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最初の町
寝かせました
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「そうですか……でも、じゃあこっちはどう説明するんですか?」
そう言うとホイムはアカネのはだけさせた忍び装束を掴み、更に上半身が露出するよう大胆に払い去った。
それは決して彼のスケベ心からの行為ではなく、アカネの体に刻まれた更なる傷を明らかにするためだった。
「さっき少しはだけさせた時、体に傷が見えました。もしかしたらと思いましたが、やっぱりそうだったんですね……」
アカネが顔を背けるのは胸まで曝け出したことによる羞恥心からではなく、体中に刻まれた裂傷や抉られたような傷のせいであった。
「古いものから真新しいものまでありますが……この乳房の刺し傷なんて、ついさっきつけられたものでしょう?」
血の滲む胸に触れた時にアカネの顔が小さく歪んだ。痛みに苛まれているというのに、彼女はここまで彼の暗殺のために忍び込んできたのだ。
「僕に依頼を渡したせいじゃないんですか? あなたの雇い主が腹を立てたのは僕だけじゃない……あなたにもだ。だからこんなに痛めつけられて……それも今日だけじゃない。恒常的に、主従関係を盾にされてあなたの体は傷つけられた」
そのことに否定の言葉はない。正解だと判断した。
そのせいでホイムの怒りは沸点を迎えた。
彼にとって、仲間というくくりの中で理不尽に痛めつけられることに対して怒りが募るのは、自分もそのようなパーティに所属していたせいである。
目と耳を塞ぎ現状を受け入れて言いなりになっている彼女に少し前までの自分を重ねてしまう。
そのことをどうしようもないと受け入れていた自分。
そのことをどうしようもないと受け入れている彼女。
彼がそんな彼女の立場に怒りを覚えるのは、当時の自分を否定したいがためでもあったかもしれない。
「どこにいるんですか。あなたの雇い主は?」
「……それは言えない。裏切ることになる」
「立派な忠誠心ですね」
「それだけじゃない……これが体にある以上、私はあいつの命に関わる情報は何一つ漏らせない。そういう……呪いなんだ」
彼女自身も、本心はこの主従関係を呪わしいものと感じているのだった。そのことに、彼の心はほんの少しだけ救われた気分になった。心から心酔しているわけではないのだと。
「分かりました。それがなければいいんですね」
「……え?」
ホイムは彼女の胸で鈍く輝くクリスタルに手を伸ばし、お得意の呪文を唱えた。
「キュア【解呪】」
呪文の発動と共に、彼女の胸にめり込んでいたクリスタルは砕けて消えた。
「ば、馬鹿な……呪いを解けるだなんて、そんなのは神聖術でもないと無理なはず」
驚く彼女をよそに、ホイムは単刀直入に訊ねた。
「あなたの雇い主だった男はどこですか?」
今起きたことへの困惑とさっきまで主であった者を裏切ることに抵抗があったのか、アカネはすぐには口を開けないようであったが、少し間を置いてそいつの隠れ家である町の裏側、ダウンタウンとくくられる治安の良くない場所にある建物を教えてくれた。
「分かりました。その情報は信じます」
ホイムは机に置いていただぼだぼのローブを纏うと、部屋を出ていく準備を整えた。
「ま、待ってくれ! 私も、連れて行ってくれ!」
「ダメです」
端的に断ったが、なおも彼女は追いすがる。
「私は、自分のしてきたことが正しくないと理解しているつもりだ……命令されたからとか、そういう言い訳をするつもりはない。だから、でもだから君が今からしようとしていることを見届けさせてはくれないかと」
「すみませんが」
自分の気持ちをぶつけてくるアカネの言葉をぴしゃりと遮るホイムは彼女の前に立ち、手を伸ばしながら沈痛な面持ちで答えた。
「あなたの情報は信じようと思いますが、僕を騙し殺そうとしたあなたのことは信じられません」
懸命に弁明をしようとするアカネの顔を見ることを拒むように差し伸べた手は淡い光を宿していた。
「待っ……」
「キュア【睡眠】」
アカネの首がかくんと落ちて眠りに落ちた。耐性持ちと分かっていたので少し強めに術をかけたので、しばらくは眠りから覚めないだろう。
椅子に縛っていた縄を解いても動かない彼女を小さな体で担ぎ、部屋のベッドに横たえた。
「……キュア」
最後にアカネに使ったのは至って普通の回復呪文であった。しかしながら規格外の回復力を持つ呪文は、彼女の体の外や内にまで刻まれた傷を新古問わず綺麗に癒やしてしまった。
はだけた装束から覗くのは、生娘のように清く美しい彼女の肌であった。
ほんの少し言葉を交わしただけだったが、昼間の彼女は確かに優しく、素敵な女性だった。
それが仮初めの姿であっても、ホイムは確かにそんな彼女に少なからず惹かれたのだった。
