異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

文字の大きさ
84 / 131
パルメティの街

強引にいきました

しおりを挟む
 ともあれこれでアリアスの身は安全だろうと判断したホイムは、さっきから黙って切り株に腰掛けていたエミリアに声をかけた。

「エミリアさん? 僕らものんびり戻りましょうか……多分一日遅れるくらいでパルメティに着くと思いますよ」

 彼が話しかけてようやくエミリアは顔を上げた。周囲を見回すと、何かに気付いて問いかけた。

「……アリアスは?」
「アカネさんとルカが一足先にパルメティに運んでいます。今出ていったばかりじゃないですか」

 面白いジョークですねとホイムは笑ってみせたのだが、特に反応が返ってくるわけでもなかったので次第に笑いは消えていった。

「そうか。手間をかけるな」
「見送ってあげれば良かったのに」
「ああ……その通りだ。彼女のことを見届けなければならなかった……なのに、私は今……自分のことしか考えられない」

 どうやらここにも休息が必要な人がいたことにホイムは気が付いた。

「……とりあえず、安全な場所まで行きましょう」

 ここはまだ森の中。消耗している二人に目をつけてモンスターが襲ってこないとも限らない。今は不要な戦闘は避けるべきである。
 ホイムは多少足元のおぼつかないエミリアを先導し、森を抜けて安全な場所まで退避することにした。
 アカネやルカほど足の速くない二人が森を出る頃には、陽が傾いていた。加えて遠くの空には不穏な暗雲が漂っていた。

「雨になるかもしれませんね……」

 ホイムが口にしても誰も返事はしてくれない。不安になって後ろを振り返ると、ちゃんとエミリアがついてきているのでホッとする。
 街道付近に来るまで、二人の間に会話はなかった。正確にはホイムは話しているのだが、それに対する答えがなかった。たまに「ああ」とか「うん」と返ってくることもあったが、ほとんどホイムからの一方通行である。
 そろそろ落ち着いてしっかりと話をできればと思ったホイムは、ある地点を指差した。

「丁度いいや。あそこでテントを張りましょう」

 その先には以前誰かが野営した跡が残されていた。石で作った竈と火を使った痕跡。他の者がいた後ならば安全だろうと判断したホイムは、今日はその場で休むことを提案した。
 相変わらずエミリアの反応は薄いものであったが拒絶はなかったので、彼女の背負う荷物を下ろしてテントを設営することになった。
 ホイムが一人でせっせとテントの準備をしていると、

「……手伝おうか?」

 ようやくエミリアから声をかけてくるようになった。

「いえ、一人で大丈夫です」

 だがホイムの脳裏に過ったのはひっくり返ったテントのオブジェ。間髪入れずにエミリアの協力を断ってしまった。


「……そうか」
 エミリアはホイムに背を向け手持ち無沙汰に立ち尽くしていた。

(……あれ、今のバッドコミュニケーション……?)

 テントを組み立てる手を止めずにホイムが思ったのは、ゲームの選択肢をミスったかのような例えだった。
 テントの設営を終えてそう間を置かず、ホイムが懸念していたように雨が降り出した。強い雨風ではないのでテントの中にいればどうということもなく、ただ小雨とテントの奏でるパラパラとした演奏が耳に響く夜であった
「夕飯は物足りなかったですよね? アカネさんがいないから、乾いたパンと干し肉くらいで……」
 会話を続けるホイムに対し、エミリアはのろのろと装備を外し軽装となると、そのまま横になるところだった。

「先に休ませてもらう」

 彼女が寝転がる寸前、ホイムは慌てて正座の姿勢で滑り込んだ。

「……ホイッ!」

 タイミングよくエミリアの頭がホイムの太ももの上に乗っかって、上を向いたエミリアの顔とホイムの顔が直面した。

「……何してる?」
「膝枕……ですかね」

 何故そんなマネを……と半眼で見てくるエミリアに対し、

「だってこうでもしないと話す暇もなく寝るつもりだったでしょ!」

 とホイムは訴えた。

「こんな私と話がしたいのか?」
「そんな状態だからですよ」

 目を見て話したところで、エミリアはすぐに横を向いて視線を外してしまった。

「……話が終わったら寝るぞ?」

 ようやく会話の下準備が整ったことにホイムは安堵し、膝の上にあるエミリアの頭を撫でながら話をするのだった。
「今日は疲れましたね」
「ああ」
「アリアスさんを助けられた良かったです」
「そうだな」
「戻ったらきちんとお見舞いしなくちゃいけませんね」
「そうしよう」
「魔人に会ってからいろいろ考えているみたいですけど、どうかしましたか?」

 魔人と遭遇した件に触れた時、エミリアは答えに窮した。あの場で奴に言われたことが彼女の中で引っかかっているらしい。

「……私は賢くない。だから、あいつに言い放たれたことに対してどうすればいいか……考えても、考えるほど……みんな無事なのかとか、気になって……」
「分かりますよ。分かりました。一つずつ……気持ちに整理をつけていきましょう」

 ホイムに髪を撫でられながら、彼女は鼻をすするようにして頷いた。
しおりを挟む
感想 180

あなたにおすすめの小説

田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛

タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】 田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

美人同僚のおまけとして異世界召喚された私、無能扱いされ王城から追い出される。私の才能を見出してくれた辺境伯様と一緒に田舎でのんびりスローライ

さら
恋愛
美人な同僚の“おまけ”として異世界に召喚された私。けれど、無能だと笑われ王城から追い出されてしまう――。 絶望していた私を拾ってくれたのは、冷徹と噂される辺境伯様でした。 荒れ果てた村で彼の隣に立ちながら、料理を作り、子供たちに針仕事を教え、少しずつ居場所を見つけていく私。 優しい言葉をかけてくれる領民たち、そして、時折見せる辺境伯様の微笑みに、胸がときめいていく……。 華やかな王都で「無能」と追放された女が、辺境で自分の価値を見つけ、誰よりも大切に愛される――。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

処理中です...