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Ep.2-8
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ヴィヴィアンが水底から浮上するような心地よい感覚とともに目を開けた時、目の前にいたのは愛しいアレクだった。
「アレク!!??どうしてここに!?」
「ヴィヴィアン、体は大丈夫?痛いところはない?」
アレクはヴィヴィアンが大好きだったスカイブルーの瞳でまっすぐな視線を向けてくる。
あんな別れ方をしたはずなのに、アレクはあの日のままの優しさでヴィヴィアンをいたわってくれた。
「そうだ、私、毒を飲まされて──」
誰かが抱きかかえてくれて、助けてくれた記憶がよぎる。
「もしかして、アレクが助けてくれたの?」
「間に合ってよかったよ」
柔和に笑ったアレクに、ヴィヴィアンはたまらず抱きついた。
「ヴィ、ヴィヴィアン!?」
アレクは真っ赤になってあたふたしている。
「ごめんなさい、あのとき私、話も聞かないで追い出して」
ヴィヴィアンはようやくアレクから手を離し、ずっと後悔していることを謝罪した。
「いや、僕こそごめん。あのタイミングであれはなかったよね」
自分も傷ついたはずなのに、アレクはヴィヴィアンを悪くいうことは決してない。
「実は、ゴールダー家にふさわしい男になってから、君にプロポーズをしようと決めてたんだ」
「えっ!!」
ヴィヴィアンは予想外の言葉に雷に打たれたようにアレクを見た。
「あの時はまだ自分の力が足りないと思っていたから、その、君とのキスはまだ早いって、それで──傷つけてごめん」
アレクはうなだれるようにヴィヴィアンに謝った。
ヴィヴィアンは赤面した顔をぶんぶんと左右にふって、「いいの」と繰り返した。
「あのあと、早く一人前になりたくてダイヤモンド鉱山に行ってたから、君がバーネ王国に輿入れしてしまったことも、しばらく知らなかったんだ」
「でも、アレクは船に乗ってこんなに遠くまで来てくれた」
「ついにダイヤモンドを掘り当てたんだ。それでかなりの資金ができたから、ここにも潜り込めた」
アレクは鉱山開発に成功したことで、若くしてかなりの資産家になっていた。
「私たち、やり直せる?」
おずおずとヴィヴィアンがアレクに聞いた。
「もちろんだよ!そもそも僕たちまだ、付き合ってもいないわけだし」
「そそそ、そうよね!私たちまだ、何にもないものね」
ふたりはお互い恥ずかしくて、顔を上げられないままだ。
ヴィヴィアンなどは、うれしさと照れ臭さで、顔が沸騰しそうなほどだった。
「ここでは僕は侍従ってことになってる。だから、王妃の君もみんなの前では侍従として扱って」
「わかった。でもどうやってここに入れたの?王宮にまで潜り込むには、身分証がいるでしょう?」
「この国では偽の身分証なんて、お金でなんとでもなるんだよ」
アレクはこの国に来て感じたことを話し始めた。
「強いように見えて、この国はもろいよ。一部の受益者以外は、ジェハスに不満を持っている。大金を渡すと、みな平気でジェハスを裏切る。圧政とはそういうものだよ」
「ジェハスの弱点をついて、王座から引きずり下ろせないかしら」
アレクは思案したあと、慎重に言葉を選びながら答えた。
「ジェハスの軍事力は強大だ。小さい力ならあっという間に押しつぶされる。でも、いろんな勢力の人たちが協力し合えば、可能だと思う」
ヴィヴィアンは、ジェハスの圧政からみなが解放される未来をふと思い描いた。自分の隣にはアレクがいて、ふたりで手を取り合って生きていく。
「僕だってあいつを許せない。ヴィヴィアンを冷遇して、苦しんでいても助けようともしないなんて」
「力を貸してくれる?」
「もちろんだよ。全力で君の力になる」
