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第4章
遺跡
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この世界に来て三週目。
だんだん自分の感覚が人間に近くなってきていた。人間たちのように喜怒哀楽や風の向きや暑さ寒さを
感じられるようになった。ただ違うのは生物と違って五感を調節できることと元の正体が宇宙船で
あることだろうか。
感覚も鋭くなり人間には聞こえない超音波や振動も感じられるようになった。
「おい錨マーク」
「レトロな船」
「オンボロ船」
ロビーで例の三人組が声をかけてきた。
名前も右からガラ、ウロ、ウーロンという。
「とりあえずここにいられてよかったな」
真ん中のウロが意地悪く言う。
ヤマトはいきなりウロの胸ぐらをつかむ。
険悪な空気がロビーに流れる。
「また殴るのか」
ガラとウーロンが詰め寄る。
「俺は錨マークじゃねえ。ヤマトだよ。今度そう呼んだら吹っ飛ばす」
声を低めて言うとヤマトはウロを突き放す。
「覚えてろよ」
ウロは捨てセリフを言うと他の二人と一緒に出て行く。
「少しはマシなことが言えるようになったわね」
しゃらっという女性隊員。
「とりあえずはアルビスでの任務は成功おめでとうと言おう」
男性がわざとらしく拍手をする。
ムッとするヤマト。
この二人もアルビスに行く前に自分をののしって殴った二人の男女である。名前はファリスとトニーである。
「俺だって学習くらいするさ」
しれっと言うヤマト。
「そうですか。それはよかった」
わざとらしく言うトニー
「さっきバルベータス評議員が呼んでいたわよ」
ファリスが言う。
「わかった。ありがとう」
ヤマトは会釈するとロビーを出る。食堂に入ると壁際のテーブルにカマエルとバルベータス、リオンと
アイシャがいた。
「俺になんか用か?」
ヤマトは口を開いた。
「今からペテルギウス大図書館に案内しようと思ってね」
カマエルはフッと笑う。
「どういう風の吹き回しだか」
肩をすくめるヤマト。
「今から案内する。ついて来い」
ニヤリと笑うバルベータス。
「大丈夫だよ」
無邪気な顔で言うとリオンはヤマトの腕をつかむ。
バルベータスとカマエルのあとについて行くヤマトたち。いくつかの部屋を抜け地下へ降りていくと銀行の
金庫室のように分厚い扉を開くと複雑な幾何学的な模様の魔法陣が描かれていた。バルベータスとカマエル
が呪文を詠唱する。それはリオンの知っているブルーウオーターの言語でもアイシャやヤマトの知る言語
でもない。詠唱が終わると黄金色の光に包まれ消えた。次に姿を現したのは長い回廊だった。回廊には
首から上の彫像がずらりと並ぶ。
「ぺテルギウス大図書館にようこそ。ここに並ぶのは歴代の司書たちだ。ここにはワシの司書の顔
もあるんだ」
バルベータスが静かに口を開く。
「すごい」
アイシャとリオンが口を開く。
「ここへは我々とクリスタルに選ばれた者しか入ることはできない」
カマエルは前を向いたまま言う。
黙ったまま歩くヤマト。
陰気な場所だ。しかし禍々しいものは感じられない。荘厳な雰囲気がある。そこがセラエノ大図書館
とちがうものを感じる。
大回廊を抜けるとそこは部屋が何層にも連なる部屋だった。
「ここには旧支配者が盗もうとした知識や技術が収蔵されている。セラエノにある書物はここから
盗まれたものだ。そしてアルビスにある遺物や各惑星の博物館にある超古代の遺物はここにかつて
あったものだった」
カマエルは重い口を開く。
「おまえはこの図書館の宝物庫を守る番人であり管理する司書に選ばれたんだ」
バルベータスが言う。
「俺が?冗談よせよ。俺は入隊したばかりで魔術も使えないぞ。それにあのクソ石の言う事を
聞いていたらコアがいくつあっても足りないし体が持たない」
嫌そうな顔をするヤマト。
またまた面倒なものがやってきた。
「おまえは魔術は使えないだろう。だがその代わりに邪神と対等に戦えるパワーを持っている。それに
バスチアンとデビットと組んでもらう。アイシャさんやリオン君も同じチームにはいることになる。ヤマト。
おまえに邪神ハンターの資格が与えられる。それと軍籍にも入ってもらう」
バルベータスが説明する。
「なんだかすごい展開だな」
驚くヤマト。
なんだか話が進みすぎて怖い気がする。怖いなんていう気持ちが出てきたのは初めてだ。
邪神ハンターはそう簡単になれるものではない。入隊してまず魔物ハンター試験を受ける。魔物ハンターも
