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nanahi

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28 DNA検査 沙耶視点

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おばあ様が銀座で優斗の奥さんに会ったらしい。
赤ちゃんに病気が見つかって大変そうだって言ってた。


本当なの?
本当だったら気の毒だけど、おばあ様、だまされてないよね?


私はどうしてもあの奥さんのことが信用できなかった。



気晴らしをしたくて、タクシーで郊外の海に出かけたときのことだった。

「気持ちいいなあ……」

一人で浜辺の風に吹かれていると、信じられない光景が目に飛び込んできた。



優斗が近づいてくる。

私はぎょっとして砂に足を取られ、尻もちをついてしまった。


なんで!?
なんでいつも私がいるところに現れるの!?


私はただガクガクと震え始めた。

「沙耶、ごめん。もう会うなって警察に言われたのに、本当にごめん」

そう言うと優斗は私の前で膝をつき、うなだれた。
そのただならぬ様子に、私は聞かなければいいのに、理由を聞いてしまった。

「何か、あったの……?」

優斗はばっと顔を上げ、私をまっすぐに見た。

「実はさ、実は、聖斗は俺の子じゃなかったんだ」
「え」

驚く私にさらに畳みかけるように優斗が話し始めた。

「俺、ガキはあんまり好きじゃなかったんだけど、最近、やっと聖斗のこと可愛いって思えるようになったのに、この前さ、わかっちゃったんだ。実の子じゃないって」


それで優斗うなだれてたのか。
でも、そんな夫婦の問題を私に言われても困るし。


私が返答に窮していると、優斗は弾みがついたように喋り始めた。


「沙耶、俺、どうしたらいいんだよ。聖斗を置いて蘭と別れたらいいのかな。けど、蘭は天岸さんとパイプが──ああ、いやなんでもない。とにかくさ、俺は沙耶とやり直したいのにさ、次々と壁が立ちはだかって。俺、どうしたらいいと思う?」


この人、私とやり直そうとしてるの……!?


私は言葉が出なかった。
優斗の考えにはついていけない。


「あの、あのね。お気の毒だとは思うの。色々。だけど、奥さんも赤ちゃんもいて、優斗は、これからもふたりを守っていってあげないと」

私はしどろもどろになりながら、何とか優斗を説得しようとした。

「俺は沙耶を愛しているのに?」

迷いのない真っ黒な目で優斗が私を見た。


信じられない──
じゃあ、なんであの時、私を捨てたの!??

正気じゃない。


私は力を振り絞って地面から立ち上がり、待たせているタクシーの方へと逃げ出した。



訳のわからないことを叫んでいる優斗を何とか振り切り、タクシーに乗り込んだ。
タクシーの中で専務に連絡すると「住所を送るから、すぐにここにおいで」と言ってくれた。




専務の自宅は都内の高級マンションだった。
1階の広いロビーで周りに人がいないのを確認し、私たちは待合室のソファに座った。

「大変だったね」

専務は私の隣に座り、疲れ果てている私にあたたかい紅茶を出してくれた。

「もう。何で毎回毎回、優斗が現れるのか……」

肩を落としている私に専務が言った。

「警察に通報しよう」

警察。
でも──

「警察にこれ以上言っても、逆に逆恨みされるんじゃないかって、私怖くて──」

恐怖で私は警察に通報する勇気を失っていた。
そんな私を見て、専務は優しく私に語りかけた。

「わかった。警察には言わずにしばらく様子をみよう。大丈夫、僕がついてる。僕は都内にいくつかマンションを持っているから、しばらく身を潜めるといい」

私は専務の言葉にほっとした。


よかった。
専務がいてくれて本当によかった。


その時、西くんがマンションの外から、ロビーの私たちを見ていたことに、私は気づいていなかった。





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