怪談

コテット

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命のやりとり

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友人のAは、物心ついた頃からずっと「運がいい奴」だった。

就活は希望の一社目で内定。
宝くじはちょっと買えば当たり、合コンに行けば毎回モテる。

「俺は昔から守られてるんだよ」
そう言って笑うAが少しだけ鼻についた。

ある日、飲みの席でAが妙なことを言い出した。

「俺、今までに3回死にかけたことあるんだけどさ、そのたびに誰かが代わりに死んでるんだよ」

高校のとき、自転車で車に轢かれそうになった瞬間、
数メートル先で別の自転車が跳ね飛ばされた。

大学の時は、旅行で泊まった旅館で火事。
隣の部屋で寝ていた老人が焼死し、自分は煙にすら巻かれなかった。

社会人になってからは、取引先のビルでエレベーターが故障し、
直前に乗り込んだ営業マンが落ちて亡くなった。

「まぁ全部偶然なんだろうけど、変な話だよな」

そう言って、Aは酔った顔でケラケラ笑っていた。

俺はそれを聞いて、何とも言えない気持ちになった。

数週間後、Aが急に俺に電話をかけてきた。

「なぁ、お前今どこ?」

近所のコンビニだと答えると、

「良かった……お前はまだ遠いな」

どういう意味だと問い返したが、電話は切れた。

その夜、ニュースでAの会社の入っているビルで爆発事故があったと報じられた。

死者は出なかったらしい。

ただ一人、Aを除いて。

葬式の帰り道、なんとなく空を見上げた。

すると俺のスマホに知らない番号から着信があった。

「もしもし?」

「あー……お前か。良かった……これでしばらくは安心だ」

それは死んだはずのAの声だった。

電話越しに、カツカツと靴音が遠ざかるのが聞こえた。

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