国を追い出された令嬢は帝国で拾われる

氷雨

文字の大きさ
16 / 53
帝国編

宰相の苦労

しおりを挟む

今回はアイザック視点です!

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈



今日、陛下が逃げた。
それも、窓から。

なんて人だ。

確かに休みが欲しいのはわかる、だが、それは私だって同じだ。仕事が多いにもかかわらず最近になって妙に事件が多く多発している。
最初は嫌がらせかとも思ったがこれも仕事、我儘は言っていられない。だから仕方なくやっていたのに...


...ったくあいつは!!


今思い出すだけで腹立たしいが、部下達に任せて仕事を放り出すのは良くない。
私は仕方ないと割り切り、仕事を溜めに溜めやがった陛下に愚痴を零しながら書類を片付けて行ったのだった。




✱ ✱ ✱



夕闇の迫る頃、街の警備兵からある報告が上がった。

はぁ、何なんです?今忙しいのですが?

そんな事を言っても報告書を渡しに来てくれた部下に迷惑がかかるため、仕方なく受け取る。


「ご苦労様です。」


1本の紺の紐で縛られた文書を受け取り、早速紐をとく。ざっと読んでみたのだが...


これは...


はて、貴方は何をしているのですか?


思わず呆れた。


だが、これを見たら誰でも思うと思う。

内容はこうだった。


『夕刻の鐘がなって1時間ほどたった頃、怪しい男達が路地を通り周りを警戒しながらひとつの建物に入っていきましたので、捕らえ次第に城に連れていきます。また、お忍びのようでしたのであまり言わない方がいいと思いましたが、報告します。どうやら今回の報告と共に陛下と思わしき人物が指揮をとっているようです。』

との事だった。
一体あの人は何をしているんだ?
確かに仕事ではあるがそれは兵の仕事であり貴方のすることではないでしょう。


はぁ


今日でもう何回ため息を吐いたことか...このままでは幸せだって逃げてしまう。


だがそんな私の苦労も知らずあの人は見事、怪しい男達を捕え城に連れ帰ってきた。

が、


「誰です?その人」


陛下の腕の中にはどう見ても子供には見えない女性が眠っていた。横抱きにしているため背丈は分からないが、恐らく平均よりは高いと見た。

...まさか攫ってきたのか!?

いや違う、よく考えろ、あの少々女性に苦手意識がある陛下が女性を抱えているんだ。どうした?女が好きになったのか?いや、何かしら事情がある筈だ。だがそれなら兵達に任せればいい......私と陛下は従兄弟だ、その為昔からずっと一緒にいた。だが今、私は陛下、ハルの事が分からなかった。


そんな葛藤をする私に陛下が爆弾を放つ。


「彼女は今日からここで暮らす、部屋を用意しろ」

.........
............


「...は?」

思わずそんな言葉が出た。
だが、許して欲しい、急にそんなことを言い出したあなたが悪い、それに私と同じように陛下をよく知る近衛騎士達も同様に目をこれでもかと見開き驚いている。


「へ、陛下、頭は...」

「大丈夫だが?...全くどいつもこいつもなんなんだ、皆私が馬鹿だとでも思っているのか?」

「い、いえ、そういう訳では...」

「なら、早く準備をしろ、彼女を今すぐ休ませてあげたい」

「「しょ、承知しました!!」」

はっ、私も動かなければ...!


「陛下、詳しい事情をおきかせください、一体何があったのです?」

「あぁ、それか。その件に関しては明日にしてもらえないか?私は彼女の傍にいたい」


はい!?
陛下が自ら傍に、いたい!?
一体陛下はどうしてしまわれたんだ、もしや一目惚れか?まさか無理やり連れてきたなんてことは......有り得そうだ、だが今は我慢だ。取り敢えず明日報告するという陛下の言葉を信じて今は執務室に戻ろう。少しでも多く時間を取れるよう、急ピッチで終わらせなければ!


「陛下、それでは私は失礼します」

「あぁ、迷惑をかけたな」

「全くです、もうこんな無茶はしないでください」

そう言うと、陛下は私に背を向け歩き去って行かれた。


さぁ、早く仕事を終わらせよう。





┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈


結構短くなりましたが許してください。
お読み頂きありがとうございました!
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】婚約破棄される前に私は毒を呷って死にます!当然でしょう?私は王太子妃になるはずだったんですから。どの道、只ではすみません。

つくも茄子
恋愛
フリッツ王太子の婚約者が毒を呷った。 彼女は筆頭公爵家のアレクサンドラ・ウジェーヌ・ヘッセン。 なぜ、彼女は毒を自ら飲み干したのか? それは婚約者のフリッツ王太子からの婚約破棄が原因であった。 恋人の男爵令嬢を正妃にするためにアレクサンドラを罠に嵌めようとしたのだ。 その中の一人は、アレクサンドラの実弟もいた。 更に宰相の息子と近衛騎士団長の嫡男も、王太子と男爵令嬢の味方であった。 婚約者として王家の全てを知るアレクサンドラは、このまま婚約破棄が成立されればどうなるのかを知っていた。そして自分がどういう立場なのかも痛いほど理解していたのだ。 生死の境から生還したアレクサンドラが目を覚ました時には、全てが様変わりしていた。国の将来のため、必要な処置であった。 婚約破棄を宣言した王太子達のその後は、彼らが思い描いていたバラ色の人生ではなかった。 後悔、悲しみ、憎悪、果てしない負の連鎖の果てに、彼らが手にしたものとは。 「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルバ」にも投稿しています。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

処理中です...