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5 絶望
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アミアンはウィルの屋敷の玄関の呼び鈴に一旦は手を伸ばしたもののなぜか勇気が出ず手を引っ込めた。
すると中庭の方で誰かの笑い声が聞こえてきた。
「ウィルと……誰?」
アミアンは建物の影からそっと庭を覗き込んだ。
「高い高ーい!あははは。トーマ重くなったなあ」
「え!?」
アミアンは目を疑った。ウィルが赤ちゃんを腕に抱いていた。
「よく食べるのよ、この子。誰に似たのかしら?」
「お前だろう、ベティ」
「まあ失礼ね、絶対にあなたよ」
「────!!??」
アミアンはショックで頭の中が一気に真っ白になった。
ちょっと待って──
ウィルは私の婚約者だったはずじゃ──
地面が揺らいだ気がした。
「嘘よ──」
あれから一年。アミアンの周りは状況が激変していた。
ウィルは幼馴染のベティと結婚していた。またふたりの笑い声と赤子の笑い声が耳に届いた。
ズクッ──
悲しみで悲鳴をあげた心臓が強くうずいた。幸せそうなウィルの姿はアミアンの心を引き裂く刃だった。目に涙が滲んできた。これ以上ここにいることが耐えられず、アミアンは馬車に駆け戻った。そして、サムに言って今度は実家へと馬車を走らせた。
お父様に相談しよう。
どうにかしてくれるかもしれない。
アミアンはまだ一縷の望みを抱いていた。
私が戻って来たと知ればお父様はウィルとやり直す方法を考えてくれるかも知れないわ。
だが、スターリング伯爵家に着いて玄関の前に立ったアミアンはふと不安になった。
ここも何か変わっていたらどうしよう。
アミアンは居間が見える大窓に向かい、木の陰からそっと中を覗き込んだ。
「パパ~」
「おお、シエル。どうした」
「ママがね、パパとお芝居に行きたいって言ってたよ~」
「そうかそうか。ミスティ、では明日三人で行こうか」
「いいんですか?すごく嬉しいわ!」
────誰。
アミアンは目の前のことが別世界で起こっていることのように感じた。
父は再婚していた。
アミアンは呆然としたまま逃げるように走り出した。
お母様が亡くなってまだ2年しか経ってないのに?
私がいなくなってまだ1年しか経ってないのに?
お父様はもう他の女の人と再婚したの?
アミアンは涙が込み上げて来た。
しかもあの子にパパなんて呼ばせて!
3、4才くらいだった。
お父様によく似たあの子はまさか、隠し子──
「えっえっ、ううあ──」
父が自分を待ってくれていなかったことが辛くて、死んだ母を裏切っていたことが辛くて、アミアンは号泣しながら走った。
気づくと母が眠る墓地に着いていた。
「お母様、お母様、お母様」
何度もお参りをしてきた母の墓の前で墓石にすがりアミアンは泣いた。
「お母様を裏切って許さない!」
アミアンは父への怒りがふつふつと湧き上がってきた。
「今度文句を言いに行ってやるわ」
そう決めて視線を落とした時、アミアンは母の墓石の横に新しめの墓石が増えていることに気づいた。
「これ、これってまさか──」
アミアンからすっと血の気が引いた。
「ア、ミアン……スターリング……ここに眠る」
墓石にはそう彫られていた。
アミアン──私の名前だわ!
アミアンはついに自分の名前を思い出した。まぎれもなくこれはアミアンの墓だった。アミアンは死んだことにされていた。
私の居場所はもうないの──?