「……さようなら、受付嬢さん」
小さな寝息を立てる彼女を残し、ホイムは小雨の降る夜の町へと静かに繰り出した。
そう言うとホイムはアカネのはだけさせた忍び装束を掴み、更に上半身が露出するよう大胆に払い去った。
それは決して彼のスケベ心からの行為ではなく、アカネの体に刻まれた更なる傷を明らかにするためだった。
「さっき少しはだけさせた時、体に傷が見えました。もしかしたらと思いましたが、やっぱりそうだったんですね……」
アカネが顔を背けるのは胸まで曝け出したことによる羞恥心からではなく、体中に刻まれた裂傷や抉られたような傷のせいであった。
「古いものから真新しいものまでありますが……この乳房の刺し傷なんて、ついさっきつけられたものでしょう?」
血の滲む胸に触れた時にアカネの顔が小さく歪んだ。痛みに苛まれているというのに、彼女はここまで彼の暗殺のために忍び込んできたのだ。
「僕に依頼を渡したせいじゃないんですか? あなたの雇い主が腹を立てたのは僕だけじゃない……あなたにもだ。だからこんなに痛めつけられて……それも今日だけじゃない。恒常的に、主従関係を盾にされてあなたの体は傷つけられた」
そのことに否定の言葉はない。正解だと判断した。
そのせいでホイムの怒りは沸点を迎えた。
彼にとって、仲間というくくりの中で理不尽に痛めつけられることに対して怒りが募るのは、自分もそのようなパーティに所属していたせいである。
目と耳を塞ぎ現状を受け入れて言いなりになっている彼女に少し前までの自分を重ねてしまう。
そのことをどうしようもないと受け入れていた自分。
そのことをどうしようもないと受け入れている彼女。
彼がそんな彼女の立場に怒りを覚えるのは、当時の自分を否定したいがためでもあったかもしれない。
「どこにいるんですか。あなたの雇い主は?」
「……それは言えない。裏切ることになる」
「立派な忠誠心ですね」
「それだけじゃない……これが体にある以上、私はあいつの命に関わる情報は何一つ漏らせない。そういう……呪いなんだ」
彼女自身も、本心はこの主従関係を呪わしいものと感じているのだった。そのことに、彼の心はほんの少しだけ救われた気分になった。心から心酔しているわけではないのだと。
「分かりました。それがなければいいんですね」
「……え?」
ホイムは彼女の胸で鈍く輝くクリスタルに手を伸ばし、お得意の呪文を唱えた。
「キュア【解呪】」
呪文の発動と共に、彼女の胸にめり込んでいたクリスタルは砕けて消えた。
「ば、馬鹿な……呪いを解けるだなんて、そんなのは神聖術でもないと無理なはず」
驚く彼女をよそに、ホイムは単刀直入に訊ねた。
「あなたの雇い主だった男はどこですか?」
今起きたことへの困惑とさっきまで主であった者を裏切ることに抵抗があったのか、アカネはすぐには口を開けないようであったが、少し間を置いてそいつの隠れ家である町の裏側、ダウンタウンとくくられる治安の良くない場所にある建物を教えてくれた。
「分かりました。その情報は信じます」
ホイムは机に置いていただぼだぼのローブを纏うと、部屋を出ていく準備を整えた。
「ま、待ってくれ! 私も、連れて行ってくれ!」
「ダメです」
端的に断ったが、なおも彼女は追いすがる。
「私は、自分のしてきたことが正しくないと理解しているつもりだ……命令されたからとか、そういう言い訳をするつもりはない。だから、でもだから君が今からしようとしていることを見届けさせてはくれないかと」
「すみませんが」
自分の気持ちをぶつけてくるアカネの言葉をぴしゃりと遮るホイムは彼女の前に立ち、手を伸ばしながら沈痛な面持ちで答えた。
「あなたの情報は信じようと思いますが、僕を騙し殺そうとしたあなたのことは信じられません」
懸命に弁明をしようとするアカネの顔を見ることを拒むように差し伸べた手は淡い光を宿していた。
「待っ……」
「キュア【睡眠】」
アカネの首がかくんと落ちて眠りに落ちた。耐性持ちと分かっていたので少し強めに術をかけたので、しばらくは眠りから覚めないだろう。
椅子に縛っていた縄を解いても動かない彼女を小さな体で担ぎ、部屋のベッドに横たえた。
「……キュア」
最後にアカネに使ったのは至って普通の回復呪文であった。しかしながら規格外の回復力を持つ呪文は、彼女の体の外や内にまで刻まれた傷を新古問わず綺麗に癒やしてしまった。
はだけた装束から覗くのは、生娘のように清く美しい彼女の肌であった。
ほんの少し言葉を交わしただけだったが、昼間の彼女は確かに優しく、素敵な女性だった。
それが仮初めの姿であっても、ホイムは確かにそんな彼女に少なからず惹かれたのだった。
「……さようなら、受付嬢さん」
小さな寝息を立てる彼女を残し、ホイムは小雨の降る夜の町へと静かに繰り出した。
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