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28 昇進が決まっていたフェルナンド
辺境伯ってどういうことなの?
ルイーゼとダミアンに凝視され、フェルナンデスは少し困ったように伯爵に応じた。
「まだ気が早いですよ。来月の凱旋パレードの後に正式な昇爵となりますから」
「何を仰いますか。北の戦線を勝利に導いた功績により、新たに獲得した北方の地を任される辺境伯に叙せられると、もっぱらの評判ですよ。子爵からの大抜擢、実に見事なものですな!」
なっ!
あの男が昇爵だと!?
しかも辺境伯に!?
ダミアンの顔から血の気が引いた。自分が侯爵だからともう威張っていられなくなった。
辺境伯は国境の防衛を担う要職であり、王家からの絶大な信頼がなければ決して任されない地位だ。妻の商才を横取りして偉ぶっているダミアンとは、その重みが根本から違う。周囲の貴族たちの視線も、一瞬にして実力者であるフェルナンドへと移っていった。
フェルナンド様、すごいわ!
見事、密命を成し遂げて、陛下に認められたのね。
「くっ!馬鹿らしい!元子爵の分際で調子に乗るなよっ。俺は先に帰る!」
「あなたっ!」
バツの悪くなったダミアンは捨て台詞を吐くと、肩を怒らせサロンを後にした。
なんて器の小さい人かしら。
あんな人が夫だなんて、恥ずかしい……。
ルイーゼは去り行く夫の背中を見つめながら、失望のため息を吐いた。
「フェルナンド様、夫が大変失礼しました。お詫び申し上げます」
ルイーゼは申し訳なさそうに深々とフェルナンドに謝罪した。
「気にしないでいい。私は平気だよ」
フェルナンドは先ほどまでの厳しい表情を消し、爽やかに微笑んだ。
「昇爵おめでごうございます。それにありがとう……私のために怒ってくださって……」
嬉しかった。
私をかばってくれて。
フェルナンドの行動は傷ついたルイーゼの心を救ってくれた。
「いや……君との幸せを犠牲にして成した功績など、私にとっては栄誉でも何でもないんだ。だが、王命であれば仕方ない。君を守れる力を得られるのなら、受ける価値はあると思ったから」
「フェルナンド様……」
そんなことを言ってくださるなんて。
ルイーゼは恥じらいながらも、フェルナンドに笑みを返した。
苦しい思いを抱えながらも国に尽くし、変わらず優しいフェルナンドに、ルイーゼは深い尊敬と、それ以上の感情を抱き始めていた。
ルイーゼとダミアンに凝視され、フェルナンデスは少し困ったように伯爵に応じた。
「まだ気が早いですよ。来月の凱旋パレードの後に正式な昇爵となりますから」
「何を仰いますか。北の戦線を勝利に導いた功績により、新たに獲得した北方の地を任される辺境伯に叙せられると、もっぱらの評判ですよ。子爵からの大抜擢、実に見事なものですな!」
なっ!
あの男が昇爵だと!?
しかも辺境伯に!?
ダミアンの顔から血の気が引いた。自分が侯爵だからともう威張っていられなくなった。
辺境伯は国境の防衛を担う要職であり、王家からの絶大な信頼がなければ決して任されない地位だ。妻の商才を横取りして偉ぶっているダミアンとは、その重みが根本から違う。周囲の貴族たちの視線も、一瞬にして実力者であるフェルナンドへと移っていった。
フェルナンド様、すごいわ!
見事、密命を成し遂げて、陛下に認められたのね。
「くっ!馬鹿らしい!元子爵の分際で調子に乗るなよっ。俺は先に帰る!」
「あなたっ!」
バツの悪くなったダミアンは捨て台詞を吐くと、肩を怒らせサロンを後にした。
なんて器の小さい人かしら。
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「フェルナンド様、夫が大変失礼しました。お詫び申し上げます」
ルイーゼは申し訳なさそうに深々とフェルナンドに謝罪した。
「気にしないでいい。私は平気だよ」
フェルナンドは先ほどまでの厳しい表情を消し、爽やかに微笑んだ。
「昇爵おめでごうございます。それにありがとう……私のために怒ってくださって……」
嬉しかった。
私をかばってくれて。
フェルナンドの行動は傷ついたルイーゼの心を救ってくれた。
「いや……君との幸せを犠牲にして成した功績など、私にとっては栄誉でも何でもないんだ。だが、王命であれば仕方ない。君を守れる力を得られるのなら、受ける価値はあると思ったから」
「フェルナンド様……」
そんなことを言ってくださるなんて。
ルイーゼは恥じらいながらも、フェルナンドに笑みを返した。
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