GPTであそぼ

鹿又杏奈\( ᐛ )/

文字の大きさ
22 / 55
すずちゃんのJK生活

第20話 夏空の下の消失点

しおりを挟む
「異変が再発してる。しかも、昨日とは別の場所」
一郎の報告に、文芸部部室の空気が一瞬で張り詰めた。

旧商店街とは別の地点──今度は住宅街の外れ、造成予定地の裏山付近。
そこに、新たな“靄”が発生していた。

「消失領域が、拡大してる?」
優凜が地図に印をつけながら眉をひそめる。「ただの迷子結界や異能干渉じゃないわね。これ、根が深いかも」

紅葉も静かに頷く。「昨日のは前座だ。今回は本番。小鈴ちゃん、一郎、優凜さん。動ける?」

「もちろんです」
「準備はできてる」

小鈴の胸は少し高鳴っていた。
恐怖ではなく、確信──昨日の自分より、今日の自分はきっと強い。

──私たちは、裏文芸部。
──誰にも知られず、この学園を、この町を、守る存在。



問題の現場に着いたのは、昼を過ぎたばかりの時間帯だった。
けれど、裏山の林道はどこか肌寒く、湿った空気が肌に張りつく。

蝉の鳴き声が、まるで結界のように途切れる。
その境界を越えた瞬間、空気が明らかに変わった。

「ここが……中心域」
一郎の声は静かだが、緊張がにじんでいる。

「中に、“固定された異能”がある。誰かが“置いた”んだ。悪意を持って」

紅葉が目を細めた。「観察のためか、あるいは……実験か」
声には冷たさが宿っていた。「いずれにしても、止めなきゃいけない」

草むらをかき分け、奥へ進むと、微かに歪んだ空間が見えてきた。
空気が波打つような現象の中心に、ひとつの人影が立っている。

「誰か……いる?」

しかし、すぐに違和感に気づく。そこに“人”はいるが、“気配”がない。
まるで、人という形をした空虚。

「来る!」

その声と同時に、黒い霧が周囲から吹き上がった。
昨日のものよりも遥かに強く、そして……“意志”を感じる。

「《探索》、発動!」

一郎が能力を解放し、空間の構造を展開する。
青いラインが地面を這い、空間全体に霧の根が張り巡らされているのが見えた。

「広がってる! 結界じゃない、これは異能の“端末”だ! 本体は別にある!」

「なら、端末ごと食べてやる!」

小鈴が前へ。スカートの裾を押さえ、手を前に。《貪食》が光を放ち、唸るように浮かび上がる。
吐息を整え、集中を研ぎ澄ます。鼓動が指先まで響いていた。

「──《貪食》、起動」

球体が巨大な口のような亀裂を生み、霧へと突撃。
すさまじい衝撃波が周囲を震わせ、靄が渦を巻いて吹き飛ぶ。

「今のうちに結界外まで転移するよ! 優凜さん、準備!」

「はいはい、ちょっと待って。装填──武装《対・虚影仕様》、完了!」

優凜の手から放たれたのは、エッジの立った刃のような光。
それが結界の縁を切り裂くと、裂け目の奥に明るい空がのぞいた。

「紅葉、今だ!」

「転移展開──“全員跳躍”!」

その瞬間、世界が白く弾けた。



気がつけば、小鈴たちは丘の上に立っていた。
見慣れた町並みが、遠くまで広がっている。
何の変哲もない風景なのに、息が整うまでにしばらくかかった。

「……霧も、歪みも、消えてる」
優凜が周囲を見渡しながら、やがて静かに頷く。

「うん、もう残滓もない。完全に処理できた」

小鈴も膝に手をついて、深呼吸する。胸の中に、じわじわと達成感が広がっていく。

「よくやった、小鈴ちゃん。一発で封じられるとは思わなかったよ」

「えっ、あ……はい、ありがとうございます……!」

「ねえねえ、また反応大きくない? ねえ?」
紅葉が横からにやにやと突っついてくる。

「ち、違いますぅぅぅぅ……!」

笑い声が空に響いた。照れながら、けれどその音が心地よかった。
今日も町は、平和だった。



帰り道。
木々の間から洩れる陽が、道をまだらに照らしている。

山道を抜ける手前、紅葉がぽつりとつぶやいた。

「小鈴ちゃん」

「はい?」

「この活動を続けていく中で、絶対に、楓には何も知られちゃダメだよ」

小鈴は頷く。「……はい、わかってます」

「楓は、“異能”を引き寄せる。無自覚で、無防備で、でも──その中心にあるのは人を信じる力だ」

「……知ってます。だから、守りたいです」

その言葉に、紅葉は満足げに微笑んだ。

「それが、君の“意思”なんだね」

──“意思”が、異能のかたちを決める。

小鈴の中には確かに、“守りたい”という願いがあった。
それは誰かに言われたからでも、役割を与えられたからでもない。
自分の、意志だった。



その夜。
裏チャットには「事件、解決」とだけ短く報告が流れた。
そのすぐ下に、「明日は黒酒家の別荘!準備忘れずに!」という、明るい通知が重なる。

表と裏。
どちらも、彼らの“日常”。

──けれど、次に訪れる非日常は、思ったよりも騒がしいものになる。

そしてそのとき、小鈴が手にする《意思》は、確かな力となるはずだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

別れし夫婦の御定書(おさだめがき)

佐倉 蘭
歴史・時代
★第11回歴史・時代小説大賞 奨励賞受賞★ 嫡男を産めぬがゆえに、姑の策略で南町奉行所の例繰方与力・進藤 又十蔵と離縁させられた与岐(よき)。 離縁後、生家の父の猛反対を押し切って生まれ育った八丁堀の組屋敷を出ると、小伝馬町の仕舞屋に居を定めて一人暮らしを始めた。 月日は流れ、姑の思惑どおり後妻が嫡男を産み、婚家に置いてきた娘は二人とも無事与力の御家に嫁いだ。 おのれに起こったことは綺麗さっぱり水に流した与岐は、今では女だてらに離縁を望む町家の女房たちの代わりに亭主どもから去り状(三行半)をもぎ取るなどをする「公事師(くじし)」の生業(なりわい)をして生計を立てていた。 されどもある日突然、与岐の仕舞屋にとっくの昔に離縁したはずの元夫・又十蔵が転がり込んできて—— ※「今宵は遣らずの雨」「大江戸ロミオ&ジュリエット」「大江戸シンデレラ」「大江戸の番人 〜吉原髪切り捕物帖〜」にうっすらと関連したお話ですが単独でお読みいただけます。

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...