《死霊魔術師に転生した俺は、かつての英雄たちを蘇らせ最強軍団を築く》

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第11話:断罪の果て、声なき祈り

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 風が止んでいた。

 聖野の空は、もう朱くない。
 ただ、灰色の雲が低く垂れ込め、戦場の上空を覆っていた。

 英霊たちも、祝福騎士団も、動きを止めている。
 すべての視線が、ただ二人――カイルとセレスに注がれていた。

 互いの術式は崩れかけていた。
 霊力も、神気も限界に近い。

「……これ以上、やれば共倒れになるぞ、セレス」

 カイルが言った。
 その声には、怒りも、嘲りもなかった。
 ただの事実としての言葉。

 セレスは息を切らし、杖を握る手を震わせながら答える。

「……それでも、私はあなたを止めたい。
 このまま、あなたがすべてを壊してしまうのが、怖いから」

「もう、手遅れだよ。俺は冥府と契約し、神々の枠組みから外れた。
 生者にも、神にも、属さない。
 それでも――世界を変えると決めた」

 セレスは、目を伏せた。

「……あの日、あなたを止めるべきじゃなかったのかもしれない。
 でも、誰かが“罪を背負う”必要があるなら、それは私だと、今でも思ってる」

「なら――そのまま、背負い続けるといい。
 これは、俺たち全員の罪なんだから」

     ◆

 二人の間にあった距離は、もう杖の先で届くほどになっていた。

 カイルは杖を下ろした。

「戦いは、もういい」

「……?」

「お前が、“あのときの選択”に今も向き合ってることは分かった。
 それだけで、十分だ」

 セレスは、ほんの一瞬だけ、目を見開いた。

 その瞳に、涙が滲んでいた。
 今度は、痛みではなく――救いの涙だった。

「ありがとう、カイル。
 あなたが私を“許した”とは思ってない。……でも、少しだけ、救われた気がする」

 セレスは杖を地に置いた。

「この身体には、神の祝福が刻まれている。
 けれど、その“祈り”が届くかどうかは、私次第だったのね」

 カイルは答えなかった。

 ただ、セレスの背を見送りながら、静かに目を閉じた。

     ◆

 聖野の戦は、終わった。

 冥府軍は後退を選び、王国側も深追いしなかった。

 生者と死者が、“わずかな和解”の気配を見せた、唯一の戦場。

 だが、その空気を冷たく切り裂く者がいた。

「“和解”など、茶番に過ぎん」

 王都。玉座の間。

 王太子エリアス=ヴェルムは、ゆっくりと立ち上がる。

 彼は静かに、笑っていた。

「やはり、カイルは生きていたか。冥府の力を得て、英霊どもを従えて……
 ならばこちらも、“神々の兵”を用いるとしよう」

 その手にあったのは、聖典ではなく――“禁書”。

 神殿でも封印されていた、旧神の呪書である。

「冥府と契約した元勇者。ならば王国は――神を超えた兵で応えるまで」

 こうして、真なる“神と死者”の戦争が幕を開ける。

 それは、もう“信仰”でも“正義”でもなく――
 ただ世界そのものを覆す、最終戦争の始まりだった。

―――――――――――――――――――――――――

あとがき
お読みいただきありがとうございました。
第11話では、カイルとセレスの戦いにひとつの決着をつけつつ、王太子エリアスが“禁じられた力”を手にし、物語を新たな段階へと進める準備を描きました。

ここから先は「神すら踏みにじる」戦いが始まります。
次なる章は《世界審判編》として、“神の兵”と“冥府の軍勢”が世界を二分する大戦編に突入します。

いいね・フォローのお願い
「セレスとの決着が切なかった」「ついに王太子が動いた!」
そう思っていただけた方は、ぜひ「いいね」や「フォロー」での応援をお願いします。
物語はここからさらに激しく、そして深く、冥府の果てへ進んでいきます。

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