アミアンは二重のショックで転げそうになりながらやっとの思いで道を戻った。
「お嬢様、お嬢様、探しましたよ!」
サムが姿を消したアミアンを必死に探してくれていた。
「ああ、あああ……」
馬車から降りて駆け寄ってきたサムにアミアンは取りすがって泣き始めた。
「どうしたんです!?何か辛いことでも?」
「うっうああ……」
とても話を聞ける状態ではなかった。サムは脱力したアミアンを支え馬車で大公家へと急いだ。
すると中庭の方で誰かの笑い声が聞こえてきた。
「ウィルと……誰?」
アミアンは建物の影からそっと庭を覗き込んだ。
「高い高ーい!あははは。トーマ重くなったなあ」
「え!?」
アミアンは目を疑った。ウィルが赤ちゃんを腕に抱いていた。
「よく食べるのよ、この子。誰に似たのかしら?」
「お前だろう、ベティ」
「まあ失礼ね、絶対にあなたよ」
「────!!??」
アミアンはショックで頭の中が一気に真っ白になった。
ちょっと待って──
ウィルは私の婚約者だったはずじゃ──
地面が揺らいだ気がした。
「嘘よ──」
あれから一年。アミアンの周りは状況が激変していた。
ウィルは幼馴染のベティと結婚していた。またふたりの笑い声と赤子の笑い声が耳に届いた。
ズクッ──
悲しみで悲鳴をあげた心臓が強くうずいた。幸せそうなウィルの姿はアミアンの心を引き裂く刃だった。目に涙が滲んできた。これ以上ここにいることが耐えられず、アミアンは馬車に駆け戻った。そして、サムに言って今度は実家へと馬車を走らせた。
お父様に相談しよう。
どうにかしてくれるかもしれない。
アミアンはまだ一縷の望みを抱いていた。
私が戻って来たと知ればお父様はウィルとやり直す方法を考えてくれるかも知れないわ。
だが、スターリング伯爵家に着いて玄関の前に立ったアミアンはふと不安になった。
ここも何か変わっていたらどうしよう。
アミアンは居間が見える大窓に向かい、木の陰からそっと中を覗き込んだ。
「パパ~」
「おお、シエル。どうした」
「ママがね、パパとお芝居に行きたいって言ってたよ~」
「そうかそうか。ミスティ、では明日三人で行こうか」
「いいんですか?すごく嬉しいわ!」
────誰。
アミアンは目の前のことが別世界で起こっていることのように感じた。
父は再婚していた。
アミアンは呆然としたまま逃げるように走り出した。
お母様が亡くなってまだ2年しか経ってないのに?
私がいなくなってまだ1年しか経ってないのに?
お父様はもう他の女の人と再婚したの?
アミアンは涙が込み上げて来た。
しかもあの子にパパなんて呼ばせて!
3、4才くらいだった。
お父様によく似たあの子はまさか、隠し子──
「えっえっ、ううあ──」
父が自分を待ってくれていなかったことが辛くて、死んだ母を裏切っていたことが辛くて、アミアンは号泣しながら走った。
気づくと母が眠る墓地に着いていた。
「お母様、お母様、お母様」
何度もお参りをしてきた母の墓の前で墓石にすがりアミアンは泣いた。
「お母様を裏切って許さない!」
アミアンは父への怒りがふつふつと湧き上がってきた。
「今度文句を言いに行ってやるわ」
そう決めて視線を落とした時、アミアンは母の墓石の横に新しめの墓石が増えていることに気づいた。
「これ、これってまさか──」
アミアンからすっと血の気が引いた。
「ア、ミアン……スターリング……ここに眠る」
墓石にはそう彫られていた。
アミアン──私の名前だわ!
アミアンはついに自分の名前を思い出した。まぎれもなくこれはアミアンの墓だった。アミアンは死んだことにされていた。
私の居場所はもうないの──?
アミアンは二重のショックで転げそうになりながらやっとの思いで道を戻った。
「お嬢様、お嬢様、探しましたよ!」
サムが姿を消したアミアンを必死に探してくれていた。
「ああ、あああ……」
馬車から降りて駆け寄ってきたサムにアミアンは取りすがって泣き始めた。
「どうしたんです!?何か辛いことでも?」
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