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21 おばあ様 蘭視点
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ストレスで我慢できなくなって、抱っこ紐で聖斗をだき、評判のスイーツビュッフェに行こうと街に出た時だった。
店のテラスのテーブル席で紅茶を飲んでいる着物の女性に目が止まった。
あの人確か──!
「ご無沙汰しております、天岸さん」
私の声に天岸さんが顔を上げた。
「あら、えっと──」
首を少しかしげ、すぐに私を思い出せないようだった。
「ああ、私あのころまだ中学生だったから。和田島蘭です。和田島運送の」
「あら!蘭ちゃん!?懐かしいわね~綺麗になって。それにかわいい赤ちゃん。結婚したのね、おめでとう」
天岸さんは天岸食品の創業家で、実家が私の故郷にあった。
運送業を営んでいたパパは天岸食品の仕事を担当していて、昔は親交があったのだ。
「よかったわ。お元気そうで。あの時は心配したのよ?」
バカなパパが連帯保証人にされて、夜逃げ同然で家を出て、一家離散になった件だ。
「あの時はとんだご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。私は中学生で何もできなくて」
「いいのよ。困ったことがあったら、私に相談してちょうだいね」
やった。
その言葉を待っていた──
私が内心ほくそ笑んだ時、カチャンとお皿がぶつかる音がした。
私が振り向くと、あの女がスイーツの皿を手にしたまま、青い顔で私を見ていた。
「なんであんたが──」
私が顔をしかめると、あの女はオロオロして「えっと……」と口ごもった。
はっきりしないで、毎度毎度いらつく女。
そうだ。
私の家柄を見せつけて驚かせてやろう。
「この方はあの大手食品メーカー、天岸グループの創業家のご一族なの。私、天岸さんと知り合いなのよ。びっくりした? あなたには雲の上の存在でしょうけど」
ふん、地団駄踏んで悔しがりなさい。
私の家はなかなかの資産家だったのよ。
私が得意げにあの女を見下ろしていると、ふいに天岸さんが言った。
「蘭ちゃん、沙耶と知り合いなの?」
「え??」
ぽかんとしている私に天岸さんがさらに言葉を重ねた。
「ごめんなさい、ちゃんと言っていなかったわね。沙耶は私の孫なの」
は──────?????
ちょっと待って、ちょっと待って。
孫?
大企業の創業家の孫??
あの女が???
節約しか脳のないあの女が???
「へ、へえ……それはびっくり」
私はひきつった顔でやっと返事をした。
あの女は無言のまま下を向き、突っ立ったままだ。
「せっかくだから、蘭ちゃんもご一緒にどう?かわいい赤ちゃんにも何かあるかしら、ここで食べられるもの──」
「いえ!」
せっかくの申し出だったけど、その時の私は頭が混乱して、その場から逃げ出したかった。
少し冷静になろう。
そして計画を組み直そう。
警察からもあの女との接触禁止を言われているし、今日は偶然だからいいだろうけど、一応用心しておかないと。
「じゃあ、天城さん、今日はこれで」
私は天岸さんに作り笑いをふりまきながら、あの女をチラ見して、その場を去った。
店のテラスのテーブル席で紅茶を飲んでいる着物の女性に目が止まった。
あの人確か──!
「ご無沙汰しております、天岸さん」
私の声に天岸さんが顔を上げた。
「あら、えっと──」
首を少しかしげ、すぐに私を思い出せないようだった。
「ああ、私あのころまだ中学生だったから。和田島蘭です。和田島運送の」
「あら!蘭ちゃん!?懐かしいわね~綺麗になって。それにかわいい赤ちゃん。結婚したのね、おめでとう」
天岸さんは天岸食品の創業家で、実家が私の故郷にあった。
運送業を営んでいたパパは天岸食品の仕事を担当していて、昔は親交があったのだ。
「よかったわ。お元気そうで。あの時は心配したのよ?」
バカなパパが連帯保証人にされて、夜逃げ同然で家を出て、一家離散になった件だ。
「あの時はとんだご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。私は中学生で何もできなくて」
「いいのよ。困ったことがあったら、私に相談してちょうだいね」
やった。
その言葉を待っていた──
私が内心ほくそ笑んだ時、カチャンとお皿がぶつかる音がした。
私が振り向くと、あの女がスイーツの皿を手にしたまま、青い顔で私を見ていた。
「なんであんたが──」
私が顔をしかめると、あの女はオロオロして「えっと……」と口ごもった。
はっきりしないで、毎度毎度いらつく女。
そうだ。
私の家柄を見せつけて驚かせてやろう。
「この方はあの大手食品メーカー、天岸グループの創業家のご一族なの。私、天岸さんと知り合いなのよ。びっくりした? あなたには雲の上の存在でしょうけど」
ふん、地団駄踏んで悔しがりなさい。
私の家はなかなかの資産家だったのよ。
私が得意げにあの女を見下ろしていると、ふいに天岸さんが言った。
「蘭ちゃん、沙耶と知り合いなの?」
「え??」
ぽかんとしている私に天岸さんがさらに言葉を重ねた。
「ごめんなさい、ちゃんと言っていなかったわね。沙耶は私の孫なの」
は──────?????
ちょっと待って、ちょっと待って。
孫?
大企業の創業家の孫??
あの女が???
節約しか脳のないあの女が???
「へ、へえ……それはびっくり」
私はひきつった顔でやっと返事をした。
あの女は無言のまま下を向き、突っ立ったままだ。
「せっかくだから、蘭ちゃんもご一緒にどう?かわいい赤ちゃんにも何かあるかしら、ここで食べられるもの──」
「いえ!」
せっかくの申し出だったけど、その時の私は頭が混乱して、その場から逃げ出したかった。
少し冷静になろう。
そして計画を組み直そう。
警察からもあの女との接触禁止を言われているし、今日は偶然だからいいだろうけど、一応用心しておかないと。
「じゃあ、天城さん、今日はこれで」
私は天岸さんに作り笑いをふりまきながら、あの女をチラ見して、その場を去った。
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