ヴィヴィアンはアレクの手をかたく握りしめた。
「やりましょう、ふたりで」
「やろう、ふたりで。全てが終わったら、きっと一緒になろう」
ついにヴィヴィアンは、ジェハス打倒のための第一歩を踏み出した。
「アレク!!??どうしてここに!?」
「ヴィヴィアン、体は大丈夫?痛いところはない?」
アレクはヴィヴィアンが大好きだったスカイブルーの瞳でまっすぐな視線を向けてくる。
あんな別れ方をしたはずなのに、アレクはあの日のままの優しさでヴィヴィアンをいたわってくれた。
「そうだ、私、毒を飲まされて──」
誰かが抱きかかえてくれて、助けてくれた記憶がよぎる。
「もしかして、アレクが助けてくれたの?」
「間に合ってよかったよ」
柔和に笑ったアレクに、ヴィヴィアンはたまらず抱きついた。
「ヴィ、ヴィヴィアン!?」
アレクは真っ赤になってあたふたしている。
「ごめんなさい、あのとき私、話も聞かないで追い出して」
ヴィヴィアンはようやくアレクから手を離し、ずっと後悔していることを謝罪した。
「いや、僕こそごめん。あのタイミングであれはなかったよね」
自分も傷ついたはずなのに、アレクはヴィヴィアンを悪くいうことは決してない。
「実は、ゴールダー家にふさわしい男になってから、君にプロポーズをしようと決めてたんだ」
「えっ!!」
ヴィヴィアンは予想外の言葉に雷に打たれたようにアレクを見た。
「あの時はまだ自分の力が足りないと思っていたから、その、君とのキスはまだ早いって、それで──傷つけてごめん」
アレクはうなだれるようにヴィヴィアンに謝った。
ヴィヴィアンは赤面した顔をぶんぶんと左右にふって、「いいの」と繰り返した。
「あのあと、早く一人前になりたくてダイヤモンド鉱山に行ってたから、君がバーネ王国に輿入れしてしまったことも、しばらく知らなかったんだ」
「でも、アレクは船に乗ってこんなに遠くまで来てくれた」
「ついにダイヤモンドを掘り当てたんだ。それでかなりの資金ができたから、ここにも潜り込めた」
アレクは鉱山開発に成功したことで、若くしてかなりの資産家になっていた。
「私たち、やり直せる?」
おずおずとヴィヴィアンがアレクに聞いた。
「もちろんだよ!そもそも僕たちまだ、付き合ってもいないわけだし」
「そそそ、そうよね!私たちまだ、何にもないものね」
ふたりはお互い恥ずかしくて、顔を上げられないままだ。
ヴィヴィアンなどは、うれしさと照れ臭さで、顔が沸騰しそうなほどだった。
「ここでは僕は侍従ってことになってる。だから、王妃の君もみんなの前では侍従として扱って」
「わかった。でもどうやってここに入れたの?王宮にまで潜り込むには、身分証がいるでしょう?」
「この国では偽の身分証なんて、お金でなんとでもなるんだよ」
アレクはこの国に来て感じたことを話し始めた。
「強いように見えて、この国はもろいよ。一部の受益者以外は、ジェハスに不満を持っている。大金を渡すと、みな平気でジェハスを裏切る。圧政とはそういうものだよ」
「ジェハスの弱点をついて、王座から引きずり下ろせないかしら」
アレクは思案したあと、慎重に言葉を選びながら答えた。
「ジェハスの軍事力は強大だ。小さい力ならあっという間に押しつぶされる。でも、いろんな勢力の人たちが協力し合えば、可能だと思う」
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「力を貸してくれる?」
「もちろんだよ。全力で君の力になる」
ヴィヴィアンはアレクの手をかたく握りしめた。
「やりましょう、ふたりで」
「やろう、ふたりで。全てが終わったら、きっと一緒になろう」
ついにヴィヴィアンは、ジェハス打倒のための第一歩を踏み出した。
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