エロゲの男性主人公の立ち位置に転生しましたが、前世も今世も女です。

キマメ

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3・なんか増えた。

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 前世の私は十八歳以上だった(お約束)。
 『ラストサマーメモリー』は、大学に入って最初の夏休みに幼いころからの友人が貸してくれたのだ。
 死因はゲームをしながらの熱中症だと思う。『ラストサマーメモリー』をしてたときじゃなくて、スマホでパズルゲームをしてたときのはず。良かった良かった。

 ……いや? ちょっと待てよ?
 スマホでパズルゲームしてたのって、『ラストサマーメモリー』のクソ長いHシーンをスペースキーに重しを置いて飛ばしてる間の時間潰しだったんじゃない? エロゲに興味はあったけど、女の子の裸が見たいわけじゃなかったのよ。
 スマホを握り締め、パソコンにエロゲで熱中症? 前世のお父さんお母さんごめんなさい。

 まあ、前世の両親の顔や名前、自分の名前も思い出せないんだけどね!
 今世の両親は突然の海外で、私は家族で暮らすはずだったマンションにひとり暮らしです。エロゲの設定だなあ。しかも前世で死んだころの主流より古い感じ。
 ゲームを貸してくれた友達の顔と名前も不明。腐女子だったことは覚えてる。

 男性向けエロゲの『ラストサマーメモリー』を貸してくれたのは、彼女が洋風坊ちゃん×和風坊ちゃん推しだったからなんだよねー。まあ私がゲーム好きで、十八歳以上になったからエロゲも遊んでみたいって言ったのもあるけど。
 前世の友は、葵君は沙姫ちゃんじゃなくて赤城君を監禁すべきなのよ! って燃え上がってた。萌えかな? まあ、どっちでもいいや。
 洋風坊ちゃんは葵君、和風坊ちゃんは教室で私の後ろの席の赤城紅太郎君です。うん、この世界のネーミングではこれが普通。前世思い出すまで自分の名前にも不満はなかったしね。

 赤城紅太郎君はこの町を治めてた大名家の子孫で、今も若様と呼ばれてる。
 経済的には葵財閥に劣るものの、政治的な影響力は今も強い。この町のかなりの土地を所有している地主さんである。家賃収入凄いんだろうなあ。
 短く刈った真っ赤な髪で、幼いころ病弱で女装させられていたとは信じられないほど逞しい体躯の美丈夫である。前世の友は華奢系美青年がガチムチマッチョを組み伏せるのが好きだった……そんなことだけ覚えているよ。赤城君はガチムチってほどじゃないイケメン細マッチョだけどね。

 そんなことをつらつら思い出していたのは、週末の予定に赤城君も乱入してきたからである。
 休日前に教室で待ち合わせ時間を確認していたら、私の後ろの席から彼が加わって来たのだ。
 赤城君のお目当てはロリ巨乳教師(実は難病で早急に手術しないと助からない)のはずなんだけど、どうしてかな? まあロリ巨乳教師は主人公と結ばれても赤城君と結ばれても攻略ルート自体が開かれなくても、ちゃんと手術して助かるから放置でOKなんだけど。全然ちょっかい出してなかったから事情知らなくて、エンドロールで『無事手術も終わりリハビリ中』って言われたときはびっくりしたよね!

 今は四人で車の中。
 もう夏休みの一ヶ月前でかなり暑いけど、クーラーって素晴らしい!
 前世でもクーラーをつけていたら、こんなところにはいなかったのかもなあ。まあ今世の両親もこれまでの友達も好きだけど! 頑張って学園を卒業して、今度は長生きしてやるけども!

