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ボスが倒され、指揮の乱れた狼の群れに俺は襲いかかった。
コイツらは魔物だ。仲間が殺られても平気で向かってくるのを見て、やはり普通の狼とは違うのがわかった。神の言った通り、殺戮衝動が強い。
ここで一匹でも逃がすと、俺に恨みを持った個体があのボス狼の様に大きくなり、群れを率いてやってくるかもしれない。その時俺の周りにいるかもしれない人を守りきれるか?
絶対に大丈夫とは言いきれない。だからここで全て仕留める。後顧の憂いを絶つ。
せめて、素材はなるべく無駄にしないようにするからな。
残りは十四匹だった。先に仕留めたのが十三匹で合わせて二十七匹の群れを、一頭の巨大狼が率いていた。……あの人達よく生きてたな?
移動組の全てを狩ろうと、崖まで襲わずに我慢できるその狡猾さに救われた形だ。
河にはまだ巨大サケも浮いている。ワニ達は落とした狼で満足したらしい。十匹も奢ったからな。
手前に引き寄せると、弱々しいがまだ生きていた。
友よ、お前のおかげで強敵を倒せた。ありがとう。
それはそれとして、トドメを刺しますね!
《新しいスキルを取得しました》
……やっぱり持つべきモノは友達だぜ!
サケと狼の死体を一ヶ所に集めていると、移動組が戻ってきた。
俺も狼もどちらも追って来ない。
そして俺の戦う姿を見ていた彼らは、もしかしたら勝っているのでは?そう思って戻ってきたらしい。
……すまん。助けに来たってのにすっかり忘れてたわ。俺って狩猟が絡むとちょっとテンションがおかしくなってしまうんだよな。
とりあえずまず感謝の言葉を受け取った。
サケは解体出来る人が数人いるらしいからそちらに任せ、俺は狼を解体しながら今までの事を話した。
移動組と別れた後の待機組の動きや、何故救助に来たのかの説明を行う。
街方向から逸れていた事、そのせいで巨大蛇がこちらに向かっていた事、そして大見得切って出発したのに初日で死にかけ、しかも待機組に心配され、派遣された俺に助けられた事。
説明中にこれらの事実に打ちのめされ、ズーンと効果音が鳴りそうな落ち込みようだ。
特に学生と教師達の落ち込みようが酷い。出発前に女性教師の五十嵐さんに説得されたのを蹴ってこの結果だからな。無理もない。
だがきちんと反省する事ができるのはいいな。
よし、解体終了。
とりあえず移動しよう。腹が減ってるだろうが拠点までは我慢してくれ。
「だがいいのか?俺達は君達を置いて行ったんだぞ?街に着いてから助けを呼ぶつもりだったのは本当だが、その間の君達の食料事情や安全の事なんて気にもしていなかったんだ……」
「それを言うなら俺だって、君らが森を装備無しの状態で抜けるのが難しい事に気が付けなかったんだ。冷静になればすぐ分かるのにな。だからお互い様って事でいいんじゃないか?」
男手が欲しい事や、果物等の群生地を見つけてあり、何より俺自身が強化されたことで狩りが楽になった事など。今なら二百七名全員でなんとか生きていく事ができると語る。
それを聞いても、今はまだ一緒に行動すると断言は出来ないようだ。先ずは待機組の皆に謝って、許しを貰ってからにしたいとの事。
普通に大丈夫だと思うが、そう言うのって大事だからな。
狩った獲物を分担して持ってもらう。九十四人もいるからな。
拠点へと案内しながら周囲への警戒を行う。感知系の熟練度が上がって、かなり楽だ。
だからこんな事を考える余裕がある。
帰ったら絶対に怒られる。また無茶してってちびっ子達にすらジト目を向けられ、罵倒されるかもしれん。
そんなの堪えられん!俺はマゾじゃねぇ!
何か、何か肉以外の手土産が必要だ。それも女性や子供が喜ぶ物……鉄板の甘いものとか?
果物はもう驚きはそれほどないだろう。ではどうするか。
心当たりは?ある。自然の万能甘味料。
そう、HA CHI MI TU様だ!