C級B級A級とありその階級全部の試験をクリアして邪神ハンターになれる。邪神ハンターにも普通の
邪神ハンターとA級とS級がある。A級とS級はめったにいない。いるのは十二評議員とバルベータスやその
師匠たちだけ。本当に認めた者しかその資格は得られないのだ。
「軍籍ってどこに?」
ヤマトが聞いた。
「おまえはブルーウオーターでの市民権が与えられ、ブルーウオーター軍の艦船として登録されるが軍人
としての階級は新兵と同じだ」
カマエルが説明する。
「何もかも用意済みってことか?」
腰に手を当てるヤマト。
「だが基地の官舎で生活してもらう。おまえさん波動砲やパワーもろくに制御できんだろう。マンションや
アパートを壊してもらっては困るからな」
念を押すバルベータス。
「わかった」
ため息をつくヤマト。
いきなりヤマトはサバイバルナイフを抜いて飛んできた長剣を弾いた。
「物騒だな」
ヤマトは身構えた。
彼らの目の前に長剣が浮いている。柄には装飾が施されている。
「エクスカリバーだ。剣自体が意志を持っている。時々勝手に動き回っている」
カマエルが注意する。
「時々展示物が動いているときがあるから気をつけろ」
バルベータスが言った。
「遊園地よりおもしろいな」
ヤマトが見回しながら言う。
「これが邪神ハンターの資格証」
バルベータスは旧き印であるエルダーサインを渡す。
「それとこのコンパスをやる」
カマエルはコンパスを渡す。
「これは?」
「死者の羅針盤。自分の行きたい所を指し示してくれるがそれ自体が意志を持っている。本当に必要
なとき動く」
バルベータスが注意する。
「リオン。アイシャ。退魔のネックレスと旧き印だ。ネックレスは攻撃魔術を防ぐ。旧き印は邪神の眷属群
と魔物を防ぐことができる。君らは邪神にも狙われているからね」
カマエルはリオンとアイシャに旧き印と緑色の宝石がついたネックレスを渡す。
「もちろん相棒のバスチアンやデビットにも旧き印を渡しておく」
バルベータスは言う。
「俺は魔術使えなくても大丈夫なのか?」
心配になってくるヤマト。
「バスチアンは防御。デビットが補助呪文が使える。バスチアンのシールドは彼がもともと持っている
船のシステムだ。彼のそばにいれば魔術や攻撃兵器を弾いてくれる。デビットは補助系魔術でおまえを
援護してくれる」
バルベータスが説明する。
「魔術の訓練は入隊訓練と同時に教官やスカウトによってメインかサイドに別れる。あの
二人はサイド組だった」
バルベータスは説明する。
黙ってしまうヤマト。
機械生命体や人間たちもそうだが入隊する時に教官たちによって素質検査を受けてメイン組とサイド組
に分かれる。自分はそれすらパスしてしまったのだ。
「なんで俺を選んだ?」
ヤマトは疑問をぶつける。
「おまえは歴代の選ばれた連中とは違う性格をしているのと邪神と対等に戦えるそのパワーかな」
フッと笑うカマエル。
「なんだかおもしろくなってきたな」
ニヤリと笑うヤマト。
「わからないことがあればワシらや基地にいる先輩たちに聞け。ここの大図書館には常に誰かが管理
しているからその案内人に聞くんだ。いいな」
念を押すバルベータス。
「わかった」
ヤマトはうなづいた。
翌日。
バルベータスとクロウ・タイタスはピラミッドを見上げた。
ピラミッドは首都オリヴェラから一万キロ離れたサンドウイン砂漠にある。この砂漠はブルーウオーター
で一番広い砂漠である。この砂漠には大小含めて二十個のピラミッドがあり形はなだらかな
階段ピラミッドに近い。
「発掘チームリーダーのケイロンです。バルベータス殿、タイタス評議員。会えて光栄です」
中年のブルーウオーター人と握手をするタイタスたち。
ブルーウオーターの人々の平均寿命は約二百年である。中年に見えても百歳を超えている。彼らの百歳
は人間の五十歳にあたるのだ。
「このピラミッドで今まで開かなかった部屋が開いたので見てもらえますか」
ケイロン博士はそう言うと早足でピラミッドの出入口へ入っていく。タイタスたちも彼のあとについていく。
このピラミッドは二十個の中で一番大きなピラミッドである。ピラミッドの頂上まで階段がありその上は
小さな建造物が載っている。しかしそこではなく中腹の穴から行く。中腹の穴は昔泥棒たちが開けた穴である。
穴から回廊に入り棺の間に入る。ここには石棺だけで何もない場所だったが入口が開いていた。もともと
なかった物がそこにあった。
部屋に入るとレリーフや絵が描かれていた。
「これは侵入者だ」
ひと目見てバルベータスが指摘する。
