フッてくれてありがとう

nanahi

文字の大きさ
26 / 49

26 DNA検査 優斗視点

しおりを挟む
蘭は怪我をした聖斗を見て、「あら、かわいそうに」と言っただけだった。

薄情な母親だな。
もっと心配しないのか?
俺を見習え。


先日、俺は蘭にだまって聖斗の毛髪をDNA検査に出した。

今、その結果が手元にある。
メモを見た時はつい取り乱してしまったが、大丈夫。
一応確認するだけだ。

俺はトイレにこもり、鍵をかけると、緊張でこわばる指でゆっくりと封筒を開けた。


大丈夫。
きっと、大丈夫。

だって、聖斗のこと、あんなに可愛く思えたんだから。
あのメモ用紙はきっと書き間違えだ。

血は繋がってる。
わかるんだ。

本能だろ。
でなければ、俺の指をあんなふうにぎゅっと握り返さないだろ?

俺は大きく息を吐いた後、意を決して、結果に目を通し始めた。



- - - - - - - - - 

【鑑定結果の結論】

被検者(推定父親) 氏名:三橋 優斗
被検者(実子) 氏名:三橋 聖斗

鑑定項目 結果

STR遺伝子型一致分析結果
多数の遺伝子座において、被検者(推定父親)と被検者(実子)の間に遺伝子型が一致しない箇所が認められました。

父性否定確率 (Paternity Exclusion Probability) 99.9999%
父性肯定確率 (Paternity Inclusion Probability) 0.0001%未満

- - - - - - - - - 


すぐには、内容が頭に入ってこなかった。



”遺伝子型が一致しない箇所が認められました。”

”遺伝子型が一致しない箇所が認められました。”

”遺伝子型が一致しない箇所が認められました。”



俺は目を皿のようにしながら、この箇所を何度も読み返した。


一致、しないって、何が?


”父性否定確率、99.9999%”


──

え。

ええ?



じわり、と、どす黒く恐ろしい事実が俺の心を取り囲んだ。



聖斗は、

俺の子、じゃ、

ない────


「……」


俺は声も出なかった。
しばらく息もできなかった。

芽生えかけていた親子愛が、音を立てて崩れていくのがわかった。


そして、ふつふつと蘭への怒りが湧き上がってきた。


蘭。

おい、蘭!!!

お前、俺を裏切りやがって!!
他の男との間にできた子を俺に押し付けやがって!!!


結果表を握りしめながら、俺の頭は怒りでたぎった。


あいつらをどうしてくれよう!?
この裏切りを!


勢いに任せて紙を破りかけた時。




──ちょっと待て。


怒りに打ち震えていた俺に、そのとき、あるアイデアがよぎった。


……これ、離婚の切り札になるんじゃないか?

俺はまったく悪くない。
悪いのは蘭だ。

これで蘭と聖斗を厄介払いできるんじゃないか──!?


俺は急にワクワクしはじめた。


沙耶と一緒になれる!!!


その思いつきに感謝しながら、俺は幸せいっぱいにトイレを出た。
床に散らかったゴミが俺の足にまとわりついてきたけど、腹も立たなかった。


好きなだけ散らかすといい。
どんな失態も許そう。


俺の心は仏のように慈愛に満ちていた。

リビングに向かうと、蘭はネグリジェ姿で、ソファで口を開けたままのんきに昼寝をしている。


いい。
いいんだよ、お前はそのままで。
悪いが俺は別の場所で幸せになるから。


俺は哀れみにも似た目で蘭を眺めていた。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

今さらやり直しは出来ません

mock
恋愛
3年付き合った斉藤翔平からプロポーズを受けれるかもと心弾ませた小泉彩だったが、当日仕事でどうしても行けないと断りのメールが入り意気消沈してしまう。 落胆しつつ帰る道中、送り主である彼が見知らぬ女性と歩く姿を目撃し、いてもたってもいられず後を追うと二人はさっきまで自身が待っていたホテルへと入っていく。 そんなある日、夢に出てきた高木健人との再会を果たした彩の運命は少しずつ変わっていき……

忖度令嬢、忖度やめて最強になる

ハートリオ
恋愛
エクアは13才の伯爵令嬢。 5才年上の婚約者アーテル侯爵令息とは上手くいっていない。 週末のお茶会を頑張ろうとは思うもののアーテルの態度はいつも上の空。 そんなある週末、エクアは自分が裏切られていることを知り―― 忖度ばかりして来たエクアは忖度をやめ、思いをぶちまける。 そんなエクアをキラキラした瞳で見る人がいた。 中世風異世界でのお話です。 2話ずつ投稿していきたいですが途切れたらネット環境まごついていると思ってください。

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

旦那様。私が悪女ならば、愛人の女は何になるのかしら?

白雲八鈴
恋愛
 我が公爵家主催の夜会の最中。夫が愛人を連れてやってきたのです。そして、私を悪女という理由で離縁を突きつけてきました。  離縁して欲しいというのであれば、今まで支援してきた金額を全額返済していただけません?  あら?愛人の貴女が支払ってくれると?お優しいわね。  私が悪女というのであれば、妻のいる夫の愛人に収まっている貴女は何なのかしら?

【完結】冷酷伯爵ディートリヒは、去った妻を取り戻せない

くろねこ
恋愛
名門伯爵家に政略結婚で嫁いだ、正妻エレノア・リーヴェルト。夫である伯爵ディートリヒ・フォン・アイゼンヴァルトは、 軍務と義務を最優先し、彼女に関心を向けることはなかった。 言葉も、視線も、愛情も与えられない日々。それでも伯爵夫人として尽くし続けたエレノアは、ある一言をきっかけに、静かに伯爵家を去る決意をする。 ――そして初めて、夫は気づく。 自分がどれほど多くのものを、彼女から与えられていたのかを。 一方、エレノアは新たな地でその才覚と人柄を評価され、 「必要とされる存在」として歩き始めていた。 去った妻を想い、今さら後悔する冷酷伯爵。前を向いて生きる正妻令嬢。 これは、失ってから愛に気づいた男と、 二度と戻らないかもしれない夫婦の物語。 ――今さら、遅いのです。

旦那様に愛されなかった滑稽な妻です。

アズやっこ
恋愛
私は旦那様を愛していました。 今日は三年目の結婚記念日。帰らない旦那様をそれでも待ち続けました。 私は旦那様を愛していました。それでも旦那様は私を愛してくれないのですね。 これはお別れではありません。役目が終わったので交代するだけです。役立たずの妻で申し訳ありませんでした。

〖完結〗私はあなたのせいで死ぬのです。

藍川みいな
恋愛
「シュリル嬢、俺と結婚してくれませんか?」 憧れのレナード・ドリスト侯爵からのプロポーズ。 彼は美しいだけでなく、とても紳士的で頼りがいがあって、何より私を愛してくれていました。 すごく幸せでした……あの日までは。 結婚して1年が過ぎた頃、旦那様は愛人を連れて来ました。次々に愛人を連れて来て、愛人に子供まで出来た。 それでも愛しているのは君だけだと、離婚さえしてくれません。 そして、妹のダリアが旦那様の子を授かった…… もう耐える事は出来ません。 旦那様、私はあなたのせいで死にます。 だから、後悔しながら生きてください。 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 全15話で完結になります。 この物語は、主人公が8話で登場しなくなります。 感想の返信が出来なくて、申し訳ありません。 たくさんの感想ありがとうございます。 次作の『もう二度とあなたの妻にはなりません!』は、このお話の続編になっております。 このお話はバッドエンドでしたが、次作はただただシュリルが幸せになるお話です。 良かったら読んでください。

処理中です...