愛してるから忘れます

はるた

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「かすみ」

 私の名を呼んだ彼は生前と全く変わらない姿で私の目の前にいる。

 私の大好きな彼。

 あの時、私は佐竹を止められなかったことを何度も後悔した。

 だけど佐竹と同じ立場になってようやく分かる。

 止まれない。止められても行ってしまう。

 もし、止められる人がいるとしたならば、それは目の前の愛した人だけだ。

 こんなの分かってても難しい。

 突然死んだ恋人が現れたら嘘でも、幻でも、人でなくとも、立ち止まってしまう。振り返ってしまう。

 その声しか聞こえなくなる。

 その名を呼びたくなる。

 触れたくなる。

 抱きしめたくなる。

 同じ所へ行きたくなる。

 だけど。ごめんね。

 私は佐竹のように素直な人間じゃない。

 優しくもないから……。

 私は息を吸う。

 震えそうな声にならないように。

 目から想いが溢れないように。

 私は息を吸う。

 そうして彼を真っ直ぐ見て、約束した。

「誰だっけ?」

 私の言葉に、酷い言葉に、彼はふわっと優しく微笑んだ。

「ごめんね。ありがとう」

 言葉の余韻と共に彼は消えてった。
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