1 / 1
化け狐と、裏側の夏祭り
しおりを挟む年に1度のみ開催される夏の楽しみ、夏祭り。
体調が悪くなりそうなほど暑いこんな日でも、人と人が押し合う大盛況。人々が自分の好きなように楽しんでいる。……ただ、それは人限定のことではない。今回は、普段は見えない裏側。人ならざるもの達の夏祭りを覗いてみよう。
ん?私?私はしがない物書きをしているただの化け狐だよ。
さて、裏側と言っても特別な手順を踏む必要は無い。
普通の人なら見えないだけで彼、彼女らはいつもそこに存在している。とりあえず、普通に人間の屋台が出ているところを歩いてみようか。
おや。さっそく人間以外の屋台が出ている。
ふむ、ベビーカステラか。
化け狐「こんにちは。小さい方を一つもらってもいいかな?」
小人達「いらっしゃいませ!承知いたしました!」
彼らは小人。体がとても小さい代わりに沢山の同胞たちと力を合わせ生活している。彼らの団結力は凄まじい。
小さく力も弱い彼らが生き残れているのは団結力のおかげとしか言いようがない。ちなみに、彼らに攻撃するのはおすすめしないよ。あっという間に大人数に囲まれて抵抗できなくされるから。
小人達「今お作りしますので少々お待ちください!」
化け狐「ありがとう。これ、お代だ。」
小人達「ありがとうございます!」
そういい五百円玉を渡した。彼らの体は五百円玉と同じくらい。運べるのか疑問だったが3人で頑張って持ち上げて運んでいる。
さて、待ち時間は作る過程を観察してみよう。彼らの小さな体でどう作るのか見ものだ。
……ふむ、道具は全て小人用に作ってある。
生地を垂らすための道具はスプーンに変わっている。それが小人サイズだと大変だもんな。焼く道具にも工夫がされてるな。左右に持ち手があり、二人でひっくり返せるようになっている。そして出来たものは一人一つ、頭の上に掲げ持って袋に投げ入れている。
小人達「お待たせいたしました!どうぞ!」
ぼーっと眺めていると、いつの間にか完成していたようで、何人かで頑張って持ち上げこちらに差し出してくれている。
化け狐「ありがとう。」
小人達「ありがとうございました!」
小人が作る普通サイズの焼き菓子だから時間がかかると思っていたがすぐだったな。工夫が散りばめられていて参考になった。さて、もっと妖の屋台を探しに行こうか
ん?あれは…
小さな化け狸「うぅ…ぐすっ」
化け狸か。まだ子供だな。それに1人で泣いている。
まあ、十中八九迷子だろう。どうしたものか。助けたいが狐と狸は対立関係にあるし。…あ、そうだ。
ドロン
煙をまとい、私は化け狸に変化した。子供は警戒心も低いし、バレないだろう。
化け狐「やあ、お嬢さん。そんなに泣いてどうしたんだい?」
そう声をかけると、化け狸の少女は少し警戒するようにこちらを見た。
化け狸の少女「お母さんとお祭り来たんだけどね、はぐれちゃったの。おねえさん、だれ…?」
私は変化して付けた耳を指さし微笑んだ
化け狐「私は通りすがりの化け狸さ。お母さんを探すの、手伝おうか?」
化け狸の少女「ほんとうに?!ありがとうおにいさん!」
疑う素振りも見せず、少女は私に明るい笑顔を向けた
化け狐「お母さんとはどこではぐれたんだい?」
化け狸の少女「えーとね、あっち!結構遠くの方!」
少女は私が歩いてきた方向と真逆の、遠くの方を指さした
化け狐「それじゃあ、あっちの方まで歩いていってみようか」
化け狸の少女「うん!」
少し歩いていると、また人ならざるものの屋台が見えた。これは…雪女のかき氷屋か。ピッタリだな
化け狐「なあ、お嬢さん。かき氷食べるか?」
化け狸の少女「たべたい!」
少女は目をキラキラ輝かせている
化け狐「私が買ってあげよう。何味がいい?」
化け狸の少女「んーと…いちご!」
化け狐「こんにちは。かき氷を1ついただいてもいいかな?イチゴ味で」
雪女「もちろん。イチゴ味ね。少々お待ちを」
雪女はニコッと微笑むとら手際よくイチゴを用意し始めた。イチゴを数個手に持ち、ふっと軽く息を吹きかける。すると先程まで汗ばんでいた私の体は一気に冷え、イチゴはカチコチに凍っていた。
化け狸の少女「すごいすごい!すずしい!」
少女は無邪気にはしゃいでいる
雪女「そうでしょう?もう少しでできるよ」
雪女は凍ったイチゴをガリガリと削り、スプーンを刺し少女に差し出した。見事な手際だ。
雪女「はい、どうぞ」
化け狸の少女「ありがとう!」
化け狐「ありがとう。これ、お代だ」
雪女「まいどあり。またどうぞ」
雪女は少女に軽く手を振った。少女は歩きながらブンブンと大袈裟に手を振り返した。
