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Ep.2-11
「あはははは!はーっははは!!」
デリカは愉快でたまらず、淑女の品格も捨て大笑いした。
「魔女が廃妃になったとはね!」
どうやら、アーシャがらみのことでしくじったらしいと噂で聞いたが、廃妃の館から戻れた者はいない。事実上の後宮追放だった。
「あちらから自滅してくれましたわね」
ミアも今回のジェハスの断罪を歓迎している。
残りの邪魔者はデリカだけね。
格下のアーシャは後でどうとでもなる。
ミアは狐のような狡猾さをデリカの前では隠している。
「とどめをさしたらいかがかしら?王宮の見せもの小屋にちょうどいい生き物がいましたわよ」
またしてもミアはデリカをけしかける。
ヴィヴィアンの降格で気をよくしているデリカはミアに操られているとも知らず、「それはいいわね」と賛同した。
「待ってなさい、魔女。私たちからのプレゼントよ」
アーシャは警備兵に賄賂をわたし、こっそりヴィヴィアンのいる廃妃の館へとやって来た。
「ヴィヴィアン様、私のせいで、私のせいで──」
「あなたのせいじゃないわ。ジェハスはゴールダー家の財産が欲しいの。他の理由であっても私を廃妃にしたわ」
涙で可憐な顔がぐしゃぐしゃになっているアーシャをヴィヴィアンはなぐさめた。
「私はきっと命を狙われる。アレクの情報によると、私に毒をもったのはデリカとミアのようなの。だからあなたはふたりを監視して。怪しい動きがあったら、赤い風船を館のそばで飛ばして頂戴」
ここには侍女の一人もつけられていない。何かあってもヴィヴィアン独りで戦わなければならなかった。
「承知しました」
アーシャは涙をぬぐった。
ヴィヴィアンは続けて気になっていたことを聞いた。
「アレクは?」
「あれから王宮内の者たちへの検閲が厳しくなってしまって。アレク様は派手な動きができない状況です。でもきっとヴィヴィアン様を助けに行くとおっしゃっていましたわ」
「そう。ありがとう」
きっと来てくれる。ヴィヴィアンはそう信じた。
ある夕暮れ時、赤い風船が館のそばを飛んだ。
「アーシャからの知らせだわ!何かが起こる」
ヴィヴィアンは部屋に入り、ベッドの隅に身をかがめた。
今度は毒?
それとも。
シュルシュル……
何かが這う音にヴィヴィアンは気づいた。
ビシ、ピシ、と床が軋む。
ヴィヴィアンは恐怖を感じ、いっそう身を固くした。
ベッドのそばまで侵入してきたそれはゆっくりと鎌首をもたげた。
大蛇の目がヴィヴィアンと合った。
「ひ」
全長10メートルはあろうか。太い腹に飲み込まれたらひとたまりもない。
ヴィヴィアンは急いで動物の目が回る呪文を詠唱した。
だが、蛇は動きを止めるどころか、ヴィヴィアンに狙いを定めて巻きついて来た。
「魔法が効かない!?」
巻きついてくる蛇から、ぷんと薬草のような匂いがした。
「この蛇、暴走するように麻薬を打たれているわ!」
ギリ、ギリ。
大蛇の締め付けはますます強くなり、ヴィヴィアンはついに窒息しそうになってきた。
「う、く……」
酸欠で目が霞む。
「アル……」
愛しい人の名が口からもれた。
ッシュピュッ!
