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60 魔獣の毒
魔物ジェーンのぬめぬめとした黒い足が地下神殿の床を踏み潰していく。
意識の中ではジェーンはガネシュを一途に探しているだけであったが、実際はマハ王宮に壊滅的な破壊をもたらしていた。
ぐらぐらと揺れる床に立っていられず、翡翠や王太子、ルシウスたちは地に這いつくばっている。
魔物ジェーンが翡翠をその目に捉えた。マハの大地の化身である女王を無意識に自分を攻撃する【敵】と認識する。
<消えてもらいますわ>
魔物ジェーンは翡翠めがけてナマズの尾を振り回した。
「危ない!!」
直後、翡翠の目の前に王太子が覆いかぶさった。王太子に魔物の尾が直撃し、王太子は壁に吹き飛ばされた。
壁に打ち付けられ床に落ちる王太子。翡翠が蒼白になって王太子の元へ駆けつける。
「殿下! 殿下っ!!」
必死に呼びかけるも王太子の意識は混濁しつつあった。王太子の背中から黒い煙が立ち始める。翡翠が背中を見て言葉を失う。
魔獣の毒で王太子の背中が溶け始めていた。
「嫌だ、だめだ、死ぬな!!」
翡翠は涙ぐみながらオロオロと王太子の手を握った。
「最後に、名を……呼んでくれないか……私は、アレクサンドル、という」
翡翠はもはや焦点の合わない王太子の目を見つめながら、「アレクサンドル! アレクサンドル! 何度でも言ってやる、アレクサンドル!!」と呼びかけた。
「は……嬉しいな……」
王太子は苦痛を通り超え全身が麻痺していたが、翡翠に名前を呼んでもらった心地よさにとろけるように微笑んだ。
魔獣ジェーンが神殿を破壊し続ける中、ルシウスは逃げ回っている。翡翠は壊れつつある神殿を認めつつも、あることを決意する。
「アレクサンドル……私はお前に死んでほしくない」
慈愛に満ちた声が王太子の耳をくすぐる。王太子は闇に沈んでいく意識の中、光を見た。
温かい。誰かそばにいる。この光は神か──?
「お前を、愛している──」
まばゆい銀光を纏った翡翠は、両手を王太子の頬に添え、そっと唇を重ねた。
意識の中ではジェーンはガネシュを一途に探しているだけであったが、実際はマハ王宮に壊滅的な破壊をもたらしていた。
ぐらぐらと揺れる床に立っていられず、翡翠や王太子、ルシウスたちは地に這いつくばっている。
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<消えてもらいますわ>
魔物ジェーンは翡翠めがけてナマズの尾を振り回した。
「危ない!!」
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翡翠は涙ぐみながらオロオロと王太子の手を握った。
「最後に、名を……呼んでくれないか……私は、アレクサンドル、という」
翡翠はもはや焦点の合わない王太子の目を見つめながら、「アレクサンドル! アレクサンドル! 何度でも言ってやる、アレクサンドル!!」と呼びかけた。
「は……嬉しいな……」
王太子は苦痛を通り超え全身が麻痺していたが、翡翠に名前を呼んでもらった心地よさにとろけるように微笑んだ。
魔獣ジェーンが神殿を破壊し続ける中、ルシウスは逃げ回っている。翡翠は壊れつつある神殿を認めつつも、あることを決意する。
「アレクサンドル……私はお前に死んでほしくない」
慈愛に満ちた声が王太子の耳をくすぐる。王太子は闇に沈んでいく意識の中、光を見た。
温かい。誰かそばにいる。この光は神か──?
「お前を、愛している──」
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