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42 連行
その日、ミラー子爵邸では、ベティ主催の茶会が開かれていた。かつてのうらぶれた面影などここには微塵もなかった。
なぜなら、国王陛下から賜った莫大な報奨金で買い揃えられた、金箔の施された高級家具と最高級の絨毯が部屋を彩っていたからだ。
ベティはその中心で、蝶のように着飾って茶会を仕切っていた。
「まあ、ウィル様が文官に登用されるなんて!あの難関の試験をパスなさるなんて、まさに『能ある鷹は爪を隠す』ですわね、ベティ様」
取り巻きの夫人たちがお世辞を並べ立てるたびに、ベティは扇で口元を隠しながら優越感に浸った。
「ええ、夫はやればできる人なんですの。さあさあ皆様、もっとお菓子を召し上がって?」
「見て。これ、王都一番の高級店が特別に焼き上げたクッキーよ」
ベティが自慢げに差し出した皿には、見目麗しい美味しそうな菓子が並んでいた。
「紅茶もいい香り……。これ、もしや王室御用達の最高級茶葉ですわね? 市場には出回らない逸品のはずだわ」
「ええ、よくお分かりになりましたわね」
おだてられ、ベティは頬を紅潮させて高笑いした。うらぶれていた頃の惨めさを拭い去るように、ベティは王から得た汚れた金を湯水のごとく使い、女王のように君臨していた。
すごいわねえ、と夫人たちが羨望の声を出した時だった。
バァン!と扉が跳ね飛ばされ、武装した近衛騎士団が室内になだれ込んできた。
「な、何事ですの!? 失礼ではありませんこと!」
憤慨するベティを無視し、騎士団の将校が冷ややかに告げた。
「ベティ・ミラー。殺人未遂および不敬罪の疑いで連行する」
「……は?」
ベティは立ち尽くした。
殺人未遂……は?
バレていないはずよ?
だって、アミアンは記憶がないんだから。
「いったい、なんのことですの?私にはさっぱり。ねえ、皆様もそう思うでしょう?」
やれやれと両手を上げ、素知らぬ顔で通そうとしたが、ベティが思うより事態は深刻だった。
「……殺人未遂?不敬罪?」
「ちょっと待って。ベティ様はいったい何をしでかしたの……?」
夫人たちが困惑と恐怖で顔を見合わせ、さっとベティから距離を置いた。
「ま、待って皆様!これは何かの間違いですわ」
震える声でベティが弁解しても、誰一人として擁護してくれるものはいない。
「だってあの騎士の顔、私知っているわ。陛下の直属の近衛兵よ」
「えっ!陛下直々に派遣なさったのなら、よほどの重大事件よね。恐ろしいことだわ」
あんなに熱心におだてていた者たちは、もはや冷淡な野次馬に変わり、ベティに汚らしい者でも見るような軽蔑の視線を注いだ。
嘘よ。
私が捕まるなんて、嘘よ……。
呆然と立ち尽くすベティの腕を近衛兵が掴んだ。
「痛っ!私は何も悪くないわ!離して!」
「つべこべ言わずに来い!」
抵抗むなしく、引きずり出されるように表へ出ると、そこには同じく騎士たちに拘束された夫、ウィルの姿があった。
「あなた!いったいこれはどういうことなの!」
「僕にも……僕にもわからないんだ。何かの間違いだ!」
ウィルは情けなく声を震わせ、膝をガクガクさせている。
「陛下からの呼び出しですって……?私たちは、あのアミアンの情報を陛下に差し上げ、役に立ったからこそ報奨金もいただいたのよ!それなのになんでなのよっ!」
喚き散らすベティを、騎士はゴミを見るような目で見下ろした。
「その情報こそが、不敬極まる偽りであった疑いが出ているのだ。黙って来い!」
新品の高級家具が並ぶ屋敷を背に、二人は汚物のように馬車へと放り込まれた。
なぜなら、国王陛下から賜った莫大な報奨金で買い揃えられた、金箔の施された高級家具と最高級の絨毯が部屋を彩っていたからだ。
ベティはその中心で、蝶のように着飾って茶会を仕切っていた。
「まあ、ウィル様が文官に登用されるなんて!あの難関の試験をパスなさるなんて、まさに『能ある鷹は爪を隠す』ですわね、ベティ様」
取り巻きの夫人たちがお世辞を並べ立てるたびに、ベティは扇で口元を隠しながら優越感に浸った。
「ええ、夫はやればできる人なんですの。さあさあ皆様、もっとお菓子を召し上がって?」
「見て。これ、王都一番の高級店が特別に焼き上げたクッキーよ」
ベティが自慢げに差し出した皿には、見目麗しい美味しそうな菓子が並んでいた。
「紅茶もいい香り……。これ、もしや王室御用達の最高級茶葉ですわね? 市場には出回らない逸品のはずだわ」
「ええ、よくお分かりになりましたわね」
おだてられ、ベティは頬を紅潮させて高笑いした。うらぶれていた頃の惨めさを拭い去るように、ベティは王から得た汚れた金を湯水のごとく使い、女王のように君臨していた。
すごいわねえ、と夫人たちが羨望の声を出した時だった。
バァン!と扉が跳ね飛ばされ、武装した近衛騎士団が室内になだれ込んできた。
「な、何事ですの!? 失礼ではありませんこと!」
憤慨するベティを無視し、騎士団の将校が冷ややかに告げた。
「ベティ・ミラー。殺人未遂および不敬罪の疑いで連行する」
「……は?」
ベティは立ち尽くした。
殺人未遂……は?
バレていないはずよ?
だって、アミアンは記憶がないんだから。
「いったい、なんのことですの?私にはさっぱり。ねえ、皆様もそう思うでしょう?」
やれやれと両手を上げ、素知らぬ顔で通そうとしたが、ベティが思うより事態は深刻だった。
「……殺人未遂?不敬罪?」
「ちょっと待って。ベティ様はいったい何をしでかしたの……?」
夫人たちが困惑と恐怖で顔を見合わせ、さっとベティから距離を置いた。
「ま、待って皆様!これは何かの間違いですわ」
震える声でベティが弁解しても、誰一人として擁護してくれるものはいない。
「だってあの騎士の顔、私知っているわ。陛下の直属の近衛兵よ」
「えっ!陛下直々に派遣なさったのなら、よほどの重大事件よね。恐ろしいことだわ」
あんなに熱心におだてていた者たちは、もはや冷淡な野次馬に変わり、ベティに汚らしい者でも見るような軽蔑の視線を注いだ。
嘘よ。
私が捕まるなんて、嘘よ……。
呆然と立ち尽くすベティの腕を近衛兵が掴んだ。
「痛っ!私は何も悪くないわ!離して!」
「つべこべ言わずに来い!」
抵抗むなしく、引きずり出されるように表へ出ると、そこには同じく騎士たちに拘束された夫、ウィルの姿があった。
「あなた!いったいこれはどういうことなの!」
「僕にも……僕にもわからないんだ。何かの間違いだ!」
ウィルは情けなく声を震わせ、膝をガクガクさせている。
「陛下からの呼び出しですって……?私たちは、あのアミアンの情報を陛下に差し上げ、役に立ったからこそ報奨金もいただいたのよ!それなのになんでなのよっ!」
喚き散らすベティを、騎士はゴミを見るような目で見下ろした。
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