窓の外から射られた矢が、ガラスを突き破り、大蛇の眉間を正確に撃ち抜いた。
大蛇はもんどりうって倒れ、そのまま絶命した。
「ヴィヴィアン、大丈夫か!?」
弓矢を持ったアレクが駆け寄ってきて、ヴィヴィアンを抱き起こした。
アレクは弓の名手だった。家が貧しく、食料を得るためよく森で狩りをしていたのだ。
やっぱりアレクが来てくれた。
「アレク……!」
ヴィヴィアンはアレクの胸に飛び込んだ。
「ヴィヴィアン……」
ふたりが抱きしめ合っていたとき、声がした。
「英雄のお出ましか。くだらんな」
ふたりはぎくりとして、声の主を見た。
ジェハスだった。
デリカは愉快でたまらず、淑女の品格も捨て大笑いした。
「魔女が廃妃になったとはね!」
どうやら、アーシャがらみのことでしくじったらしいと噂で聞いたが、廃妃の館から戻れた者はいない。事実上の後宮追放だった。
「あちらから自滅してくれましたわね」
ミアも今回のジェハスの断罪を歓迎している。
残りの邪魔者はデリカだけね。
格下のアーシャは後でどうとでもなる。
ミアは狐のような狡猾さをデリカの前では隠している。
「とどめをさしたらいかがかしら?王宮の見せもの小屋にちょうどいい生き物がいましたわよ」
またしてもミアはデリカをけしかける。
ヴィヴィアンの降格で気をよくしているデリカはミアに操られているとも知らず、「それはいいわね」と賛同した。
「待ってなさい、魔女。私たちからのプレゼントよ」
アーシャは警備兵に賄賂をわたし、こっそりヴィヴィアンのいる廃妃の館へとやって来た。
「ヴィヴィアン様、私のせいで、私のせいで──」
「あなたのせいじゃないわ。ジェハスはゴールダー家の財産が欲しいの。他の理由であっても私を廃妃にしたわ」
涙で可憐な顔がぐしゃぐしゃになっているアーシャをヴィヴィアンはなぐさめた。
「私はきっと命を狙われる。アレクの情報によると、私に毒をもったのはデリカとミアのようなの。だからあなたはふたりを監視して。怪しい動きがあったら、赤い風船を館のそばで飛ばして頂戴」
ここには侍女の一人もつけられていない。何かあってもヴィヴィアン独りで戦わなければならなかった。
「承知しました」
アーシャは涙をぬぐった。
ヴィヴィアンは続けて気になっていたことを聞いた。
「アレクは?」
「あれから王宮内の者たちへの検閲が厳しくなってしまって。アレク様は派手な動きができない状況です。でもきっとヴィヴィアン様を助けに行くとおっしゃっていましたわ」
「そう。ありがとう」
きっと来てくれる。ヴィヴィアンはそう信じた。
ある夕暮れ時、赤い風船が館のそばを飛んだ。
「アーシャからの知らせだわ!何かが起こる」
ヴィヴィアンは部屋に入り、ベッドの隅に身をかがめた。
今度は毒?
それとも。
シュルシュル……
何かが這う音にヴィヴィアンは気づいた。
ビシ、ピシ、と床が軋む。
ヴィヴィアンは恐怖を感じ、いっそう身を固くした。
ベッドのそばまで侵入してきたそれはゆっくりと鎌首をもたげた。
大蛇の目がヴィヴィアンと合った。
「ひ」
全長10メートルはあろうか。太い腹に飲み込まれたらひとたまりもない。
ヴィヴィアンは急いで動物の目が回る呪文を詠唱した。
だが、蛇は動きを止めるどころか、ヴィヴィアンに狙いを定めて巻きついて来た。
「魔法が効かない!?」
巻きついてくる蛇から、ぷんと薬草のような匂いがした。
「この蛇、暴走するように麻薬を打たれているわ!」
ギリ、ギリ。
大蛇の締め付けはますます強くなり、ヴィヴィアンはついに窒息しそうになってきた。
「う、く……」
酸欠で目が霞む。
「アル……」
愛しい人の名が口からもれた。
ッシュピュッ!
窓の外から射られた矢が、ガラスを突き破り、大蛇の眉間を正確に撃ち抜いた。
大蛇はもんどりうって倒れ、そのまま絶命した。
「ヴィヴィアン、大丈夫か!?」
弓矢を持ったアレクが駆け寄ってきて、ヴィヴィアンを抱き起こした。
アレクは弓の名手だった。家が貧しく、食料を得るためよく森で狩りをしていたのだ。
やっぱりアレクが来てくれた。
「アレク……!」
ヴィヴィアンはアレクの胸に飛び込んだ。
「ヴィヴィアン……」
ふたりが抱きしめ合っていたとき、声がした。
「英雄のお出ましか。くだらんな」
ふたりはぎくりとして、声の主を見た。
ジェハスだった。
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