紫色の実体のない生命体。顔に赤く光るつり目。あのマーカスとルイスが元に戻った姿である。
「太古の昔にやってきた侵入者の祖先はこのピラミッドを造ったようだ
タイタスは部屋の天井に描かれた絵を見ながら言う。
「侵入者の祖先も今のマーカス同様によその惑星へ行っては支配して武器や兵器を
造らせていたようですね」
ケイオス博士がうなづく。
「ここ最近、隣の銀河系にある惑星の遺跡や隣の星系の遺跡で今まで知られていない部屋や遺物が
見つかっているのです」
ケイオス博士が重い口を開く。
「それはいつから?」
「三週間前からです」
質問に答えるケイオス博士。
「あの戦艦が迷い込んだ日と一致するな」
バルベータスの眼光が鋭くなった。
その頃、ヤマトは食堂にいた。
食堂に何するでもなく椅子に座るだけ。普段ならバスチアンやデビット、バルベータスの誰かがいる。
ヤマトはふとモニターに目を移す。惑星軌道上にある宇宙コロニーが映っていた。
そういえばリオンのクラスは社会見学だったな。
ふと思い出すヤマト。
あの大図書館を出た後リオンが言ったのだ。学校で社会見学で宇宙コロニーに行くと。
宇宙コロニーのドックに近づく葉巻型宇宙船を見つけた。
資料で見たことある。葉巻型宇宙船はヴァルーシアの蛇人間の乗る船である。しかし蛇人間たちは
侵入者と仲がいい。よく一緒に行動しているのを目撃されている。
なんか嫌な予感がする。
「デビット。テレポート台は使えないか」
通りかかったデビットを捕まえるヤマト。
「あれは緊急時と要人だけ」
指でチッチとやるデビット。
駆け出すヤマト。
「どこへ行く?」
追いかけるデビット。
「コロニーだよ。そこにヴァルーシアの船があった。連中はよくあいつらとつるんでる目的はどうで
あれやることは知れている」
ヤマトは駐機場へ飛び出しジャンプすると青白い蛍光に包まれ元の戦艦に戻りワープした。
「あのバカが」
ため息をつくデビットは宇宙船に戻るとテレポートした。
惑星軌道上にワープしてくる二隻。
「しまった。宇宙コロニーが十三個あるのを忘れていた」
思い出すヤマト。
同じ形の円筒形のコロニーが十三個あるのをうっかり忘れていた。
「バカな船」
あきれかえるでビット。
なんだかだんだん心配になってくる。こいつについて行って大丈夫だろうか。できれば手を切りたい。
「デビット。コロニーに小学校の社会見学に来ているらしい。その乗ってきた船はどこかわかるか?」
ヤマトはひらめいた。
ショッピングセンターの前に集まる小学生たち。一クラス三十人である。その中にリオンがいた。
「リオン。ヤマトと友達になったんだろ」
クラスメートのロンが口を開いた。
「うん」
うなづくリオン。
「Gフォース基地にも入った?」
同じくクラスメートのローラが口をはさむ。
Gフォース基地やエルダーサインの出張所は年の一回のイベントでなければなかなか見ることの
できない施設である。
「僕はプリマビスタ基地のイベントにはいったことがある」
ロンが自慢げに言う。
「プリマビスタ基地は普通の軍の基地じゃん」
ローラが口をはさむ。
「みなさんお静かに。今からコントロールルームに向かいます」
引率の先生が声を張り上げた。
窓の外を見るリオン。
「あれヤマトだろ?」
ロンが指さした。
「本当だ」
他のクラスメートがのぞく。
海上を航行するレトロな船型といい無骨な形といい一番よく目立っていた。
同時刻。
三人の蛇人間がショッピングセンターに近づいた。三人とも紫色のマントをはおっている。リーダー
らしい蛇人間は腕時計をスイッチを押す。小さな映像が出る。映像の写真にリオンの写真が出る。
リーダーらしい蛇人間が大またで近づくと腕を伸ばした。せつな誰かにつかまれねじ上げられ足払い
かけられて地面にねじ伏せられた。
「ヤマト。何しているの?」
リオンが振り向いた。
クラスメートたちも振り向く。
「いやパトロールだ」
もがく蛇人間をひざで押さえつけるヤマト。
他の二人の蛇人間もバスチアンとデビットが捕まえていた。
「行きますよ」
引率の先生が子供たちを呼ぶ。
「行ってきます」
リオンはニコッと笑うと他のクラスメートと一緒にエレベーターに乗りドアが閉まった。
フッと笑うヤマト。いきなり彼はサバイバルナイフと振り向きざまに投げた。物陰から狙撃銃を持った
異星人がバルコニーから落ちた。落ちた異星人に近づくヤマト。
バスチアンとデビットは駆けつけてきた警官たちに蛇人間たちを引き渡した。
ヤマトはその異星人の覆面ヘルメットをもぎとりナイフを引き抜いた。
死んでいる異星人の頭部はどことなく恐竜を思わせ体格は二メートルを超えている。
「こいつはゾルタ人だ。ゾルタの狙撃兵だ。おまえも有名になったな」
デビットはのぞきこむ。
「俺はそんなに有名か」
感心するヤマト。
ゾルタ人は別の銀河系に住む恐竜人間である。彼らは数百もの惑星を植民地に持つ帝国を築いている。
男女ともに恐竜ティラノサウルスのような肉食恐竜を思わせる頭と顔を持ち身長は二百五十センチと
大柄の体格を持っているが銀河連邦とは対立関係にあった。
「どうやら狙いはヤマト君だよ」
バスチアンは指摘する。
「俺はなんにもやってねえしなんで見ず知らずの奴に狙われる?」
疑問をぶつけるヤマト。
「君のパワーだろうね」
デビットが口をはさむ。
「Gフォースのヤマト隊員ですね。バスチアン軍曹、デビット伍長。ブルーウオーター警察の者です。
署まで来てもらいます」
二人の男女が警察手帳を見せた。
数十分後。
オリヴェラにあるプリマビスタ警視庁。
「俺は何にもしていないし正当防衛だ」
刑事課の部屋に入るなり開口一番ヤマトは腕を組んでソファに座る。
あきれかえるバスチアンとデビット。
「我々は捕まえに来たのではない」
軍の将校が振り向いた。
「誰だ?」
きょとんとするヤマト。
「私はフォボス軍諜報員エドワーズ・ウインスロップ」
その将校は名乗る。
フォボスは二万光年離れた星系にある星である。フォボス人はこめかみから後頭部、わき腹にかけて
ひょう柄の模様がある。耳は尖り容貌は人間に近い。
「私はダビア国家調査局の捜査官のエリスです」
女性の捜査官は手帳を見せる。ダビアは一万光年離れた星系にある。男女ともに額に幾何学的な
模様が入り、手足の指が六本あるという異星人だった。
「私はオリヴェラ警視庁のダグだ。警部補だ。よろしく」
中年のブルーウオーター人男性はバスチアンやデビットと握手をする。中年に見えても百歳を超えている。
彼らの百歳は人間の二百歳に当たる。
「君はデルタ、ゾルタ、グロマン帝国から目をつけられている。いやそれだけでなく邪神教団からも目を
つけられ特にこの連中にも目をつけられている」
ウインスロップは何枚かの写真を見せた。
「こいつはマーカスとルイスだ」
身を乗り出すヤマト。
「侵入者はどこにでも現れ、操る。我々も特に注意している連中なんだ」
ウインスロップは声を低める。
「君は何回も侵入者に会った。それも君を追ってね」
エリス捜査官が言う。
「情報ではあの二人はデルタ、ゾルタ、ウロマンやテロリスト、賞金稼ぎ、邪神教団を操り超古代の
オーパッツを手に入れようとしている」
ダグ警部補が説明して写真を見せる。
写真に首飾りと青い大きな宝石が映る。
「これを守るという任務だ。ブルーウオーター王室と政府からの依頼でね。王家の紋章と呼ばれる
首飾りと宝石の警備を手伝ってほしいのだ」
ダグ警部補が言う。
「数日後にプリマビスタ宮殿と広場で記念式典がある。それに参加してもらいたい」
ウインスロップはニヤリと笑う。
「俺たちにその式典の警備をしながら宝物庫の番人をやれか」
真剣な顔になるヤマト。
あのマーカスとルイスが背後にいるならあの二人の計画を潰すしかないだろう。
「そのとおり。私たちも警備に出る」
エリス捜査官がうなづく。
「わかった」
ヤマトはうなづくと部屋を出て行く。
「どうする?記念式典には許可証がないと入れない」
デビットがあきれ顔で聞く。
「警備員やるにも身分が確かな者しか入れない。記念式典には周辺の惑星の政府関係者や
要人が出席する」
バスチアンが肩をすくめる。
警視庁を出る三人。
「あのジジイは十二評議員だろ。かつては将軍で大使もやっていた。きっとあのじじいだって
式典には出るはずさ」
ヤマトはひらめいた。
ため息をつくバスチアンとデビット。
「出来なければ忍び込んででもやるさ」
ヤマトはフッと笑った。
一時間後。
基地の食堂へ入るヤマト。
壁際の席にバルベータスが座っている。彼はお茶を飲んでいた。
「おい。ジジイ」
「あいかわらず威勢がいいのう」
ニヤリと笑うバルベータス。
「ジジイ。数日後に記念式典があるのを知っているか?」
ヤマトは聞いた。
「知っている。ワシや十二評議員も出席する。安心せい。おまえたち五人分の許可証も取ってあるんだ」
「え?」
驚きの声を上げるヤマト。
いつの間に。
「侵入者がやりそうなことじゃ。こういうこともあろうかと招待状はもらってある。だからおまえたちも
記念式典に出席できる」
バルベータスは笑みを浮かべた。
「プリマビスタ王立博物館に首飾りがある。それを狙っているという情報がフォボスやダビア政府
