の俺とは対照的に冷静に話すテナシテさん。
心を読めるというのにほとんど動じないのはスゴいと思う。
「ちなみにモトユウさんはゴーレム種と戦ったことは?」
「カッパーとシルバーならあります」
「そうでしたか。なら、ご存知でしょうけれど、物理は通りにくいですよ」
(あ、やっぱり?)
僅かな望みをかけていたが、現実を突き付けられてガックリと肩を落とす。
するとテナシテさんがわざとらしい笑みを浮かべた。
「ですがモトユウさん、あなたには秘薬があるでしょう?」
「へ?確かにありますけど……」
まさか薬が出てくるとは思わなかったので瞬きを繰り返す。
以前、エンシェントオーク討伐のときにテナシテさんが俺用に作ってくれた物だ。一時的にパワーアップできるが、
飲み過ぎると副作用がキツく、最悪1日寝たきりになってしまう。
「薬飲んだら俺だけでも倒せるんですか?」
「倒せるかどうかはわかりませんが、鉱石なら採れるのではない
でしょうか」
(確かに討伐が目的じゃないし、1人でできるのならそれに越したことは
ないな。あ、でも……)
城の外に行くときはデュークさんについてきてもらわないといけないの
だった。俺の監視という名目らしいが、たぶんそれだけではないと思う。
「何か不安な点でも?」
「えっとですね、城の外に行くときはデュークさんと一緒じゃないと
いけなくて」
「おや、そうでしたか。フフ、心配性ですねぇ」
「え?」
(魔王が?それともデュークさんが?)
「お2人ともですよ」
そのまま言葉が続くかと思っていたのにテナシテさんは口を閉じた。
ときどき、こういうことをしてくるので勝手に期待を裏切られて気分が
下がる。
「デュークさんなら喜んでついてきてくれると思いますよ、
申し訳ないという気持ちが勝つのであれば、他の方に頼んでみては
いかがですか?」
「少し考えます」
(さすがに他団長のアパリシアさんやへネラルさんは忙しいよな。
かといって副団長たちも暇とはいえないだろうし。
部下のモンスター借りてもいいんだろうけど)
モンスターに「墓地送り」は適用されない。もし俺のミスで死なせてしまったら謝るだけじゃすまないだろう。
そのことを考えると魔族1択だ。
(やっぱりデュークさんに頼むことになりそうだな……)
「そうですか。
プラティヌゴーレムの話に戻しましょう。生息地はここより南東の岩場
です。岩に擬態していますので、1つ1つ叩いていかないといけませんよ」
「擬態⁉」
(マジで⁉シルバーとか普通に動き回ってたのに?)
「今回のモトユウさんのように鉱石目当てで狩られてしまうことがほとんどですので、擬態を身につけたみたいですよ」
鉱石が採れるゴーレム種や木材が採れるツリーズ種は資源確保を目的とした冒険者や用心棒をつけた商人に狩られていた。
もちろん、自生している素材もあるのだがモンスターから採れる物の方が
質がよく、店で高値で取り引きされているらしい。
いくらモンスターたちも勝手に増えていくとはいえ狩られるスピードが早く、
繁殖が追いついていないという話も聞いたことがあった。
「すみません……」
「モトユウさんは依頼でしょう?それに討伐ではありませんから、罪悪感を
覚えなくても大丈夫ですよ。
薬は以前お渡しした分が残ってますよね?」
「はい。それに採りに行くのは今日じゃないので、また足りなくなったら
来ますね」
「わかりました。念のため用意しておきます」
帰ろうと思って立ち上がったが、今まで時々疑問に浮かぶことをテナシテさんに聞いてみることにする。
「テナシテさん、答えづらかったら言わなくて大丈夫なので、
1つ聞いてもらえませんか?」
「はい?」
「その、魔王さんって優しいですよね。もともとからですか?」
そう尋ねるとテナシテさんは眉をしかめて黙り込んでしまった。聞こうかどうか迷っていたのだが、
テナシテさんならデュークさん以上に知っている可能性が高い。
それに「目も当てられないような仕事をさせる」とか言いながら音沙汰がないのも引っかかる。
「そうですね、歴代に比べるとお優しいです」
「歴代⁉」
「何を仰ってるのですか。ニンゲンにも統治者がいて代替わりするのでしょう?
それと同じですよ」
「そ、そうですけど……」
(魔族って長生きで頑丈だし簡単に死なないし。
それに「墓地送り」が――あ‼)
そこまで考えて、魔王に殺されると「墓地送り」が効かないとデュークさんが言っていたのを思い出した。
しかしそれでも疑問は増えていく。
(魔王の入れ替わりって俺たちに倒された時ぐらいじゃないのか?
魔王じゃなきゃ魔族は殺せないんだろ?)
あれこれ考えているとテナシテさんが笑った。
「ずいぶん真剣に考えてますね、モトユウさん。
魔王様に直接聞かれたらいかがですか?」
「でもこんな思いきったこと――」
「今、ここにいらっしゃいますから」
「え゛⁉」
予想外の言葉に開いた口が塞がらない。
固まったままでいると部屋の隅に魔王が姿を現した。
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