婚約破棄の代償

nanahi

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22 謎の肖像画

長引く審議にここでまた一旦お開きとなった。

メアリにあんな裏の顔があったなんて……

混乱気味の頭でアダムスがぼんやりと前を見上げると、広間の壁に豪華な額縁に入った肖像画が飾られてあるのが目に入った。

あんなのあったの気づかなかったな。
それにしても大広間の玉座の真上に飾るなら普通歴代陛下の肖像画だろう?
なのにあの絵は────あれ?
あれ?
……エバンジェリン???

その肖像画に描かれていたのはエバンジェリンにそっくりの女性だった。艶やかな黒髪に透明度の高いアクアマリンの瞳。古風だが豪華なドレスを身にまとい桃色の頬でこちらを見てふわりと微笑んでいるとても美しい絵だった。

どういうことなんだろう。
あれはエバンジェリンなのか??

王宮の階段を降りながら疑問で頭をいっぱいにし歩いていたアダムスは馬車広場でエバンジェリンを見かけた。

エバンジェリン!

アダムスは現実に引き戻された。

僕は何も知らないあまり、君を、君を──!

アダムスはエバンジェリンをたくさん傷つけてしまったことを謝りたいと強烈に思った。アダムスはエバンジェリンに声をかけようとした。だがエバンジェリンの隣にはホロー辺境伯がいた。辺境伯は馬車に乗ろうとするエバンジェリンに手を差し伸べた。それに応えるようにエバンジェリンは辺境伯にそっと手を差し出した。

僕のエバンジェリンだぞ!

二人の手が触れそうになった時アダムスはカッとなって思わず叫んだ。

「エバンジェリン!」

二人がアダムスを見た。

「エバンジェリン!お守りも、その、僕は、僕は……っ」

とっさに声をかけたものの焦りのあまりアダムスは次の言葉がすぐには出てこなかった。

さらに近づこうとしたアダムスを衛兵たちが行かせないよう槍を柵のようにして止めた。

「通してくれ!エバンジェリン、エバンジェリン!」

エバンジェリンはしばらくアダムスを見ていたが辺境伯がエバンジェリンの手を取り馬車の中へ促し一緒に乗り込んでしまった。

「待って!!」

鞭の音とともに走り去っていく黒塗りの馬車をアダムスは何も出来ないまま見送るしかなかった。

エバンジェリンが遠い。
この腕で抱きしめたあの瞬間が懐かしい。

大切なものが手からすり抜けていくような感覚。アダムスの心はぽっかりと穴が空いたように空虚だった。




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