異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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フラシュ王国への道中

おまけの前半

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 起きて早々、エミリアからの説教を受けたホイムとアカネ。
 時間を浪費するわけにもいかないのでそれ自体はすぐに済んだのだが、出立前の準備が疎かになっていたので急いで手筈を整えることとなった。

「私とホイムは竜蜥騎と荷車へ向かう。アカネとルカは食料は必需品の買い出しを頼む」

 エミリアの指示に従って一行は一時的に二手に別れることとなった。
 ルカはまだ眠そうでありアカネは組分けに一言物申したかったようだが、
「二人を一緒にすると何をしでかすか分からん」

 とホイムとアカネを名指しされたので今朝のところは甘んじて受け入れるアカネであった。

「ですがエミリアの方こそ何かしでかしたりのないよう」

 別れ際にチクリと言ってくるアカネに対し、

「そんな心配いらないですって……ねえ?」

 笑って返すホイム。エミリアにも同意を求めたのだが、彼女は口をへの字に結んだまま応じようとしなかった。

(怒ってるなあ……ご機嫌取らないとまずいよなあ……)

 二人に求められたことにホイムとしては当初渋々と応じたわけであるが(単なる言い訳で本人も次第にノリノリになったわけであるが)やはり控えろと言われた事をやらかしたのがエミリアには我慢できなかった様子。

「ホイム」

 どうやって彼女の怒りを収めようかと考えを巡らせていたホイムを手招きするエミリア。

「ちょっとこっちへ」

 竜蜥騎を預けていた留場の脇を通り過ぎる彼女を駆け足で追いかける。
 今から出立の準備を整えるはずというのに何処へ向かうのかと怪訝に思っているとハッとした。

「うう……お仕置きならきっちりと受けますのでどうかお手柔らかに……」

 人目につかないところで罰を受けさせられるのだと覚悟したホイムは少しでも刑を軽くしようと情に訴えてみたが、無言のエミリアには届かなかったかもしれないと思い肩を落とした。
 やがて宿場から少し離れた林の中で足を止めたエミリアに従いホイムも立ち止まる。
 宿場の方をちらりと振り返る。この距離だとホイムが泣き叫んでもその声が向こうに届くことはないだろう。

「いやでも流石にそんな真似は」

 バキィ。
 痛いことなどしてくるはずがない。
 そう高をくくっていたホイムの顔のすぐ横をエミリアの平手が掠め、背後の大木に亀裂を刻んでいた。

「……エミリアさん?」

 恐る恐る。
 見上げたホイムの眼には口を結んだまま座った目で見下ろしてくる彼女の放つ気迫が空気を震わせている姿が映った。

「あわわわわ……」

 壁ドンならぬ木バキィを極められたホイムは背後の木に背を預けたまま一歩も動けなくなった。
 不埒な行為に応じてしまった事でこうまで怒らせてしまうとは見抜けなかったホイムは自分の認識の甘さを心から反省しながら、膝をついて目線を合わせてくるエミリアの顔を見ることができずに固く瞼を閉じた。
 一発二発小突かれることを覚悟して歯を食いしばってその時を待つ。

「……ぜだ」

 体感ではかなりの時間待ったつもりのホイムだったが、実際はほんの五秒ほどしか経っていなかった。

「何故だ」

 手が出てくると思いきや言葉……問いかけられたことを不思議に思った彼はゆっくりと目を開けた。

 見えたのは口をへの字に結んでむくれる涙目の女性だった。

「な、ぜ……って?」

 てっきり怒られる、最悪の場合ぼっこぼこにされることすら想定していたホイムにしてみればこの反応は正に想定外である。
 木バキィしたエミリアの手がホイムの肩を掴んでくると縋るように訴えてきた。

「何故お前は二人にはホイホイ手を出して私には出さん!」
「そこ!?」

 これにはホイムも驚いた。
 まさかエミリアの表情の原因がふしだらな行為を重ねた事を怒っていたのではなく、一人だけ手を出されていない事に拗ねているのだとは。

「いやいや……エミリアさんがそういうのダメって」
「言いつけを破っておきながら律儀に私だけほったらかすのか!」
「それに聖華騎士団じゃないですか! 貞操はしっかりと守っていやらしいことは控えないと」
「もうお前に穢された!」
「まだ純潔ですって!」
「心の方だ!」

 目に見えぬものを持ち出されてはすぐに反論ができなかった。
 確かに彼女は純潔を保っているが後ろの穴は済みというある意味心に傷を負いそうな体にされているが、どうやら彼女が言いたいのはそういうことではないらしい。

「人の心を奪っておいて……私だけほったらかしだなんて」

 惚れさせておいて自分だけのけ者にされていることがホイムの想像以上に彼女の心を傷つけてしまっているようだった。

「教えてくれ……。私はそんなに魅力がないか……あの二人に比べて」
 涙目で俯くエミリアを見てしまうと、そういうことをするつもりは本当になかったはずなのにむくむくと気持ちが膨れ上がってくるのを感じていた。
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