から入っている。博物館の警備にも行ってもらう」
バルベータスが言った。
だんだん自分の感覚が人間に近くなってきていた。人間たちのように喜怒哀楽や風の向きや暑さ寒さを
感じられるようになった。ただ違うのは生物と違って五感を調節できることと元の正体が宇宙船で
あることだろうか。
感覚も鋭くなり人間には聞こえない超音波や振動も感じられるようになった。
「おい錨マーク」
「レトロな船」
「オンボロ船」
ロビーで例の三人組が声をかけてきた。
名前も右からガラ、ウロ、ウーロンという。
「とりあえずここにいられてよかったな」
真ん中のウロが意地悪く言う。
ヤマトはいきなりウロの胸ぐらをつかむ。
険悪な空気がロビーに流れる。
「また殴るのか」
ガラとウーロンが詰め寄る。
「俺は錨マークじゃねえ。ヤマトだよ。今度そう呼んだら吹っ飛ばす」
声を低めて言うとヤマトはウロを突き放す。
「覚えてろよ」
ウロは捨てセリフを言うと他の二人と一緒に出て行く。
「少しはマシなことが言えるようになったわね」
しゃらっという女性隊員。
「とりあえずはアルビスでの任務は成功おめでとうと言おう」
男性がわざとらしく拍手をする。
ムッとするヤマト。
この二人もアルビスに行く前に自分をののしって殴った二人の男女である。名前はファリスとトニーである。
「俺だって学習くらいするさ」
しれっと言うヤマト。
「そうですか。それはよかった」
わざとらしく言うトニー
「さっきバルベータス評議員が呼んでいたわよ」
ファリスが言う。
「わかった。ありがとう」
ヤマトは会釈するとロビーを出る。食堂に入ると壁際のテーブルにカマエルとバルベータス、リオンと
アイシャがいた。
「俺になんか用か?」
ヤマトは口を開いた。
「今からペテルギウス大図書館に案内しようと思ってね」
カマエルはフッと笑う。
「どういう風の吹き回しだか」
肩をすくめるヤマト。
「今から案内する。ついて来い」
ニヤリと笑うバルベータス。
「大丈夫だよ」
無邪気な顔で言うとリオンはヤマトの腕をつかむ。
バルベータスとカマエルのあとについて行くヤマトたち。いくつかの部屋を抜け地下へ降りていくと銀行の
金庫室のように分厚い扉を開くと複雑な幾何学的な模様の魔法陣が描かれていた。バルベータスとカマエル
が呪文を詠唱する。それはリオンの知っているブルーウオーターの言語でもアイシャやヤマトの知る言語
でもない。詠唱が終わると黄金色の光に包まれ消えた。次に姿を現したのは長い回廊だった。回廊には
首から上の彫像がずらりと並ぶ。
「ぺテルギウス大図書館にようこそ。ここに並ぶのは歴代の司書たちだ。ここにはワシの司書の顔
もあるんだ」
バルベータスが静かに口を開く。
「すごい」
アイシャとリオンが口を開く。
「ここへは我々とクリスタルに選ばれた者しか入ることはできない」
カマエルは前を向いたまま言う。
黙ったまま歩くヤマト。
陰気な場所だ。しかし禍々しいものは感じられない。荘厳な雰囲気がある。そこがセラエノ大図書館
とちがうものを感じる。
大回廊を抜けるとそこは部屋が何層にも連なる部屋だった。
「ここには旧支配者が盗もうとした知識や技術が収蔵されている。セラエノにある書物はここから
盗まれたものだ。そしてアルビスにある遺物や各惑星の博物館にある超古代の遺物はここにかつて
あったものだった」
カマエルは重い口を開く。
「おまえはこの図書館の宝物庫を守る番人であり管理する司書に選ばれたんだ」
バルベータスが言う。
「俺が?冗談よせよ。俺は入隊したばかりで魔術も使えないぞ。それにあのクソ石の言う事を
聞いていたらコアがいくつあっても足りないし体が持たない」
嫌そうな顔をするヤマト。
またまた面倒なものがやってきた。
「おまえは魔術は使えないだろう。だがその代わりに邪神と対等に戦えるパワーを持っている。それに
バスチアンとデビットと組んでもらう。アイシャさんやリオン君も同じチームにはいることになる。ヤマト。
おまえに邪神ハンターの資格が与えられる。それと軍籍にも入ってもらう」
バルベータスが説明する。
「なんだかすごい展開だな」
驚くヤマト。
なんだか話が進みすぎて怖い気がする。怖いなんていう気持ちが出てきたのは初めてだ。
邪神ハンターはそう簡単になれるものではない。入隊してまず魔物ハンター試験を受ける。魔物ハンターも
C級B級A級とありその階級全部の試験をクリアして邪神ハンターになれる。邪神ハンターにも普通の
邪神ハンターとA級とS級がある。A級とS級はめったにいない。いるのは十二評議員とバルベータスやその
