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11 陛下と王妃様
「ルイーゼ。よく来てくれたな」
「今日の真の主役は、あなたですよ」
一人壁際に佇んでいた私に、マキア王国の国王陛下と王妃様が直々にお声をかけてくださった。
「陛下、王妃様。身に余る栄誉を賜り、心より光栄に存じます」
私は最上級の敬意を込め、深く腰を沈めて完璧なカーテシーを捧げた。
「近年、お前が進めてきた鶏の品種改良は、我が国の安定的な食糧生産に多大な寄与をしている。特に昨年開発したブランド鶏は肉質が柔らかく臭みもない。周辺諸国からも極めて高い評価を得ているぞ」
「ええ、私などあのお肉を頂いてからは、他のものは口にできなくて。毎日食卓に出させているほどなのですよ?」
「まあ! 王妃様を虜にできましたこと、これ以上の喜びはございませんわ」
お二方の温かな言葉に、張り詰めていた私の心は幾分、軽くなった。私の事業は長年王国を悩ませてきた食糧難を救う一助となっており、王家からは単なる商売以上の、国家的な功績として認められていたのだ。
「……それにしても、ダミアン殿は随分と調子がよろしいようですわね。彼が侯爵に昇進できるのも、すべてはあなたの内助の功あってのこと。私個人としては、あなた単独を『女侯爵』に叙したいほどよ」
王妃様が周囲に聞こえぬよう密やかに私の耳元で囁いた。
「王妃様……!」
驚きに目を見開く私に、王妃様は慈愛に満ちた、しかし全てを見透かすような瞳で微笑んだ。だが、その視線がホールの中心で浮かれる二人を捉えた瞬間、険しいものへと変わる。
「……けれど、どうして彼は別の令嬢をエスコートしているの? あなたではなく」
「──っ」
私は言い淀んだ。
「そ、それは……あちらは私の妹でして……。夫は身内を、その、大切にする性分でして……」
私の苦しい弁明に王妃様は何かを察し、眉をひそめた。
「まさか、ダミアン殿は義妹と道ならぬ仲なの?」
「っ!それは……私の口からは申せません……」
苦痛の表情を浮かべた私の様子に、王妃様は深く嘆息し、私の手を優しく包み込んだ。
「……いいのです、深くは聞きません。ですが、私には人を見る目があります。この国に必要なのは、手柄を横取りするだけの男ではなく、無から富を生み出せるあなたのような人材です。困ったことがあれば、いつでも私を頼りなさい。私はいつでもあなたの味方ですよ」
「ありがとうございます、王妃様……!」
私は思いがけず心強い言葉をかけてもらえて、嬉しくて涙が出そうになっていた。私は孤独だと思っていたこの場所で王妃様という最強の後ろ盾を得たのだった。
「今日の真の主役は、あなたですよ」
一人壁際に佇んでいた私に、マキア王国の国王陛下と王妃様が直々にお声をかけてくださった。
「陛下、王妃様。身に余る栄誉を賜り、心より光栄に存じます」
私は最上級の敬意を込め、深く腰を沈めて完璧なカーテシーを捧げた。
「近年、お前が進めてきた鶏の品種改良は、我が国の安定的な食糧生産に多大な寄与をしている。特に昨年開発したブランド鶏は肉質が柔らかく臭みもない。周辺諸国からも極めて高い評価を得ているぞ」
「ええ、私などあのお肉を頂いてからは、他のものは口にできなくて。毎日食卓に出させているほどなのですよ?」
「まあ! 王妃様を虜にできましたこと、これ以上の喜びはございませんわ」
お二方の温かな言葉に、張り詰めていた私の心は幾分、軽くなった。私の事業は長年王国を悩ませてきた食糧難を救う一助となっており、王家からは単なる商売以上の、国家的な功績として認められていたのだ。
「……それにしても、ダミアン殿は随分と調子がよろしいようですわね。彼が侯爵に昇進できるのも、すべてはあなたの内助の功あってのこと。私個人としては、あなた単独を『女侯爵』に叙したいほどよ」
王妃様が周囲に聞こえぬよう密やかに私の耳元で囁いた。
「王妃様……!」
驚きに目を見開く私に、王妃様は慈愛に満ちた、しかし全てを見透かすような瞳で微笑んだ。だが、その視線がホールの中心で浮かれる二人を捉えた瞬間、険しいものへと変わる。
「……けれど、どうして彼は別の令嬢をエスコートしているの? あなたではなく」
「──っ」
私は言い淀んだ。
「そ、それは……あちらは私の妹でして……。夫は身内を、その、大切にする性分でして……」
私の苦しい弁明に王妃様は何かを察し、眉をひそめた。
「まさか、ダミアン殿は義妹と道ならぬ仲なの?」
「っ!それは……私の口からは申せません……」
苦痛の表情を浮かべた私の様子に、王妃様は深く嘆息し、私の手を優しく包み込んだ。
「……いいのです、深くは聞きません。ですが、私には人を見る目があります。この国に必要なのは、手柄を横取りするだけの男ではなく、無から富を生み出せるあなたのような人材です。困ったことがあれば、いつでも私を頼りなさい。私はいつでもあなたの味方ですよ」
「ありがとうございます、王妃様……!」
私は思いがけず心強い言葉をかけてもらえて、嬉しくて涙が出そうになっていた。私は孤独だと思っていたこの場所で王妃様という最強の後ろ盾を得たのだった。
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