そんなに義妹がいいのですね?さようなら、あなた。

nanahi

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31 家族会合

ルイーゼ、ダミアン、モニカ、ルイーゼの父ヴェリオール子爵、義母ローラ、そして実兄ネイサンが一堂に会した。

ダミアンは開き直ったようにふてぶてしく、そっぽを向いている。ローラはいつも以上に胸を張り、虚勢を張るように前を凝視していた。一方のモニカは、悲劇のヒロインを気取るようにうつむいている。

沈黙の中、ヴェリオール子爵が怒りで震える唇を引き結び、圧倒的な威圧感を放った。隣に座るネイサンは、眉根を寄せたまま静かに目を閉じている。

「ダミアン。お前は両親が説得しても、離縁はしないと言い張ったそうだな」

重苦しい空気の中、子爵が口火を切った。

「はあ……まあ、そうですが」

ダミアンは面倒くさそうに生返事をした。

「お前はかつて、ルイーゼを一生大切にすると誓った。想い人からの連絡が途絶え失意のどん底にいたルイーゼにお前は微笑みを取り戻してくれた。さらに何度も私に結婚を直談判しに来た熱意を買って、私は結婚を許したのだぞ!それなのに娘を不幸に陥れてこのザマは何だ!?」

子爵の怒声に、ダミアンはびくりと肩を震わせた。

「モニカ、お前もだ!姉の夫と知りながら関係を持つなど、非常識にも程がある!……ローラ、お前は知っていたのか?」
「え──」

急に矛先を向けられ、ローラは青ざめて言い淀んだ。子爵の全てを見通すかのような目がローラから冷静さを奪っていった。ローラは子爵を敵に回さないために言い繕い始めた。

「わ、私はもちろん、存じませんでしたわ!ええ、知るはずがございません!知っていれば厳しくたしなめておりましたもの!」
「お母様!?」

その卑怯な言葉にモニカが目を割れんばかりに見開いて母に噛みついた。

「私を裏切る気!?お母様は知っていたわ!知った上で『ダミアンをお姉様から奪え』って、私をけしかけたじゃない!」
「何だと!?おい、ローラ、本当なのか?お前はルイーゼの保護者でありながら、私と娘を裏切ったのか!!」

子爵が鬼の形相でローラを睨みつけた。

「あっ、いえ、まさか、その……」

ローラは冷や汗を流しながら慌てふためき、子爵とモニカの顔をせわしなく見比べた。挙句の果てに、彼女はあろうことかルイーゼに泣きついてきた。

「ルイーゼ、助けて頂戴!」
「は?」

ルイーゼは耳を疑った。

「あなたを裏切る気なんてなかったのよ!モニカがあんまりダミアンが欲しいと言うから、私は仕方なく……ね?ネイサンも私を哀れだと思うのなら助けて頂戴!」
「何を馬鹿なことを……母上──あなたは私の大事な妹であるルイーゼを絶望の淵に落とす手助けをしました。私はもうあなたを母上と呼ぶのは今日限りやめます」
「そんなっ」

ネイサンに冷たく拒絶されたローラはうろたえた。

さんざん冷遇し、手ひどく裏切っておきながら、今さら助けを求める。この女は一体どんな神経をしているのか。

「ルイーゼ、ルイーゼはわかってくれるわよね?」

ルイーゼも兄同様、冷徹な眼差しでローラを突き放した。

「『仕方なく』、夫との不貞を黙認したと?母とは本来、娘の愚行を止める役目ではないのですか?」
「う」

ローラはぐうの音も出なかった。

「ルイーゼの言う通りだ!ローラ、お前とはもう離縁だ!娘ともども今すぐこの屋敷から出ていけ!」
「えっ!?」

子爵の怒りにローラはガタガタと震え出した。離縁されるなど、微塵も思っていなかったのだろう。モニカも「私まで!?」と口をパクパクさせている。

ローラの実家は貧しい男爵家だ。裕福な子爵との再婚は彼女にとって最高の『玉の輿』だった。放り出されれば待っているのは困窮と借金地獄である。もちろん娘のモニカにとっても絶体絶命のピンチだった。

冗談じゃないわ。
どうして私まで追い出されなくちゃならないの!?
今こそ切り札を使うのよ──

「皆んな……ちょっと待ってくれる?──」

追い詰められたモニカが、震える声で呟いた。

「私には……宝物が宿っているの」
「宝物?」

全員の視線がモニカに集中した。

「実は私、お義兄様との子を身ごもったの!」
「それは本当か!」

絶望に染まっていたダミアンの顔が、ぱあっと明るくなった。

「まあ! モニカ、素晴らしいじゃない! 跡継ぎを授かったのね! この家にとって最高のニュースだわ。ねえ、旦那様?」

ローラは調子よくモニカの策に乗ろうとした。だが、そこにルイーゼの静かな声が響いた。

「ダミアンの子だなんて、ありえないわ」
「は? お姉様、負け惜しみ? 自分が授かれないからって……」
「黙れ、モニカ」

厳しい声音でネイサンが割って入った。ルイーゼは兄の視線に応えるように、深く頷いた。

その時が来たわ。

「……ダミアン、あなたには黙っていたけれど。残念ながら、あなたには子をなす能力がありません」
「────は?」

ダミアンも、モニカも、ローラも。全員が呆然と固まった。

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