師匠たちだけ。本当に認めた者しかその資格は得られないのだ。
「軍籍ってどこに?」
ヤマトが聞いた。
「おまえはブルーウオーターでの市民権が与えられ、ブルーウオーター軍の艦船として登録されるが軍人
としての階級は新兵と同じだ」
カマエルが説明する。
「何もかも用意済みってことか?」
腰に手を当てるヤマト。
「だが基地の官舎で生活してもらう。おまえさん波動砲やパワーもろくに制御できんだろう。マンションや
アパートを壊してもらっては困るからな」
念を押すバルベータス。
「わかった」
ため息をつくヤマト。
いきなりヤマトはサバイバルナイフを抜いて飛んできた長剣を弾いた。
「物騒だな」
ヤマトは身構えた。
彼らの目の前に長剣が浮いている。柄には装飾が施されている。
「エクスカリバーだ。剣自体が意志を持っている。時々勝手に動き回っている」
カマエルが注意する。
「時々展示物が動いているときがあるから気をつけろ」
バルベータスが言った。
「遊園地よりおもしろいな」
ヤマトが見回しながら言う。
「これが邪神ハンターの資格証」
バルベータスは旧き印であるエルダーサインを渡す。
「それとこのコンパスをやる」
カマエルはコンパスを渡す。
「これは?」
「死者の羅針盤。自分の行きたい所を指し示してくれるがそれ自体が意志を持っている。本当に必要
なとき動く」
バルベータスが注意する。
「リオン。アイシャ。退魔のネックレスと旧き印だ。ネックレスは攻撃魔術を防ぐ。旧き印は邪神の眷属群
と魔物を防ぐことができる。君らは邪神にも狙われているからね」
カマエルはリオンとアイシャに旧き印と緑色の宝石がついたネックレスを渡す。
「もちろん相棒のバスチアンやデビットにも旧き印を渡しておく」
バルベータスは言う。
「俺は魔術使えなくても大丈夫なのか?」
心配になってくるヤマト。
「バスチアンは防御。デビットが補助呪文が使える。バスチアンのシールドは彼がもともと持っている
船のシステムだ。彼のそばにいれば魔術や攻撃兵器を弾いてくれる。デビットは補助系魔術でおまえを
援護してくれる」
バルベータスが説明する。
「魔術の訓練は入隊訓練と同時に教官やスカウトによってメインかサイドに別れる。あの
二人はサイド組だった」
バルベータスは説明する。
黙ってしまうヤマト。
機械生命体や人間たちもそうだが入隊する時に教官たちによって素質検査を受けてメイン組とサイド組
に分かれる。自分はそれすらパスしてしまったのだ。
「なんで俺を選んだ?」
ヤマトは疑問をぶつける。
「おまえは歴代の選ばれた連中とは違う性格をしているのと邪神と対等に戦えるそのパワーかな」
フッと笑うカマエル。
「なんだかおもしろくなってきたな」
ニヤリと笑うヤマト。
「わからないことがあればワシらや基地にいる先輩たちに聞け。ここの大図書館には常に誰かが管理
しているからその案内人に聞くんだ。いいな」
念を押すバルベータス。
「わかった」
ヤマトはうなづいた。
翌日。
バルベータスとクロウ・タイタスはピラミッドを見上げた。
ピラミッドは首都オリヴェラから一万キロ離れたサンドウイン砂漠にある。この砂漠はブルーウオーター
で一番広い砂漠である。この砂漠には大小含めて二十個のピラミッドがあり形はなだらかな
階段ピラミッドに近い。
「発掘チームリーダーのケイロンです。バルベータス殿、タイタス評議員。会えて光栄です」
中年のブルーウオーター人と握手をするタイタスたち。
ブルーウオーターの人々の平均寿命は約二百年である。中年に見えても百歳を超えている。彼らの百歳
は人間の五十歳にあたるのだ。
「このピラミッドで今まで開かなかった部屋が開いたので見てもらえますか」
ケイロン博士はそう言うと早足でピラミッドの出入口へ入っていく。タイタスたちも彼のあとについていく。
このピラミッドは二十個の中で一番大きなピラミッドである。ピラミッドの頂上まで階段がありその上は
小さな建造物が載っている。しかしそこではなく中腹の穴から行く。中腹の穴は昔泥棒たちが開けた穴である。
穴から回廊に入り棺の間に入る。ここには石棺だけで何もない場所だったが入口が開いていた。もともと
なかった物がそこにあった。
部屋に入るとレリーフや絵が描かれていた。
「これは侵入者だ」
ひと目見てバルベータスが指摘する。
紫色の実体のない生命体。顔に赤く光るつり目。あのマーカスとルイスが元に戻った姿である。
「太古の昔にやってきた侵入者の祖先はこのピラミッドを造ったようだ
タイタスは部屋の天井に描かれた絵を見ながら言う。