移動組を拠点予定地迄送り届け、そこからは自分達だけで帰ってもらう。あそこからならもう迷う心配はない。方角を教え、俺の持っていた荷物も渡しておく。
さて、蜂の巣のありそうな花畑は幾つか見つけている。早速向かおう。
それに今は夜。正確にはもう朝方だが、まだ蜂の活動が鈍る時間だ。気温が下がってるからな。
楽な仕事になるぞ。
そう思っていた時期が俺にもありました。
今まで蛇、サケ、狼と、巨大化した魔物が多かった為に、普通の巣の大きさを見て安心してしまった。
先ずは蜂を追い出そう。そう思って煙で燻し、出てきたそいつらの行動を見て固まってしまった。
全身に火を纏って突っ込んで来やがった!魔物かよおい!
名付けるならファイア・ビーとかそんなのだろう。
しかもコイツら暫くすると自分の火でそのまま息絶えるんだよ……生き急ぎすぎじゃないッスかね?
まぁ驚きはしたが強くはない。今の俺なら余裕で対処できる。ただ数が多い。服が何ヵ所か焦げてしまってる。
魔物故にかなりの鋭さがあったボス狼の爪で、ナイフを幾つか作っておいたのでそれで迎撃する。
ナイフを両手に持って捌く、捌く、捌く。
ただ俺が攻撃しなくても勝手に死んでいく個体の方が多くてなんとも言えない哀愁を誘う。
そして全ての蜂が地に落ちた時、巣から大きな個体が出てきた。女王様のお出ましか。
「Bububububu」
元々鉄砲玉気質なのか、群れが全滅した悲しみからなのか俺にはわからないが、女王自らがトリを飾るらしい。
ゴオッ!っと女王の体の数十倍はあろう、巨大な火球となって突っ込んで来た。
ありゃ流石に不味い。だから、こうする。
「水よ、ウォーター」
何か魔法に関する新しいスキルが取れてるのだろう。頭に浮かぶ詠唱が少し短くなっている。
ありったけの魔力を使い目の前に水球を浮かべる。火を飲み込む粘着質なイメージを込めて。
ジュッボッと、なんとも小気味の良い音を立てながら、大火球は鎮火し、女王は水の中でもがく。
……なんかごめん。
これ以上女王様に無様な姿を晒させるのは忍びない。サクッと槍で突きましょう。
《新しいスキルを取得しました》
見る暇がないままにスキルが増えていく……。
帰ったら必ずチェックだ。
コイツらは魔物だ。仲間が殺られても平気で向かってくるのを見て、やはり普通の狼とは違うのがわかった。神の言った通り、殺戮衝動が強い。
ここで一匹でも逃がすと、俺に恨みを持った個体があのボス狼の様に大きくなり、群れを率いてやってくるかもしれない。その時俺の周りにいるかもしれない人を守りきれるか?
絶対に大丈夫とは言いきれない。だからここで全て仕留める。後顧の憂いを絶つ。
せめて、素材はなるべく無駄にしないようにするからな。
残りは十四匹だった。先に仕留めたのが十三匹で合わせて二十七匹の群れを、一頭の巨大狼が率いていた。……あの人達よく生きてたな?
移動組の全てを狩ろうと、崖まで襲わずに我慢できるその狡猾さに救われた形だ。
河にはまだ巨大サケも浮いている。ワニ達は落とした狼で満足したらしい。十匹も奢ったからな。
手前に引き寄せると、弱々しいがまだ生きていた。
友よ、お前のおかげで強敵を倒せた。ありがとう。
それはそれとして、トドメを刺しますね!
《新しいスキルを取得しました》
……やっぱり持つべきモノは友達だぜ!
サケと狼の死体を一ヶ所に集めていると、移動組が戻ってきた。
俺も狼もどちらも追って来ない。
そして俺の戦う姿を見ていた彼らは、もしかしたら勝っているのでは?そう思って戻ってきたらしい。
……すまん。助けに来たってのにすっかり忘れてたわ。俺って狩猟が絡むとちょっとテンションがおかしくなってしまうんだよな。
とりあえずまず感謝の言葉を受け取った。
サケは解体出来る人が数人いるらしいからそちらに任せ、俺は狼を解体しながら今までの事を話した。
移動組と別れた後の待機組の動きや、何故救助に来たのかの説明を行う。
街方向から逸れていた事、そのせいで巨大蛇がこちらに向かっていた事、そして大見得切って出発したのに初日で死にかけ、しかも待機組に心配され、派遣された俺に助けられた事。
説明中にこれらの事実に打ちのめされ、ズーンと効果音が鳴りそうな落ち込みようだ。
特に学生と教師達の落ち込みようが酷い。出発前に女性教師の五十嵐さんに説得されたのを蹴ってこの結果だからな。無理もない。
だがきちんと反省する事ができるのはいいな。
よし、解体終了。
とりあえず移動しよう。腹が減ってるだろうが拠点までは我慢してくれ。
「だがいいのか?俺達は君達を置いて行ったんだぞ?街に着いてから助けを呼ぶつもりだったのは本当だが、その間の君達の食料事情や安全の事なんて気にもしていなかったんだ……」
「それを言うなら俺だって、君らが森を装備無しの状態で抜けるのが難しい事に気が付けなかったんだ。冷静になればすぐ分かるのにな。だからお互い様って事でいいんじゃないか?」
男手が欲しい事や、果物等の群生地を見つけてあり、何より俺自身が強化されたことで狩りが楽になった事など。今なら二百七名全員でなんとか生きていく事ができると語る。
それを聞いても、今はまだ一緒に行動すると断言は出来ないようだ。先ずは待機組の皆に謝って、許しを貰ってからにしたいとの事。
普通に大丈夫だと思うが、そう言うのって大事だからな。
狩った獲物を分担して持ってもらう。九十四人もいるからな。
拠点へと案内しながら周囲への警戒を行う。感知系の熟練度が上がって、かなり楽だ。
だからこんな事を考える余裕がある。
帰ったら絶対に怒られる。また無茶してってちびっ子達にすらジト目を向けられ、罵倒されるかもしれん。
そんなの堪えられん!俺はマゾじゃねぇ!
何か、何か肉以外の手土産が必要だ。それも女性や子供が喜ぶ物……鉄板の甘いものとか?
果物はもう驚きはそれほどないだろう。ではどうするか。
心当たりは?ある。自然の万能甘味料。
そう、HA CHI MI TU様だ!
移動組を拠点予定地迄送り届け、そこからは自分達だけで帰ってもらう。あそこからならもう迷う心配はない。方角を教え、俺の持っていた荷物も渡しておく。
さて、蜂の巣のありそうな花畑は幾つか見つけている。早速向かおう。
それに今は夜。正確にはもう朝方だが、まだ蜂の活動が鈍る時間だ。気温が下がってるからな。
楽な仕事になるぞ。
そう思っていた時期が俺にもありました。
今まで蛇、サケ、狼と、巨大化した魔物が多かった為に、普通の巣の大きさを見て安心してしまった。
先ずは蜂を追い出そう。そう思って煙で燻し、出てきたそいつらの行動を見て固まってしまった。
全身に火を纏って突っ込んで来やがった!魔物かよおい!
名付けるならファイア・ビーとかそんなのだろう。
しかもコイツら暫くすると自分の火でそのまま息絶えるんだよ……生き急ぎすぎじゃないッスかね?
まぁ驚きはしたが強くはない。今の俺なら余裕で対処できる。ただ数が多い。服が何ヵ所か焦げてしまってる。
魔物故にかなりの鋭さがあったボス狼の爪で、ナイフを幾つか作っておいたのでそれで迎撃する。
ナイフを両手に持って捌く、捌く、捌く。
ただ俺が攻撃しなくても勝手に死んでいく個体の方が多くてなんとも言えない哀愁を誘う。
そして全ての蜂が地に落ちた時、巣から大きな個体が出てきた。女王様のお出ましか。
「Bububububu」
元々鉄砲玉気質なのか、群れが全滅した悲しみからなのか俺にはわからないが、女王自らがトリを飾るらしい。
ゴオッ!っと女王の体の数十倍はあろう、巨大な火球となって突っ込んで来た。
ありゃ流石に不味い。だから、こうする。
「水よ、ウォーター」
何か魔法に関する新しいスキルが取れてるのだろう。頭に浮かぶ詠唱が少し短くなっている。
ありったけの魔力を使い目の前に水球を浮かべる。火を飲み込む粘着質なイメージを込めて。
ジュッボッと、なんとも小気味の良い音を立てながら、大火球は鎮火し、女王は水の中でもがく。
……なんかごめん。
これ以上女王様に無様な姿を晒させるのは忍びない。サクッと槍で突きましょう。
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