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49 ハッピーエンド 沙耶視点
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私は専務が眠り薬から目を覚ました後、うまく話を誤魔化して専務のマンションを出た。
その足で警察に行き、スマホアプリの調査会社が書いてくれたレポートとともに被害届を出した。
警察が専務のPCを調べるうちに、西くんのUSBで復元された専務の不正データが発見された。
専務は「そんなはずはない!そんなのデタラメだ!僕ははめられたんだ!」と叫んでいたらしい。
専務がストーカーの優斗に探偵を使って私の情報を送っていたことや、西くんが秘密裏に社内調査の任務について専務を調べていたことなどを、私は警察に伝えた。
この結果、西くんは濡れ衣だとわかり、今日、釈放された。
警察署から出てきた西くんを私は迎えに来ていた。
「沙耶さん!」
「西くん……!」
元気そうな西くんの笑顔に私は泣きそうになった。西くんは私に駆け寄り、私をぎゅっと抱きすくめた。
「沙耶さん。助けてくれてありがとう──!」
西くんは私の髪に顔を埋めた。その腕にさらに力がこもる。強く抱きしめられたまま、私はうっとりと幸福感に包まれた。
私の本能が求めていたのはこの人だったんだと、この時初めてわかった。
「よかった……西くん」
安堵と感動で涙が込み上げ、私は西くんの腕の中でしばらく泣いた。
その後、専務はアストラ保険からだけでなく海外の仮想通貨まで盗んでいたこと、被害額が二十億円以上だったことで重罪となり、実刑判決が下った。
「沙耶、あなたなんて大胆なことを」
事件のことをおばあ様に知らせたところ、心配してすぐに私の元に駆けつけてくれた。おばあ様は私を抱きしめた。
「でも無事でよかった」
「ご心配おかけしてすみませんでした」
謝る私の目をじっと見ておばあ様は何かを決意したように切り出した。
「沙耶。天岸グループの後継者になって頂戴。会社のトップに立つ人間は時に恐怖に打ち勝って大きな決断をしなければならないときがあるの。あなたにはおじい様に似た豪胆さがあるわ」
これも運命かもしれない。
私はしばらく考えた後、イエスの返事をおばあ様に伝えた。
それから2年。
私と西くんは婚約期間を経て、はれて結婚した。
西くんは相変わらず会社の後継者になるべく仕事に励んでいる。
私は天岸グループの後継者として祖母から仕事を学びながら、投資家の顔も捨てずメディアに出たり、SNSでの情報発信を続けている。
優斗は罪を償った後、家で変わらず待っていてくれた奥さんと別れずに子供を育てているらしい。なんだかんだいっても、ふたりはお似合いの夫婦だったのかもしれない。
「沙耶さーん!」
笑顔の西くんが向こうで手を振っている。私は西くんのそばに駆け寄る。
西くんが私と手と手を重ねる。じん、と幸せな気持ちが湧き上がってくる。
私は西くんと見つめ合い微笑みあう。西くんは私を照らしてくれる太陽だ。
優斗、奥さん、一条専務。
とんでもない人たち。
振り返れば、壮絶な日々だった。
もう二度と、あの人たちとまじわることはないだろう。私は努力し自分で掴んだこの人生を、最愛の西くんと一緒に歩いていくのだから。
私はむしろ優斗に感謝している。今の幸せはあなたのおかげかもしれない。
優斗。
あの寒い冬の25日。
私をフッてくれてありがとう──
完
その足で警察に行き、スマホアプリの調査会社が書いてくれたレポートとともに被害届を出した。
警察が専務のPCを調べるうちに、西くんのUSBで復元された専務の不正データが発見された。
専務は「そんなはずはない!そんなのデタラメだ!僕ははめられたんだ!」と叫んでいたらしい。
専務がストーカーの優斗に探偵を使って私の情報を送っていたことや、西くんが秘密裏に社内調査の任務について専務を調べていたことなどを、私は警察に伝えた。
この結果、西くんは濡れ衣だとわかり、今日、釈放された。
警察署から出てきた西くんを私は迎えに来ていた。
「沙耶さん!」
「西くん……!」
元気そうな西くんの笑顔に私は泣きそうになった。西くんは私に駆け寄り、私をぎゅっと抱きすくめた。
「沙耶さん。助けてくれてありがとう──!」
西くんは私の髪に顔を埋めた。その腕にさらに力がこもる。強く抱きしめられたまま、私はうっとりと幸福感に包まれた。
私の本能が求めていたのはこの人だったんだと、この時初めてわかった。
「よかった……西くん」
安堵と感動で涙が込み上げ、私は西くんの腕の中でしばらく泣いた。
その後、専務はアストラ保険からだけでなく海外の仮想通貨まで盗んでいたこと、被害額が二十億円以上だったことで重罪となり、実刑判決が下った。
「沙耶、あなたなんて大胆なことを」
事件のことをおばあ様に知らせたところ、心配してすぐに私の元に駆けつけてくれた。おばあ様は私を抱きしめた。
「でも無事でよかった」
「ご心配おかけしてすみませんでした」
謝る私の目をじっと見ておばあ様は何かを決意したように切り出した。
「沙耶。天岸グループの後継者になって頂戴。会社のトップに立つ人間は時に恐怖に打ち勝って大きな決断をしなければならないときがあるの。あなたにはおじい様に似た豪胆さがあるわ」
これも運命かもしれない。
私はしばらく考えた後、イエスの返事をおばあ様に伝えた。
それから2年。
私と西くんは婚約期間を経て、はれて結婚した。
西くんは相変わらず会社の後継者になるべく仕事に励んでいる。
私は天岸グループの後継者として祖母から仕事を学びながら、投資家の顔も捨てずメディアに出たり、SNSでの情報発信を続けている。
優斗は罪を償った後、家で変わらず待っていてくれた奥さんと別れずに子供を育てているらしい。なんだかんだいっても、ふたりはお似合いの夫婦だったのかもしれない。
「沙耶さーん!」
笑顔の西くんが向こうで手を振っている。私は西くんのそばに駆け寄る。
西くんが私と手と手を重ねる。じん、と幸せな気持ちが湧き上がってくる。
私は西くんと見つめ合い微笑みあう。西くんは私を照らしてくれる太陽だ。
優斗、奥さん、一条専務。
とんでもない人たち。
振り返れば、壮絶な日々だった。
もう二度と、あの人たちとまじわることはないだろう。私は努力し自分で掴んだこの人生を、最愛の西くんと一緒に歩いていくのだから。
私はむしろ優斗に感謝している。今の幸せはあなたのおかげかもしれない。
優斗。
あの寒い冬の25日。
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