「侵入者の祖先も今のマーカス同様によその惑星へ行っては支配して武器や兵器を
造らせていたようですね」
ケイオス博士がうなづく。
「ここ最近、隣の銀河系にある惑星の遺跡や隣の星系の遺跡で今まで知られていない部屋や遺物が
見つかっているのです」
ケイオス博士が重い口を開く。
「それはいつから?」
「三週間前からです」
質問に答えるケイオス博士。
「あの戦艦が迷い込んだ日と一致するな」
バルベータスの眼光が鋭くなった。
その頃、ヤマトは食堂にいた。
食堂に何するでもなく椅子に座るだけ。普段ならバスチアンやデビット、バルベータスの誰かがいる。
ヤマトはふとモニターに目を移す。惑星軌道上にある宇宙コロニーが映っていた。
そういえばリオンのクラスは社会見学だったな。
ふと思い出すヤマト。
あの大図書館を出た後リオンが言ったのだ。学校で社会見学で宇宙コロニーに行くと。
宇宙コロニーのドックに近づく葉巻型宇宙船を見つけた。
資料で見たことある。葉巻型宇宙船はヴァルーシアの蛇人間の乗る船である。しかし蛇人間たちは
侵入者と仲がいい。よく一緒に行動しているのを目撃されている。
なんか嫌な予感がする。
「デビット。テレポート台は使えないか」
通りかかったデビットを捕まえるヤマト。
「あれは緊急時と要人だけ」
指でチッチとやるデビット。
駆け出すヤマト。
「どこへ行く?」
追いかけるデビット。
「コロニーだよ。そこにヴァルーシアの船があった。連中はよくあいつらとつるんでる目的はどうで
あれやることは知れている」
ヤマトは駐機場へ飛び出しジャンプすると青白い蛍光に包まれ元の戦艦に戻りワープした。
「あのバカが」
ため息をつくデビットは宇宙船に戻るとテレポートした。
惑星軌道上にワープしてくる二隻。
「しまった。宇宙コロニーが十三個あるのを忘れていた」
思い出すヤマト。
同じ形の円筒形のコロニーが十三個あるのをうっかり忘れていた。
「バカな船」
あきれかえるでビット。
なんだかだんだん心配になってくる。こいつについて行って大丈夫だろうか。できれば手を切りたい。
「デビット。コロニーに小学校の社会見学に来ているらしい。その乗ってきた船はどこかわかるか?」
ヤマトはひらめいた。
ショッピングセンターの前に集まる小学生たち。一クラス三十人である。その中にリオンがいた。
「リオン。ヤマトと友達になったんだろ」
クラスメートのロンが口を開いた。
「うん」
うなづくリオン。
「Gフォース基地にも入った?」
同じくクラスメートのローラが口をはさむ。
Gフォース基地やエルダーサインの出張所は年の一回のイベントでなければなかなか見ることの
できない施設である。
「僕はプリマビスタ基地のイベントにはいったことがある」
ロンが自慢げに言う。
「プリマビスタ基地は普通の軍の基地じゃん」
ローラが口をはさむ。
「みなさんお静かに。今からコントロールルームに向かいます」
引率の先生が声を張り上げた。
窓の外を見るリオン。
「あれヤマトだろ?」
ロンが指さした。
「本当だ」
他のクラスメートがのぞく。
海上を航行するレトロな船型といい無骨な形といい一番よく目立っていた。
同時刻。
三人の蛇人間がショッピングセンターに近づいた。三人とも紫色のマントをはおっている。リーダー
らしい蛇人間は腕時計をスイッチを押す。小さな映像が出る。映像の写真にリオンの写真が出る。
リーダーらしい蛇人間が大またで近づくと腕を伸ばした。せつな誰かにつかまれねじ上げられ足払い
かけられて地面にねじ伏せられた。
「ヤマト。何しているの?」
リオンが振り向いた。
クラスメートたちも振り向く。
「いやパトロールだ」
もがく蛇人間をひざで押さえつけるヤマト。
他の二人の蛇人間もバスチアンとデビットが捕まえていた。
「行きますよ」
引率の先生が子供たちを呼ぶ。
「行ってきます」
リオンはニコッと笑うと他のクラスメートと一緒にエレベーターに乗りドアが閉まった。
フッと笑うヤマト。いきなり彼はサバイバルナイフと振り向きざまに投げた。物陰から狙撃銃を持った
異星人がバルコニーから落ちた。落ちた異星人に近づくヤマト。
バスチアンとデビットは駆けつけてきた警官たちに蛇人間たちを引き渡した。
ヤマトはその異星人の覆面ヘルメットをもぎとりナイフを引き抜いた。
死んでいる異星人の頭部はどことなく恐竜を思わせ体格は二メートルを超えている。
「こいつはゾルタ人だ。ゾルタの狙撃兵だ。おまえも有名になったな」
デビットはのぞきこむ。
「俺はそんなに有名か」
感心するヤマト。
