亡命聖女─アンデッドを祓える力は内緒だけど、隣の大陸の王陛下が溺愛してくる

nanahi

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29 夜会

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王宮の大ホール。
煌々と明るく灯るシャンデリア。外はとっぷりと日が暮れている。

楽師たちの優雅な演奏が流れている中、貴族たちがワイングラスを手に歓談している。

ユークリッドは貴族の間を周りながら、日頃の労をねぎらいつつ、問題や困っていることはないかとヒヤリングをしている。

ホールの入り口から、デルタ一向が現れると、にわかに貴族たちがざわめき始めた。


「ペールトン公爵令嬢のデルタだ。挨拶に行っておいた方がいいな」


幾人も貴族たちが足早にデルタに駆け寄り、ご機嫌をとり始めた。デルタの父、ペールトン公爵は貴族一の絶対権力者。彼らの間で”裏の王”と呼ばれていた。

ユークリッドはデルタの後ろでうつむいているローザリアに気づいた。


「ローザリア、どうしてここに!?」


デルタはこれ見よがしにローザリアを皆に紹介した。


「綺麗な方でしょう?先王様の知人のご令嬢だそうですわ。どなたか、ダンスのお相手をして差し上げて」

「え?え?私、無理──」


部屋で見た子どものアンデッドのことに気を取られていたローザリアは、慌てて辞退しようとした。だが、デルタは構わずローザリアの背中を強く押し出した。


「では、私が」


貴公子が一人、ローザリアの相手を申し出た。


「え、あ…」


ローザリアは貴公子に手を引かれるまま、ホールの中央に連れて行かれてしまった。


どうしよう。この国のダンスなんてわからないのに…


ローザリアの心配をよそに、デルタの合図で楽師がダンス曲を奏で始める。


「異国出身のあんたには踊れないでしょう。恥をかくといいわ」


デルタは内心笑っていた。

ユークリッドはローザリアが困っているのではないかと感じ、止めに入ろうとローザリアの元へ駆け寄ろうとしていた。

一方、ローザリアは焦る気持ちをなんとか抑えながら、曲を聞き取ろうと耳を研ぎ澄ませた。


この曲、あの国で教えられたリズムと似てる…
だったら、踊れるかもしれない。


ローザリアは孤児院出身だったが、ジェム大陸の国々を転々とする中、王宮のたしなみとしてダンスの教養も教わっていた。

貴公子の動きに合わせるように、ローザリアはステップを踏みはじめた。


「ちょっと…!なんで踊れるの!?」


デルタは予想外の展開に思わず怒りの声を吐いた。


「ほう。なかなか優雅ですな」


貴族たちがローザリアのなめらかなダンスに関心している。


「それにずいぶん美しい令嬢ではないか」


本当に、綺麗だ。


ユークリッドはいつの間にか足を止め、ローザリアに魅入っていた。

淡いピンクのドレス。品よく結い上げた濃い茶色の髪に真珠の髪飾りが映えている。陶器のように白い肩と胸元にどきりとする。

そのユークリッドの様子が面白くないのはレオだ。


デルタ嬢は、全くやることなすこと失敗して。


舌打ちした後レオは、ローザリアに熱い視線を送っているユークリッドにため息をついた。






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