異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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獣狼族の森

一緒になりました

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「一緒に来てほしくはなかったのですか?」
「そうだね……来てくれてたら、賑やかになるし楽しいし、嬉しかったと思うよ。でもそれは、僕のワガママです。付き合わせるわけにはいきませんよ」

 本音を言えば、ホイムもルカと一緒にいたいという思いは抱いていたのだった。共に死線を越えた仲であれば、絆を感じて当然である。
 しかしルカの立場がそれを許しはしないと考え、彼女を置いていくという判断をホイムにさせていた。

「私はホイム様のお考えは間違ってはいないと思います。ですが……」

 全てを聞いた上で、アカネは覆面の下で笑みを漏らしんがら後方に拡がる森の奥を流し見た。

「……あの子の判断も聞いてあげていいのではないですか?」

 動物が駆けてくる軽快な足音がホイムの耳に届いてきた。小動物より大きく、モンスターよりは軽量な足音の主が茂みの向こうからやってくる。
 森の奥から飛び出してきたのは、銀色の毛並みをした若い狼だった。

「うわっ!」

 その狼は駆け抜ける勢いを殺すことなくホイムの胸に飛び込んだ。
 勢いにやられて転んだホイムの顔を、狼はペロペロペロペロ濡れ濡れになるまで舐め回す。

「ちょ、やめ、やめろってばぁ!」

 くすぐったさに負けそうになったホイムは狼の前足の下に両手を入れて持ち上げた。
 へっへと息を荒げる雌の狼の瞳は、どこかで見たことのあるものだった。

 ポワンっ。

 煙に包まれた狼の重量がずんと増す。
 まるで成人女性を持ち上げているような重さにホイムの腕は負けてしまった。
 そして押しつけられる、重量感のあるおっぱい。

「ホイム!」

 ルカだ。獣耳を立てて尻尾をブンブン振ってくるルカが、弾ける笑顔でホイムに覆いかぶさっていた。

「ルカ……? なんで……」

 見たことのある瞳をしていたのは当然であった。
 そしてその眼は真剣な眼差しでホイムを見つめてきた。

「あの夜言った! 離れないって!」
「それは……言ってくれたけれど。でも駄目だよ、ルカは皆の上に立つ、立派な族長にならなくちゃ……」
「うん! ルカは父と同じ、族長になる」

 彼女自身がそう決めているならば尚の事、集落を離れるわけにはいかないじゃないかと思うホイムに、ルカは言う。

「でもロム爺が言った。獣族全体に大変なこと起きそう」

 それは魔人マールフレアがホイムに教え、彼がロム爺に伝えた件であろう。

「ルカは確かめる。今の獣王がどうなってるか。そして決めた。今獣王がいなかったら、ルカが獣王になる!」

 ルカは声高らかに宣言した。

「な、なれるの?」
「なれる!」

 なれるのかあ……。
 しかしルカの発言が本当かどうか分からなかったホイムは、アカネに助けを求めた。

「私の記憶が確かならば」

 黙って二人を見守っていた知識の鉄人アカネの真価が問われるぞ。

「獣王というのは称号のようなもの。数ある獣族の代表から最も優れた人物を決め、其の者が獣王を名乗るのです。確か今は、獣獅族のリクオウが獣王を冠していたはずです。……生きているならば、ですが」
「なら、もし今獣王の座が空席なら、獣狼族のルカが獣王に選ばれる可能性も……?」
「ある!」

 ルカは吠えるように言い切った。

「しかしながらここ数世代は獣獅族の代表が獣王の地位を不動のものとしていたと記憶しています」

 獅子の名を持つ獣族は抜きん出て優秀な一族のようである。

「私の知る限りでは他の獣族から獣王が選ばれたことはないはずです。よほど昔ならあるのかもしれませんが……」

 つまり他の獣族が獣王の地位を得るのは至難の業ということだ。

「だからルカは旅に出る。獣王に相応しい獣狼族の長になる。ロム爺応援してくれた。カラ達も他の皆も説得した。みんな見送ってくれた!」

 ルカは家族を説得していたため、ホイム達から数日遅れて村を出立したのだった。

「でも……」

 状況の整理に時間がかかっている様子のホイムを見かねたのか、アカネが横から口添えしてくる。

「どうやら獣族としてのルカには旅をする理由がある様子。ここは一つ、彼女の同行を受け入れてはいかがですか?」
「アカネ! 感謝!」

 その言葉を聞いてホイムから体を離したルカが、今度はアカネの腰に抱きついた。スリスリと頬ずりするルカの頭をアカネがよしよしと撫でる。

「アカネさん……ルカが追いかけてくるの知ってたの?」
「まさか。ですが、ホイム様の妻を自称するルカならば追いかけてくるのでは、とは思っておりました」

 どうやらアカネはこういう状況になることは織り込み済みだったようだ。
 予期せず驚いていたのはホイムだけであった。だが驚きと同時に、嬉しくもあった。

「……しょうがないなあ」

 埃を払いながら立ち上がったホイムは、アカネに抱きつくルカに向けて言った。

「一緒にいる時はちゃんと僕とアカネさんの言うことを聞くこと。森にいる時みたいに自由奔放に行動しないって約束、できる?」
「当然! 妻は夫の言うこと聞く。夫の妻の言うことも聞く。ホイムとアカネの言うこと一番!」

 しっかりと自覚してついてくる覚悟のあるルカの目を見てホイムも決めた。

「よろしくね、ルカ」
「うん!」

 甘えるように二人に抱きついてくるルカを受け入れたことで、彼らの旅は三人で続ける事となるのだった。
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