異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし

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王都フラシュ

やってきました

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 宿場街を出てから数日、いよいよホイム達の行く先には目指すべき王都が見えてきていた。

「あそこが……」

 竜蜥騎を操るエミリアの背後、幌から顔を出すホイムが暗雲立ち込める目的地を険しい表情で見据えていた。

「ああ。今は我らを待ち受けし魔人がいる国……フラシュだ」

 エミリアの声色も少し硬くなっている。いよいよ決着の時が迫ってきたのである。

「不吉な雲ですね」

 ホイムに続き顔を出したアカネが、主の頭におっぱいを乗っけながら呟く。

「着いたぁ……?」

 しぱしぱさせた目を擦りながらルカもホイムの顔の下から外を窺った。

「このまま王都へ向かうんですか?」

 上下を挟まれるホイムの問いにエミリアは小さく首を振った。

「いや、まずは北ではなく北西へ向かう」

 道の先は二つに分かれていた。
 北進すればそのままフラシュ王国へ辿り着き、少し逸れた北西へと進めばフラシュに属する港街エイーリオへと続いている。

「そこで最後の支度を済ませてすぐに王都へ行こう」

 エミリアはフードを目深に被り直し、エイーリオへと進路をとった。

「エイーリオってどういう街ですか?」
「ルカは知らない」

 地理に疎い二人は詳しそうな二人の答えに期待していた。

「確かフラシュ王国の治める交易都市……でしたね」

 今日もAkapediaの検索機能はしっかりと働いている。しかしながら情報が少なく自信がないのか、エミリアに確認をする口調であった。
 流石にフラシュで聖華騎士団として務めていたエミリアにとってその街のことは常識であり、アカネの言葉に頷いて肯定した。

「ああ。王都は切り立つ岬の上に立地している関係で、大海に面しているにも関わらず船を用いた交易ができなかったからな。そこで交易都市として栄えはじめていたエイーリオを陸の脅威から守る代わりにフラシュの貿易港としての役割を担ってもらっているのだ。街の規模はパルメティより小さくはあるが、異国からの人や物の流入がある分、活気や物珍しさは勝っていると思うぞ」

 以前は姫のワガママにこっそり付き合って……と懐かしげに語るエミリアであったが、すぐに表情を引き締めた。

「だが今はどうなっているか……。王都に魔人が巣食っているからには、近場にあるエイーリオに全く影響がないとは考えにくいが」
「そのような街へ赴いてまで支度をする必要が?」

 アカネの疑問を予想していたか、エミリアはすぐに答えた。

「城壁に囲まれた王都の近くに荷車を置いていっては竜蜥騎が危険に晒されるからな。まずはこいつを安全なところに預ける必要がある」
「アテがあるのですか?」

 まあな。
 彼女がそう答えるからには言葉を信じてついていくしかない。
 少しだけ不安は残るものの、四人は北西の交易都市エイーリオへと旅路を急いだ。




 エイーリオに辿り着いた四人は、竜蜥騎と荷車を街の入り口にある停留施設に預けおいて街の中を歩いていた。
 門番に手配中の聖華騎士団であるエミリアの正体がばれてしまわないかという懸念があったのだが、全く疑われることなく……というよりもなんともおざなりな仕事ぶりでチェックもほどほどに街へ入ることができた。
 心なしか疲れた様子の門兵に思うところがなかったわけではない。

「エイーリオの門番って前からあんな感じなんです?」

 ホイムは歩きながら、小声でフードを被るエミリアに問いかけた。

「いや……もっと普通に仕事をしていたはずだが」

 エミリアも適当な仕事であったことに少なからず疑念を抱いてはいるようであった。
 そして疑わしいことは門兵の様子だけではなかった。
 街中を歩き始めてすぐに妙な感じが四人を包んでいた。

「この街暗い」

 周囲を見回すルカの率直な感想である。ホイムもその意見に心の中で賛同していた。
 エミリアの話では活気に満ちた街であったはずである。
 しかし今のエイーリオの様子は人々の喧騒とはかけ離れた静けさに包まれていた。
 声がないわけではない。

「いらっしゃい! とれたての魚が安いよ!」

 少し大きな通りの路肩には港街らしく新鮮な魚を並べる商店がいくつもあり、店主の男性たちが客の気を引こうと大きな声で呼びかけている。
 しかしそれに反応する人のなんと少ないことか。
 皆一様に伏し目がちで肩を丸め、人目を避けるように小さくなって道を歩くようであった。

「少し……とは言えない異様さを感じますね」

 覆面で顔を隠すアカネが注意深く周囲を覗いながら小声で漏らす。心の中でホイムも賛同した。

「エミリアさん……」

 一体どうなっているのだろうとホイムは訊ねたかったが、あまりに違う街の様相に一番困惑しているのは彼女であろう。見上げた先の表情が優れぬことを見ると、ホイムは彼女に声をかけることを止めた。

「ひとまず酒場かギルドにでも……」

 情報が足りない。
 そう判断したホイムが情報の集まる場所へ赴こうと提案しかけた時、通りの向こうから騒々しい声が上がった。
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