亡命聖女─アンデッドを祓える力は内緒だけど、隣の大陸の王陛下が溺愛してくる

nanahi

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78 奇跡

「待って!陛下、嫌あああ!!!」


その時、左手にはめたピンクサファイアの指輪がキラリと光った。


″二人で幸せになろう。絶対だよ″


ユークリッドの声が聞こえた気がした。
絶望の淵に立たされたローザリアに、ふとある考えが閃いた。


待って。
そうよ試すのよ。
むざむざと陛下を死なせるくらいなら。


最後の手段だ。ローザリアは手から伝う血を今度はユークリッドの口元に滴らせた。この深い傷も聖女の血を直接飲めば助かるかも知れない。

ローザリアは運命を一か八かにかけたのだ。口に垂らした聖女の血はじゅうじゅうと音を立てユークリッドの口内を焼く。だがユークリッドはもう動かなかった。


「…!」


ローザリアは諦めなかった。自らの血を口に含み、ユークリッドに口づけ、喉の奥に押し込んだ。

何度目かの口づけの後、ユークリッドの口から金と銀の粒子が舞った。程なくして全身がビクビクっと痙攣を始めた。


「陛下!!」


ローザリアは苦痛で暴れるユークリッドの頭を胸に抱き込み、一心に祈った。


お願い、陛下、私を受け入れて!

聖女の血よ、クシュマトハの血よ!

陛下をこの世に連れ戻して──!!!






どれくらい時が経っただろう。ついにユークリッドの痙攣がおさまっていた。
疲労困憊で汗だくのローザリアはユークリッドの変化に気づいた。

ユークリッドの首の肉がたちどころに再生され、傷が跡形もなく癒えていく。
ついに出血が完全に止まった。

ユークリッドがうっすらと目を開けた。


「陛下、目──!」


長いまつ毛が揺れるユークリッドの美しい緑眼は、なぜか左目のほうだけ銀色へと変わっていた。緑と銀のオッドアイだ。より濃いクシュマトハの血を受容したのだろうか。


「ローザリア、僕は…?」


まだ意識が朦朧としているユークリッドに、ローザリアは目に涙をいっぱいにためながら呼びかけた。


「おかえり、陛下──」





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