ゾルタ人は別の銀河系に住む恐竜人間である。彼らは数百もの惑星を植民地に持つ帝国を築いている。
男女ともに恐竜ティラノサウルスのような肉食恐竜を思わせる頭と顔を持ち身長は二百五十センチと
大柄の体格を持っているが銀河連邦とは対立関係にあった。
「どうやら狙いはヤマト君だよ」
バスチアンは指摘する。
「俺はなんにもやってねえしなんで見ず知らずの奴に狙われる?」
疑問をぶつけるヤマト。
「君のパワーだろうね」
デビットが口をはさむ。
「Gフォースのヤマト隊員ですね。バスチアン軍曹、デビット伍長。ブルーウオーター警察の者です。
署まで来てもらいます」
二人の男女が警察手帳を見せた。
数十分後。
オリヴェラにあるプリマビスタ警視庁。
「俺は何にもしていないし正当防衛だ」
刑事課の部屋に入るなり開口一番ヤマトは腕を組んでソファに座る。
あきれかえるバスチアンとデビット。
「我々は捕まえに来たのではない」
軍の将校が振り向いた。
「誰だ?」
きょとんとするヤマト。
「私はフォボス軍諜報員エドワーズ・ウインスロップ」
その将校は名乗る。
フォボスは二万光年離れた星系にある星である。フォボス人はこめかみから後頭部、わき腹にかけて
ひょう柄の模様がある。耳は尖り容貌は人間に近い。
「私はダビア国家調査局の捜査官のエリスです」
女性の捜査官は手帳を見せる。ダビアは一万光年離れた星系にある。男女ともに額に幾何学的な
模様が入り、手足の指が六本あるという異星人だった。
「私はオリヴェラ警視庁のダグだ。警部補だ。よろしく」
中年のブルーウオーター人男性はバスチアンやデビットと握手をする。中年に見えても百歳を超えている。
彼らの百歳は人間の二百歳に当たる。
「君はデルタ、ゾルタ、グロマン帝国から目をつけられている。いやそれだけでなく邪神教団からも目を
つけられ特にこの連中にも目をつけられている」
ウインスロップは何枚かの写真を見せた。
「こいつはマーカスとルイスだ」
身を乗り出すヤマト。
「侵入者はどこにでも現れ、操る。我々も特に注意している連中なんだ」
ウインスロップは声を低める。
「君は何回も侵入者に会った。それも君を追ってね」
エリス捜査官が言う。
「情報ではあの二人はデルタ、ゾルタ、ウロマンやテロリスト、賞金稼ぎ、邪神教団を操り超古代の
オーパッツを手に入れようとしている」
ダグ警部補が説明して写真を見せる。
写真に首飾りと青い大きな宝石が映る。
「これを守るという任務だ。ブルーウオーター王室と政府からの依頼でね。王家の紋章と呼ばれる
首飾りと宝石の警備を手伝ってほしいのだ」
ダグ警部補が言う。
「数日後にプリマビスタ宮殿と広場で記念式典がある。それに参加してもらいたい」
ウインスロップはニヤリと笑う。
「俺たちにその式典の警備をしながら宝物庫の番人をやれか」
真剣な顔になるヤマト。
あのマーカスとルイスが背後にいるならあの二人の計画を潰すしかないだろう。
「そのとおり。私たちも警備に出る」
エリス捜査官がうなづく。
「わかった」
ヤマトはうなづくと部屋を出て行く。
「どうする?記念式典には許可証がないと入れない」
デビットがあきれ顔で聞く。
「警備員やるにも身分が確かな者しか入れない。記念式典には周辺の惑星の政府関係者や
要人が出席する」
バスチアンが肩をすくめる。
警視庁を出る三人。
「あのジジイは十二評議員だろ。かつては将軍で大使もやっていた。きっとあのじじいだって
式典には出るはずさ」
ヤマトはひらめいた。
ため息をつくバスチアンとデビット。
「出来なければ忍び込んででもやるさ」
ヤマトはフッと笑った。
一時間後。
基地の食堂へ入るヤマト。
壁際の席にバルベータスが座っている。彼はお茶を飲んでいた。
「おい。ジジイ」
「あいかわらず威勢がいいのう」
ニヤリと笑うバルベータス。
「ジジイ。数日後に記念式典があるのを知っているか?」
ヤマトは聞いた。
「知っている。ワシや十二評議員も出席する。安心せい。おまえたち五人分の許可証も取ってあるんだ」
「え?」
驚きの声を上げるヤマト。
いつの間に。
「侵入者がやりそうなことじゃ。こういうこともあろうかと招待状はもらってある。だからおまえたちも
記念式典に出席できる」
バルベータスは笑みを浮かべた。
「プリマビスタ王立博物館に首飾りがある。それを狙っているという情報がフォボスやダビア政府
から入っている。博物館の警備にも行ってもらう」
バルベータスが言った。
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