裏切ったのはあなたですよね?─湖に沈められ記憶を失った私は、大公女として返り咲き幸せを掴みます

nanahi

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48 断罪

「噂に関しては、陛下のご指示に従ったまでですわ。当然、私たちの罪は大幅に減刑されますわよね?」

不敵にもセドリックに減刑を申し立てるベティを、セドリックは冷たい視線で見据えた。

「ベティ。お前の罪は、まだ他にも残っている」
「はい? もう何もございませんけれど」

ベティは何のことやらと、わざとらしく小首を傾げてみせた。

「トーマという名の息子がいるな」
「ええ。おりますけれど、それが何か?」
「その子は今、正確に生後何ヶ月だ」
「ええと……」

ベティは苛立ちを隠そうともせず、セドリックを睨み返した。

「一体何のためにそんなことをお聞きになるのですか?子どもは関係ありませんでしょう?」
「大いに関係がある。お前のもう一つの罪をこれから暴く」

ベティは口を引き結んだ。

忌々しい王子め。
憎いアミアンを擁護し、父王まで打ちまかし、さらに私を追求しようとする。

セドリックは反抗的なベティを一瞥し、再び近衛兵に命じた。

「次の証人をここへ」
「まだいるの……!?」

連れてこられた男の顔を見た途端、ベティの顔から一気に血の気が引いた。男は、王都でも名高い産科医だった。

「この者は、ベティの出産に立ち会った医師だ」

皆は、なぜベティの子どもの話が必要なのかわからず、戸惑っている。

アミアン様を裏切ったお前たちを許さない。

セドリックはベティの身辺を洗う調査の過程で、息子のある疑惑を突き止めていた。

「医師よ、ベティの息子は正確にいつ誕生した」

医師はカルテを確認しながら答えた。

「……はい。昨年の9月でございます。現在、生後10ヶ月。逆算すれば、受胎したのは一昨年の10月ごろと推測されます」

「えっ!」

アミアンが思わず声を上げた。

「一昨年の10月……その頃、ウィルはまだアミアン殿下と婚約関係にあったはずだ」

広間にどよめきが広がった。

「なんと……!ウィル殿は婚約者がいながら、影でベティ嬢と不貞を働いていたのか!」

ベティとウィルに汚いものでも見るかのような視線が注がれる。

「酷い……。私を殺そうと企むよりずっと前から、二人はそんな関係だったのね」

私が行方不明になったから、ウィルは仕方なくベティと結婚したと思っていたのに。
ウィルの優しさも何もかも、偽りだったんだわ。

アミアンがショックに肩を震わせると、ウィルが慌てて身を乗り出した。

「アミアン! 本当に愛していたのは君なんだ! でも、ベティが熱烈に誘惑してきて、つい……」
「ちょっと、何よその言い草は!アミアンが堅物で体を許してくれないって、いつも私のところで文句を言っていたのはどこの誰よ!だから私が代わりに相手をしてあげたんでしょうが!!」

静まり返った謁見の間に、ベティの醜い怒号が響き渡った。

「なんだ、なんだ……。男を誘惑するふしだらな女というのは、アミアン殿下ではなくベティ嬢本人のことだったのではないか」

貴族たちの冷ややかな失笑が、二人を突き刺した。

「くう!」

ベティは屈辱に顔を歪めた。アミアンを貶めた汚名がまんまと自分に返ってきたのだ。

「アミアン、信じてくれ!迷いはあったけど、真実の愛を捧げるのは君だけなんだ!」

何を血迷ったかアミアンに駆け寄ろうとしたウィルを、近衛兵が無理やり止めた。

「アミアン!昔のように僕とやり直そう!アミアン!」

ウィルが兵に取り押さえられながらも、執拗に手をアミアンに差しのべてくる。

「……やめて頂戴……!」

あまりの穢らわしさに、アミアンが美しい顔をしかめた。

「真実の愛?……裏切ったのはあなたですわよね?私という婚約者がいながら、ベティと関係を持って子どもまで──それに懲りず、私を殺そうとまでしたなんて。外道のなさることですわ!」
「げ、外道……!」

外道、外道、外道──

アミアンの声が脳裏にこだました。

完全に詰んだ──

上品なアミアンからそんな言葉をぶつけられ、ウィルは言葉を失い崩れ落ちた。

「ベティおよびウィル・ミラー。貴様らを殺人未遂、不敬罪、そして神聖なる婚約の誓いを破った姦通罪で逮捕する。……連行しろ!」

「離しなさい! 離せって言ってるのよ!」

腕を掴まれたベティは、狂ったように暴れ回った。

「アミアン、私はね、昔からあんたが気に食わなかったのよ!私よりいい服を着て、男たちにもてて、あっさりウィルの婚約者の座を射止めて……アミアン、覚悟なさい!いつか必ずあんたを引き摺り落としてやる!そしてその澄ました顔を切り刻んでやるんだから!ぎゃはははは!!」

罵られ、体を硬くするアミアンの肩をセドリックが守るように抱き寄せた。聞くに耐えない罵声を上げ続けるベティの口に、近衛兵が猿ぐつわをはめた。

「なんて女だ。獣か?」
「おぞましいったらないな」

「ぐぅ、ぬぅーっ!!」

もはや言葉にならない呻き声を上げながら、かつての偽りのヒロインは、皆に睨まれながらウィルとともに地下牢へと引き摺られていった。

こうして悪女ベティ、軟弱男ウィルは、セドリックによって完全にとどめを刺された。

「もう大丈夫です。全て終わりましたよ、アミアン様」
「終わったのね……ようやく全てが」

セドリックは安堵で目を潤ませるアミアンの手を強く握りしめた。

「あなたはなんてすごい方なんだ……!殿下のおかげでアミアンが救われました。本当にありがとうございました!」

公爵がセドリックのもとに駆けつけ深々と礼をした。

「殿下、これからも、どうか妹をよろしくお願いします」
「はい。僕がずっとお守りします。もう誰にも傷つけさせません」

満面の笑みで公爵はアミアンとセドリックと肩を寄せ合い、しっかりと抱き合った。


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