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一
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「私が死んだら私を忘れてね」
「それは無理だよ。そもそも死ぬなんて言わないで」
ソファに座って2人でのんびりテレビを見ていた。チャンネルはバラエティ番組で死からは遠い内容だった。
「人は必ず死ぬんだよ。早かれ遅かれ」
「それは、そうだけど……。なんで忘れろなんて言うの?」
テレビの音量を下げる。消さなかったのは静かな空間で死の話をすると重くなりそうだったから。
普通の世間話のように。なんでもない話のように。
テレビから聞こえる会話を邪魔しない程度の笑い声がちょうどいい。
「死んだら生きてる人間には二度と関われない。私は君には幸せに生きて欲しいんだ。死んだ私のことなんか忘れて自分の人生を楽しんで生きて欲しいと思う。君はどう?」
「僕も死ぬ側なら君と同じ考えだよ。僕の死に囚われず自分を大切にして幸せに生きて欲しい。でも、残される側なら君のことは忘れたくないし忘れられないよ。君は僕のことをさっぱり忘れられるのかもしれないけど」
顔を見ては話さない。視線はテレビを見ている。
だけど多分2人とも笑っていなくて泣きそうな顔をしているんだ。
「私は君より先に死ぬ予定だから大丈夫だよ。君を忘れたくないから君は私より長生きしてね」
「わがままだなぁ」
「似た者同士なんだよ」
ふっと2人の力が抜けて泣きそうな顔が緩んだからか、お昼ご飯を食べた後のゆったりした空気が戻ってきた。
「……やっぱり、忘れないとダメ?」
「愛した者に化けて出てくるんだって」
「なにが?」
「魔物が。死んでしまった愛する者をずっと忘れられずにいると魔物が寄ってきてその愛した者そっくりに化けて騙して魂を食べるの。魂が食べられると生まれ変わることが出来ずに来世で会うことができなくなる」
「それは、嫌だね」
「うん。だから君は私のことを忘れるんだよ。それでももし私が死んでから君の元に私が訪れたらそれは魔物だから。魔物が君の名を呼んだら君は誰だっけ?って答えるの。絶対に私の名前を呼んじゃダメ。分かった?」
「……分かったよ。頑張って長生きする。だから君もおばあちゃんになるまで生きるんだよ」
──もしかしたら君が死ぬ前に認知症になって全てを忘れているかもしれないけどそれは許してね。
──私が死ぬまでは、君が私を忘れちゃっても私が君を覚えてるから大丈夫だよ。
「それは無理だよ。そもそも死ぬなんて言わないで」
ソファに座って2人でのんびりテレビを見ていた。チャンネルはバラエティ番組で死からは遠い内容だった。
「人は必ず死ぬんだよ。早かれ遅かれ」
「それは、そうだけど……。なんで忘れろなんて言うの?」
テレビの音量を下げる。消さなかったのは静かな空間で死の話をすると重くなりそうだったから。
普通の世間話のように。なんでもない話のように。
テレビから聞こえる会話を邪魔しない程度の笑い声がちょうどいい。
「死んだら生きてる人間には二度と関われない。私は君には幸せに生きて欲しいんだ。死んだ私のことなんか忘れて自分の人生を楽しんで生きて欲しいと思う。君はどう?」
「僕も死ぬ側なら君と同じ考えだよ。僕の死に囚われず自分を大切にして幸せに生きて欲しい。でも、残される側なら君のことは忘れたくないし忘れられないよ。君は僕のことをさっぱり忘れられるのかもしれないけど」
顔を見ては話さない。視線はテレビを見ている。
だけど多分2人とも笑っていなくて泣きそうな顔をしているんだ。
「私は君より先に死ぬ予定だから大丈夫だよ。君を忘れたくないから君は私より長生きしてね」
「わがままだなぁ」
「似た者同士なんだよ」
ふっと2人の力が抜けて泣きそうな顔が緩んだからか、お昼ご飯を食べた後のゆったりした空気が戻ってきた。
「……やっぱり、忘れないとダメ?」
「愛した者に化けて出てくるんだって」
「なにが?」
「魔物が。死んでしまった愛する者をずっと忘れられずにいると魔物が寄ってきてその愛した者そっくりに化けて騙して魂を食べるの。魂が食べられると生まれ変わることが出来ずに来世で会うことができなくなる」
「それは、嫌だね」
「うん。だから君は私のことを忘れるんだよ。それでももし私が死んでから君の元に私が訪れたらそれは魔物だから。魔物が君の名を呼んだら君は誰だっけ?って答えるの。絶対に私の名前を呼んじゃダメ。分かった?」
「……分かったよ。頑張って長生きする。だから君もおばあちゃんになるまで生きるんだよ」
──もしかしたら君が死ぬ前に認知症になって全てを忘れているかもしれないけどそれは許してね。
──私が死ぬまでは、君が私を忘れちゃっても私が君を覚えてるから大丈夫だよ。
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