1メートルの隣人

はるた

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「うそ……」

 今、男子生徒が私のことを見ていたら今度は「驚いてるの?」と聞いてくるだろう。

 そしたら私は即座に「うん」と答えるのに。

 実際は目を丸くして固まった私が話しかけられもせず、その場にただ突っ立っていただけだが。

 私は自分の目が信じられなかった。

 だから近くで確認しようと扉の場所まで駆け寄る。

 しかし、私の目は正常で見間違いでもなんでもなかった。

「扉が、消えてる……」

 さっきまで開いていた存在感のある扉が跡形もなく消え、何の変哲もない白い壁だけが私の目に映る。

 ぺたぺたと触ってみても、扉は元から無かったかのように痕跡すら分からない。 

「どうして……」

 ハッとして男子生徒の方を見る。

 男子生徒は私のことなんかどうでもいいかのようにさっきと全く変わらない位置でゆったりとしていた。

 私はスタスタと歩いて彼に近付く。

「ねぇ、君は何か知ってるの?」

 おかしいとは思ったのだ。

 本来なら立ち入り禁止である屋上に来ている時点で。

 そして何より当たり前のようにここでくつろいでいることに。

 彼が図太いだけかもしれない。

 けれど、この他の人がいない状況では彼に聞くしかないのだ。

「何かってフワフワしすぎ。もっと簡潔に聞きたいことを質問しなよ」

 とてもダルそうに彼は答えた。

 彼はのっそり身体を起こしてイヤホンを外す。

 一応話を聞いてはくれるようだ。

 私はその態度に少しイラッとしながらも彼の言う通り、一つずつ聞いていくことにした。

「どうして君は屋上に来たの?元々ここは立ち入り禁止の場所なのに。まるでいつも来ているみたい」

「この時間が"時間の使い方"になったからだよ。ここはジカツカの時だけ開くんだ。毎回ここには俺しか来なかったのに、あんたがいたからびっくりした」

 彼は意外とちゃんと答えてくれた。

 そこまで悪い人ではないのかもと会話を続けてみる。

「私、ジカツカの時に屋上が開放されてるなんて聞いたことがないけど」

「そりゃそうでしょ。ここ、屋上じゃないし」

「え?」

 屋上じゃないって、ここは屋上でしょう?

 私は確かに屋上に続く階段を上ってきた。
 
 下を覗けば地面から遠く離れていることだって分かるし、上を仰げば空も見える。

 彼は一体何を言ってるんだろう。

 眉をひそめる私を見て、彼は面倒くさそうにため息と一緒に言った。

「ここは逃げ場なんだよ」と。
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