【完結】刺客の私が、生き別れた姉姫の替え玉として王宮に入る

nanahi

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21 姫の過去のかけら

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頭が逆流を始める。


赤子を抱き、そっと頬擦りしている私。
脂汗をかきながら、赤子を桶の湯で洗っている私。
夜泣きする赤子をおんぶしてあやす私。
籠に入れた赤子を木陰に置き、父上と武術の稽古をする私。
赤子を覗き込む私。
両手を伸ばしてくる赤子。
赤子の顔が墨色に塗りつぶされていく。

……あの子は、誰……


雑音。
耳元でじゃりじゃり砂が鳴るような。
遠くで侍女たちの声がする。
私はまだ寝たきりなのか。

王の側室に子が産まれたが双子だったため殺されたと侍女たちが噂をしている。
ここでは双子は殺されるのか……??
 
 
姉姫、姉姫、どういうことだ。
姉姫、私たちは──
 
 
水瓶の記憶が頭をかすめる。
ああ頭が割れそうだ。
 
 
絶対に知られてはならない。
姉姫と私が双子だということを。
 
知られたあかつきには破滅が待っている。
王太子にも誰にも、決して知られてはならない。
 
 
頭が痛い。
父上、父上……
以前同じような痛みから私を救ってくれたのは父上ではなかったか?
誰かから私を引き離して。
 
今どこにいるのです。
もう随分会えていません。
会いたい、会い……
 
 
頭が破裂しそうだ。
私はこのまま死ぬのか?
 
いやむしろ、姉姫のためには、死んでしまった方がいいのだろうか……?
 

私はもう、壊れているのだから。
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