化け狐「他になにか欲しいものはある?」
化け狸の少女「えーと…あ、あれ!」
少女が指を指さしたのは、フルーツ飴の屋台。店主は大きなマスクをしていて黒く長い髪の毛の女性だった。
一見、普通の人間に見えるが彼女は恐らく口裂け女だ。
口裂け女はべっこう飴が好物とも嫌いとも聞くが、飴の屋台をだすということは好物なのだろう
化け狸の少女「あの口裂け女さんのやつ!」
化け狐「おや、よく口裂け女とわかったね。」
服装が特徴的なのでわかりやすいが、子供は知らないことが多いのに
化け狸の少女「えへへ!私、鼻がきくの!だいたいの人は匂いかげばなにかわかるんだよ!」
すごいな。ちょっとした話題になりそうな特技だ
口裂け女「こんにちは。お嬢ちゃん何が欲しいのかな?」
化け狸の少女「ぶどうの飴がほしいです!」
少女は背伸びをしながら堂々と注文した。口裂け女はニコッと笑った
口裂け女「わかったよ。」
私がお代を渡すと、口裂け女は止めマスクを下ろした
すると、頬の方まで裂けた口が現れた
口裂け女「それと…私、綺麗?」
化け狸の少女「うん!とっても綺麗!」
少女は曇りなき眼で即答した
口裂け女「ふふ、ありがとう。お礼に、普通より1粒多いぶどう飴をあげる」
化け狸の少女「やったあ!ありがとうおねえさん!」
口裂け女「いえいえ。…で、あんたは?」
化け狐「…え、私?」
口裂け女「そうだよ。私綺麗?」
化け狐「ああ。とても」
私がそう言うと、べっこう飴をすっと差し出してきた
口裂け女「ありがとう。あんたにもおまけ、あげる」
化け狐「あ、ああ…ありがとう」
まさか私にも振られるとは。私は嘘つきだが、咄嗟に素直に答えてしまった。
そうして私たちは、母親を探しつつ屋台を楽しんでいった。他にも
のっぺらぼうのお面屋
のっぺらぼう「やあお嬢さん。顔は足りてるかい?」
化け狸の少女「たりてない!ほしい!」
のっぺらぼう「ここにはいい顔が沢山揃っているよ。お好きな顔を選びな」
鬼の焼きそば屋
化け狸の少女「鬼さんすごい!ひとりでたくさん作ってる!」
鬼「いや?一人じゃないぜ?ほら」
化け狸の少女「わあ、青い火にお顔がついてる!」
化け狐「珍しい、鬼火か」
鬼「凄いだろ?俺らは二人でやってるんだ!」
人魚の唐揚げ屋
化け狸の少女「いい匂い!」
化け狐「なぜ人魚が唐揚げを?暑くて向いていないと思うが…」
人魚「ふふ、唐揚げって鶏だけじゃなくたくさん種類があるでしょう?」
人魚「私たち人魚を食らうと不老不死になれる。だから…1つ、当たりとして人魚の唐揚げがある。……なあんて、冗談よ。面白いでしょう?」
化け狐「笑えないな…」
など、様々な屋台を回った。そして、1番端の人気がすこし落ち着いている所までたどり着いた時。やっぱり居ないと話しているたぬき達がいた。
化け狐「なあ、もしかしておかあさん、あの人じゃないか?」
私が指さすと、少女は明るい表情をした
化け狸の少女「そう!おかあさん!おとうさんもいる!」
化け狐「良かった。私はちょっと、あの人達の近くまで行けないからここでバイバイだ」
そういうと少女は悲しそうな顔をした
化け狸の少女「おねえさん、行っちゃうの…?」
化け狐「ああ。ごめんな。また今度遊ぼう。」
もちろん嘘だ。少女の親は、匂いで私の正体に気づくだろう。そして、少女も私を怖がって近づいてこなくなるだろう。少し寂しい気もするが仕方がない。
化け狸の少女「わかった!じゃあね!狐のおねえさん」
化け狐「…え」
……バレていたのか。子供だからといって油断したな。
まあ攻撃された訳でもないし、私だけでは見れなかったものも見せてくれた。少女のおかげで思った以上に収穫があったし、もう帰るとしよう。あなた達の祭りの時、屋台の間に不自然な隙間が空いていたら、そこは通らずそっとしておいて欲しい。目に見えない誰かも、そこで祭りをたのしんでいるかもしれないから
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
他国ならうまくいったかもしれない話
章槻雅希
ファンタジー
入り婿が爵位を継いで、第二夫人を迎えて後継者作り。
他国であれば、それが許される国もありましょうが、我が国では法律違反ですわよ。
そう、カヌーン魔導王国には王国特殊法がございますから。
『小説家になろう』『アルファポリス』に重複投稿、自サイトにも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる