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最初の町
洗われました
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「ほら! こっち向いてください!」
小部屋のように狭い浴室。ひと二人が肩を寄せ合ってようやく入れるサイズの浴槽に、ほぼ密着するような状態に陥る洗い場。これがザーインの町の銭湯のスタイルであった。同じ小部屋がこの銭湯にはいくつもあるのだった。
風呂椅子に座るホイムの背中を、たっぷりの泡でごしごしと洗ってくれる膝立ちのリナと裸の付き合いをすることになったホイムは未だに彼女と向き合えずにいた。
タオルを振り上げ、いい加減にしてくださいという風にリナがホイムに口を尖らせる。
「無理です」
「何でですか!」
「だってこういうシステムだって知らなかったんですもん……!」
「子どものくせに何恥ずかしがってるんです!」
本当は子どもじゃなくてリナより一回り以上歳を重ねたおっさんなんですとは口が裂けても言えなかった。
「お姉ちゃんの言うことが聞けないの?」
「お、おね……?」
何でいきなりと少し振り返って訊ねかけたが、リナの裸が見えそうになりホイムはすぐに前を向いた。
足の間に両手を挟んで少し前屈みになる姿は怪しく思われないだろうか。
「うふふ……私、弟が欲しかったんです。ちょうどホイムさんくらいの」
「へ、へぇ……」
話をしながら、リナはホイムの背中を再び洗い始めた。柔らかくて優しい手付きが仇となり、ホイムは尚更リナと向き合えなくなっていく。
「兄弟は……いないんですね」
「うん。私一人だけなんです」
ホムは気を紛らわせるように後ろにいるリナと会話を続ける。
「だから家の手伝いも大変なの! 弟がいたら、あれこれアゴで使っちゃうんだけどな」
「あはは……僕、弟じゃなくて良かったです」
「ひどぉい。そんなこと言うだなんて私傷ついちゃいます」
「す、すみません……」
「ジョーダンですよ。謝らないでください」
からかわれていることに気付いて気持ちが萎縮していく。これなら向き合えそうだ。
「ホイムさんには感謝しています。私の不調をすぐに治してくれて……」
「放っておけませんでしたから」
「優しい人なんですね。冒険者って、もっとがさつで乱暴な印象でした」
「そういう人もいます……というか、多いですね」
少なくとも彼の知る冒険者には碌な奴がいない。サンプルが勇者一行だけなのがとてつもない偏りではあるが。
思い出そうとするだけでホイムの心中に拒否反応が出そうになる。
「ホイムさんはすぐにまた旅に出るんですか?」
「うん……どうでしょう。今は行く宛……目標がない状況ですから」
考えていることはある。しかしそれを実行するにはホイムひとりではまだ弱く、経験も足りない。そもそも実行するだけの思い切りもない。
今はこうして生きてお風呂に入れているだけで……と考えてしまうのは、先程ひとしきり泣いたせいで、今は賢者状態なのかもしれない。
「……ホイムさんにそのつもりがあるなら、ずっとうちにいませんか?」
「流石にそれは無理ですって。二日分の宿賃しかありませんから遅くとも明後日には出ていきますし」
「むぅ。そうじゃなくって」
背中をずっと洗っていたリナの気配が急に近くなり、ホイムのすぐ耳元で彼女の声がした。
「私と家族になりましょうって意味です」
その囁きにホイムはまたリナと向き合えなくなってしまった。甘い誘いの言葉に胸がドキッと高鳴る。
「そ、そそそれてつまり!」
そういう意味と思っていいんですね!
ホイムのヤル気スイッチが入った。
「はい! ホイムさんみたいにしっかりした家族がいてくれたら私も安心です! 冒険者ですし、知識もあるし、かわいいし優しいし……こんな弟がいたらやっぱり嬉しいなあ」
「……」
おとうと……。
急激にいろんなものが萎んでいく。ホイムのヤル気スイッチがオフになった。
「ねえねえ。お姉ちゃんって呼んでくださいよ」
「イヤデス」
拗ねたホイムは大人気なく断った。
「ムムー……生意気な弟は」
むにゅっと柔らかいものが二つ、ホイムの小さな背中に触れた。
えっと思った次の瞬間には、彼の脇腹にリナのしなやかな指が伸びていた。
「こうだ!」
こちょこちょこちょこちょ。
「アハハハハハハッ!」
「どうだ! えいっえいっ」
「ちょ、や、やめ、死ぬっ!」
笑い死ぬ。本気でそう思った時、ホイムの下半身もまた変化を見せた。
度重なる接触からの本能的な死の恐怖と笑いという快楽に直面したところに、勢い余って滑ってしまったリナの手が思いっきり触ってきた。
ぎゅっ。
不意にリナが握ってしまったホイムの体の一部は、とても元気になっていました。
「え……」
「あ……」
滑った拍子に飛び散った泡などが、洗い場やリナの顔にかかったりしたのだった。汚れた洗い場は綺麗に掃除して退室しましょう。
小部屋のように狭い浴室。ひと二人が肩を寄せ合ってようやく入れるサイズの浴槽に、ほぼ密着するような状態に陥る洗い場。これがザーインの町の銭湯のスタイルであった。同じ小部屋がこの銭湯にはいくつもあるのだった。
風呂椅子に座るホイムの背中を、たっぷりの泡でごしごしと洗ってくれる膝立ちのリナと裸の付き合いをすることになったホイムは未だに彼女と向き合えずにいた。
タオルを振り上げ、いい加減にしてくださいという風にリナがホイムに口を尖らせる。
「無理です」
「何でですか!」
「だってこういうシステムだって知らなかったんですもん……!」
「子どものくせに何恥ずかしがってるんです!」
本当は子どもじゃなくてリナより一回り以上歳を重ねたおっさんなんですとは口が裂けても言えなかった。
「お姉ちゃんの言うことが聞けないの?」
「お、おね……?」
何でいきなりと少し振り返って訊ねかけたが、リナの裸が見えそうになりホイムはすぐに前を向いた。
足の間に両手を挟んで少し前屈みになる姿は怪しく思われないだろうか。
「うふふ……私、弟が欲しかったんです。ちょうどホイムさんくらいの」
「へ、へぇ……」
話をしながら、リナはホイムの背中を再び洗い始めた。柔らかくて優しい手付きが仇となり、ホイムは尚更リナと向き合えなくなっていく。
「兄弟は……いないんですね」
「うん。私一人だけなんです」
ホムは気を紛らわせるように後ろにいるリナと会話を続ける。
「だから家の手伝いも大変なの! 弟がいたら、あれこれアゴで使っちゃうんだけどな」
「あはは……僕、弟じゃなくて良かったです」
「ひどぉい。そんなこと言うだなんて私傷ついちゃいます」
「す、すみません……」
「ジョーダンですよ。謝らないでください」
からかわれていることに気付いて気持ちが萎縮していく。これなら向き合えそうだ。
「ホイムさんには感謝しています。私の不調をすぐに治してくれて……」
「放っておけませんでしたから」
「優しい人なんですね。冒険者って、もっとがさつで乱暴な印象でした」
「そういう人もいます……というか、多いですね」
少なくとも彼の知る冒険者には碌な奴がいない。サンプルが勇者一行だけなのがとてつもない偏りではあるが。
思い出そうとするだけでホイムの心中に拒否反応が出そうになる。
「ホイムさんはすぐにまた旅に出るんですか?」
「うん……どうでしょう。今は行く宛……目標がない状況ですから」
考えていることはある。しかしそれを実行するにはホイムひとりではまだ弱く、経験も足りない。そもそも実行するだけの思い切りもない。
今はこうして生きてお風呂に入れているだけで……と考えてしまうのは、先程ひとしきり泣いたせいで、今は賢者状態なのかもしれない。
「……ホイムさんにそのつもりがあるなら、ずっとうちにいませんか?」
「流石にそれは無理ですって。二日分の宿賃しかありませんから遅くとも明後日には出ていきますし」
「むぅ。そうじゃなくって」
背中をずっと洗っていたリナの気配が急に近くなり、ホイムのすぐ耳元で彼女の声がした。
「私と家族になりましょうって意味です」
その囁きにホイムはまたリナと向き合えなくなってしまった。甘い誘いの言葉に胸がドキッと高鳴る。
「そ、そそそれてつまり!」
そういう意味と思っていいんですね!
ホイムのヤル気スイッチが入った。
「はい! ホイムさんみたいにしっかりした家族がいてくれたら私も安心です! 冒険者ですし、知識もあるし、かわいいし優しいし……こんな弟がいたらやっぱり嬉しいなあ」
「……」
おとうと……。
急激にいろんなものが萎んでいく。ホイムのヤル気スイッチがオフになった。
「ねえねえ。お姉ちゃんって呼んでくださいよ」
「イヤデス」
拗ねたホイムは大人気なく断った。
「ムムー……生意気な弟は」
むにゅっと柔らかいものが二つ、ホイムの小さな背中に触れた。
えっと思った次の瞬間には、彼の脇腹にリナのしなやかな指が伸びていた。
「こうだ!」
こちょこちょこちょこちょ。
「アハハハハハハッ!」
「どうだ! えいっえいっ」
「ちょ、や、やめ、死ぬっ!」
笑い死ぬ。本気でそう思った時、ホイムの下半身もまた変化を見せた。
度重なる接触からの本能的な死の恐怖と笑いという快楽に直面したところに、勢い余って滑ってしまったリナの手が思いっきり触ってきた。
ぎゅっ。
不意にリナが握ってしまったホイムの体の一部は、とても元気になっていました。
「え……」
「あ……」
滑った拍子に飛び散った泡などが、洗い場やリナの顔にかかったりしたのだった。汚れた洗い場は綺麗に掃除して退室しましょう。
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