異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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最初の町

寝てました

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 異世界スーパーで購入したテントの中で、ホイムは体を横にしていた。
 北の大森林に踏み込む手前ギリギリのところでテントを張ったのはたまたまであった。もう少し先に進んでいたら、縄張りを警戒するモンスター達が襲いかかっていただろう。
 横になるホイムは小さな体を小刻みに震わせていた。
 雨にうたれたこと、戦闘で思いの外疲弊したこと、心労。
 様々な要因が不運にも重なり、彼は重度の高熱にうなされていた。
 その左手は何かに縋るよう固く結ばれていた。
 それこそお得意のキュアをかければ一発で治るのだが、今のホイムにはそれができない、思いつかないほど疲労困憊であった。
 寧ろその不調を甘んじて受け入れている面もあった。正常な状態ならば、弱った心の中に自ら死を選ぶという選択肢も浮かんできていたところだろう。
 定まらない焦点と思考の中で、まず最初に考えたのは黙って宿を出てきたことに対する申し訳無さだった。
 最後にきちんとお姉ちゃんの顔を見て、もう一回エッチなイタズラをお願いすればよかった。うまくいけばこのまま死ぬ前に自分の遺伝子を残せたかもしれない。
 やっぱり自分はスケベだなと安心しながら、ブルリと悪寒に震えた。
 初めて人をこの手で屠った。勇者パーティにいる頃に義憤から悪党を成敗する場面に遭遇することは何度もあったが、実行するのは前衛の正義感をふりかざす偽善者たち。
 保井武は安全な後方から彼らの武勇を眺め、その後に役立たずとそしられ虐げられるのが常だった。思い出すほどに怒りが沸きそうになるが、人の命の重みが彼の思考を闇の中に引きずり込む。
 いくら悪党であっても、人の命を奪ったことは事実である。正当化はできない。ならばできることは命の重さを糧に両の足を奮い立たせて歩き続けるか、命の重さに押しつぶされてこのまま死ぬかだ。
 今のホイムは後者もアリだなと考えていた。木漏れ日亭でご飯を食べて生きたいと願ったはずなのに、たった一日で心が折れてしまった。
 一瞬前までエッチなことをしたいと思っていたはずが即座に考えが入れ替わるのは、それだけ衰弱している証拠であった。
 そもそも何で僕は人を殺してしまったんだ。
 そのことはすぐに思い出せた。
 彼女のせい……。
 彼女のため……。
 彼女のおかげで、僕は奮い立てたんだ。
 その人物のことを思い出すと、不思議とホイムは深い眠りに落ちていった。まるで自分が睡眠魔法にかかったかのように。



 とても優しい匂いがする。ぷにぷにとした柔らかな温もりに包まれていて、まだ寝ていたいとホイムは思った。
 でも目が覚めたから仕方なく薄く開けた瞳の先に、夢の続きを思わせる女性の顔があった。

「目が覚めましたか」
「うん……」

 覆面で隠した唇からしっかりとあの人の声もした。
 いい夢が続いてるなあと思いながらもぞもぞと毛布を被り直す仕草をしたホイムの顔が、毛布よりも格段に気持ちいいものに挟まれた。

「すんすん」

 うわあほんのり汗ばんだ女性の肌ってすごく興奮するぅ。

「はあ……ホイム様」

 むぎゅうと抱きしめられたところでようやくホイムは跳ね起きた。

「うわああああ!」

 テントを突き破るのではという勢いで立ち上がったホイムが目にしたのは、裸で横たわるアカネの姿だった。

「な、な、な、な……」

 ホイムの心臓は破裂しそうなほどバクバクしていた。
 興奮を覚えるよりもまず突然の出来事に対する恐怖と驚愕が勝っていた。

「驚かせてしまい申し訳ございません」

 三つ指をついて正座するアカネが、テントの中で何をしていたのか丁寧な口調で説明してくる。

「大変な高熱にうなされている様子に、差し出がましいかと思いましたがこうして人肌で温めていた所存でございます」
「あ……あ……」

 ここはありがとうと言っておくべきかホイムは判断を迷った。判断を下すにはまだ冷静さを欠いていた。
 それに全裸なのに何故かしっかりと覆面だけはしているアカネ。
 なんとも奇妙な出で立ちであるはずが、かえってそれがフェティシズムに思えたせいで少し鼻の下が伸びてしまう。

「まっ。逞しいお姿……」

 その時、一点を見て目を見開いた彼女がポッと頬を染めて俯く様子に、ホイムも視線を落として一瞬で赤面した。

「わあ! 違います! これはただの生理現象です! 朝は仕方ないんです!」

 内股になり両手で股間を抑えるホイムであったが、アカネの視線はホイムが慌てた動作の最中に左手から放り投げて落ちたものに向けられていた。

「これ……」

 彼女が手にとったのは、昨日彼女自身がホイムにそっと渡した銀貨であった。
 どうしてそれが左手にあったのかと思い、ホイムが左手を開いて見ると、そこには銀貨を固く握りしめていたために出来上がった硬貨の痣がくっきりと刻まれていた。

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