追放同然で遠国に献上された古代種の姫を王太子が溺愛しているらしい

nanahi

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59 チャンス到来

魔物ジェーンが王宮の天井を踏み抜いた反動で、謁見の間の天井も崩れ始めた。

「うわあああ!!」
「危ない、よけるんだ!!」

ガネシュの鉄檻を囲んで呪文を唱えている魔術師や護衛の兵たちの上に天井の巨石が落ちて来た。よけきれず潰される者もいる。

「出来る者は詠唱を続けよ!!」

魔術師の長が叫ぶも、数人の魔術師は絶命したり大怪我を負ったりしていてパニック状態だった。

檻の中のガネシュは重い頭の中で何かが起こっているのを察知していた。呪文が弱まった? 動けるぞ。

床に臥していたガネシュは顔を上げた。顔の全面が真っ黒に染まり、目が赤黒く光っている。

「翡翠……祖国に帰る……」

しゅうしゅうと黒い煙を吐きながら、本能的に頭に浮かぶ言葉が口から漏れ出る。ぐぐぐと鉛のように重い体を持ち上げる。

ちょうどその時、落下してきた石の衝撃で鉄の檻がぐにゃりとひしゃげた。その好機をガネシュは見逃さなかった。

ガネシュは鉄檻の隙間を両手で広げはじめた。檻の護符がばん! と焼け落ちる。魔術も使っていないのに、いとも簡単に檻がゆがんだ。何だ、この怪力は……? 僕はどうしちゃったんだろう?

ガネシュが檻を脱出しようとしている様子に魔術師と兵士たちは慌てて声を荒げる。

「魔術師は詠唱を強めよ!」
「護衛の兵は迎えうて!」

生き残っている魔術師たちは懸命に呪文を唱える。兵士たちは剣を抜き一斉に構える。魔術師の詠唱により自分を締め上げる重力を感じたが、ガネシュは力を込め足を踏み出した。

「この先は行かせんぞ! かかれえ!」

兵士たちが次々と切り掛かってくる。

「邪魔しないでくれる?」

ガネシュは不気味な赤い目で睨み、剣を腕で払いのけた。ぶおん、と風が起こり、兵や魔術師がみな吹き飛ばされる。

「バケモノだ……」

魔術師のひとりがつぶやき気を失った。ガネシュは「翡翠、祖国、翡翠、祖国」と機械のように繰り返しながら、「翡翠の気配がする。こっちだな」と、導かれるように地下神殿を目指し始めた。

床に打ち付けられ怪我で倒れていたミランが気力を振り絞り立ち上がった。

「殿下、に……お伝えせねば」
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