 左ハンドルの外車の運転席に葵君、右の助手席に赤城君だよ。
 前世の友に見せたら、滾って来たー! とか言ってSNSに載せるSS書き始めてただろうな。かけ算かけ算。
 私と桜山さんは後ろの席です。男ふたりが長身なので前が見えねぇ! でも桜山さんに窓から町の施設を説明してもらってるから問題ないです。

「天光さん、あれがこの町のシンボルタワーよ。向こうが駅ビル」
「うわー、高層ビル街だね」

 ああ、前世の東京並みに大きくて発展した町だ。いや、この世界も東京あるけど。
 さすがエロゲ世界、デートスポットやおしゃれなお店が山ほどある。いろんなイベントがあったなあ。シンボルタワーの最上階からは海も見えたっけ。繁華街を抜けると港もあったはず。
 ひと通り町を巡ったところで、葵君が言った。

「そろそろお昼にしない? 僕がコーディネイトしたフレンチレストランが近くにあるから、そこでランチはどうかな。フルコースもあるけど、食の細い女性にはハーフプレートがお勧めだよ」
「いや、蒼吾。暑いときに洋食はもたれるぞ。赤城家御用達の和食店があるから、そちらにしよう」
「……天光さん?」

 困ったような顔の桜山さんに見つめられて、私はきっぱりふたりに告げた。

「あ、お金ないから高そうなお店はいいです。駅前で降ろしてもらったら、桜山さんとハンバーガーでも食べて帰ります」

 桜山さんをひとりにする気はない。
 ルートを開いてしまった以上、攻略は出来ないまでも葵君からは守る所存だ。
 でももし赤城君が桜山さんを好きなんだったら、いつでも託すつもりはある! この町の若様である赤城君なら、葵君から桜山さんを守り通すことが出来るはずだ。

「ハンバーガーか。ファストフードじゃなくてオーガニック系のお店でもいい? 紅太郎の家のビルに入ってるとこ」
「ああ、あそこか。あそこのバーガーは大きくて食べ甲斐があるよな」

 なんかふたりで納得して話を進めてるな。
 この町の両雄ともいえる名家の息子さん達なので、幼いころから親しくしているようだ。
 ゲームでは攻略対象の女の子絡みか主人公との友情ルートでしか出現しなかったから、彼らの交友関係はよくわからない。前世の友のかけ算は妄想200%です。赤城君との友情ルートで運動のパラメータを上げられることは知っている。彼とは夏休みに山へキャンプに行くんだよなあ。ミニゲームで川魚を釣ると運動が上がるのは、カブトムシとクワガタで学力が上がるよりは自然?

 それはともかく、私はふたりの会話に割り込んだ。
 前世の友達がいたら、推しカプの会話を邪魔すんじゃねぇ! って視線で殺されてるな。

「いやいやいや、お金ないんですってば」
「女の子に払わせるわけないじゃないか」
「天光、なんで丁寧語なんだ? 蒼吾だけと話してるときは普通だろ?」

 若様にタメ口利けるかよ!
 ロリ巨乳教師ルートでの若様は主人公が本気なら応援するというスタンスだったけど、主人公がほかの攻略対象にも手を出していることに気づいたら、赤城家に代々仕える忍者差し向けてお仕置きさせたじゃん。画面真っ暗になって主人公の苦痛の声だけ流れてたじゃん!
 しかもそのイベントの後はロリ巨乳教師以外の好感度が一気に落ちるんだよね。初めて桜山さんを攻略出来そうだったプレイでそれやられて、滅茶苦茶凹んだわ。セーブ地点がもうイベント発生確定のときだったし。

 複数攻略してた私が悪いといえば悪いのだけど、桜山さん一筋だとパラメータ条件が満たせないんだよ。
 パラメータ上げのためにライバルとの友情ルートに入ると、そのライバルが狙ってた攻略対象とも仲良くなっちゃうんだよなあ。
 でも友情ルートを進めるとライバルにNTRネトラレることはなくなるから、気づいてからは毎回葵君との友情ルートを進めてた。そうはいっても、ちょっとしたきっかけで友情ルート外れて、桜山さんが監禁されたこともあったっけ。

 ──坊ちゃんふたりに押し切られて、私と桜山さんはオーガニック系のお店で大きなハンバーガーを食べた。美味しかった。奢りだった。
 それはいいとして、赤城君を紅太郎君、葵君を蒼吾君と呼ぶことになったのはなんとか取り消せないものだろうか。ゲームの男性主人公は苗字呼び捨てだったよね?
 桜山さんのことも沙姫ちゃんと呼ぶことになったが、それはいい。前世でも画面の向こうでそう呼んでたからね。
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