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81 新しい王国
王宮の庭を歩きながら、ユークリッドとネイブと三人で統治の話をしていた時だった。
「グキュル」
動物のような鳴き声を上げ、一匹の子どもアンデッドがこちらをじーっと見ている。
銀髪銀眼。ローザリアはその愛らしい巻き毛に見覚えがあった。
「あの子!」
ローザリアが夜会用のドレスに着替えていた時、部屋に侵入してきた男の子アンデッドだった。
あの時は気が動転して気づかなかったけど、銀の髪と銀の目…もしかして──
ローザリアの予想通り、男の子アンデッドが両手を広げ、ネイブに向かって発した言葉は。
「ネイブ兄ぃ」
呼ばれたネイブは信じられないという表情で男の子アンデッドを凝視した。そして、ぽつりと呟いた。
「まさか……まさか、アピーレク…なのか?」
すぐに男の子アンデッドはうんうん、と無邪気にうなずいた。
「アピーレク!!!」
ネイブはよろめきながらアピーレクに歩み寄る。アピーレクは盗賊の襲撃で所在不明になっていた子どもの一人だった。近所に住んでいて、よく遊んであげた記憶があった。
可哀想なことに、盗賊にさらわれた後、何らかの理由ですぐに死んでしまったのだろう。ネイブがどんなに探しても見つからないわけだった。
「は…なんてことだ…」
できることなら、生者として会いたかった。けれど、アンデッドになったとしても、助け合って暮らしていたクシュマトハの大切な仲間だ。ネイブは目の前にアピーレクがいることが心の底から嬉しかった。
ネイブはアピーレクを抱きしめると、「すまない…見つけるのが遅くなって…」と言ったきり、しばらく体を震わせ泣いた。
一部始終を見ていたローザリアは、感動の涙をぬぐい、ある決断を下した。
「ネイブ宰相、それに陛下。決めた」
二人に向き合い、ローザリアは宣言した。
「ユートピア、創る。人とアンデッド共存する、ユートピア!」
クシュマトハ=ルクセン王国の誕生だった。
「グキュル」
動物のような鳴き声を上げ、一匹の子どもアンデッドがこちらをじーっと見ている。
銀髪銀眼。ローザリアはその愛らしい巻き毛に見覚えがあった。
「あの子!」
ローザリアが夜会用のドレスに着替えていた時、部屋に侵入してきた男の子アンデッドだった。
あの時は気が動転して気づかなかったけど、銀の髪と銀の目…もしかして──
ローザリアの予想通り、男の子アンデッドが両手を広げ、ネイブに向かって発した言葉は。
「ネイブ兄ぃ」
呼ばれたネイブは信じられないという表情で男の子アンデッドを凝視した。そして、ぽつりと呟いた。
「まさか……まさか、アピーレク…なのか?」
すぐに男の子アンデッドはうんうん、と無邪気にうなずいた。
「アピーレク!!!」
ネイブはよろめきながらアピーレクに歩み寄る。アピーレクは盗賊の襲撃で所在不明になっていた子どもの一人だった。近所に住んでいて、よく遊んであげた記憶があった。
可哀想なことに、盗賊にさらわれた後、何らかの理由ですぐに死んでしまったのだろう。ネイブがどんなに探しても見つからないわけだった。
「は…なんてことだ…」
できることなら、生者として会いたかった。けれど、アンデッドになったとしても、助け合って暮らしていたクシュマトハの大切な仲間だ。ネイブは目の前にアピーレクがいることが心の底から嬉しかった。
ネイブはアピーレクを抱きしめると、「すまない…見つけるのが遅くなって…」と言ったきり、しばらく体を震わせ泣いた。
一部始終を見ていたローザリアは、感動の涙をぬぐい、ある決断を下した。
「ネイブ宰相、それに陛下。決めた」
二人に向き合い、ローザリアは宣言した。
「ユートピア、創る。人とアンデッド共存する、ユートピア!」
クシュマトハ=ルクセン王国の誕生だった。
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