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13-A 紅太郎君の告白②
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勉強会の休憩時間に出たのは牛乳寒天だったけど、夕食後のデザートはどら焼きだった。
美味しかった。一緒に出してもらった冷たい緑茶も喉に心地良い。
夕食の皿もすべて片付けられ、少し開いた襖の向こうも暗くなってきた。そろそろ帰ろうかな。人の家に来ておいて、人の家の車で送ってもらうってなんか失礼極まりない気もするが、エロゲ世界だから仕方がない。
「……世莉」
「ああ、うん。そろそろ帰るねー」
「ちょっと待て。話がある」
「話?」
紅太郎君は眉間に皺を寄せ、私から目を逸らした。
ふたりの間にローテーブルはない。どら焼きはテーブルの端に載せて、その横に座っておしゃべりしながら食べていたのだ。
「……この前、俺も桜山もいないのに蒼吾のマンションへ行ったそうだな」
「うん。学園にある裏庭自販機のランダムボタンで出るジュースを交換してもらったの」
「裏庭自販機?」
「そう。私は蒼吾君お目当ての炭酸ばっかり出るし、蒼吾君は私が欲しいお茶ばっかり出てたから」
そういうことにすることになった。
「なんだ、それは。お茶が欲しいならお茶を買えばいいだろう」
「ランダムボタンで出てくるのは特別なんだよー」
購買でランダムに買えるパンにはサキュバスジュースのようなハズレはないのだが、毎日お弁当をみっつももらってるから買いに行く理由がないのだ。買っても食べきれないし。
夏休みに入ったら買いに行こうかな。
紅太郎君の眉間の皺が深くなり、不機嫌そうな顔になる。
「お茶……お茶か。くそっ。俺はあのランダムボタンではジンジャーエールしか出ないぞ!」
やっぱり出てくるものが偏っているらしい。
蒼吾君は夏休み前に学園に働きかけて、あの自販機で購入した経験とランダムボタンで購入できた商品を確認するアンケートを実施すると言っていた。
赤城邸へ来る途中のリムジンの中で聞いたら、沙姫ちゃんはお茶(学力)とジンジャーエール(運動)とミックスジュース(魅力)が均等に出るって言ってた。もちろんサキュバスジュースが出たことはないという。
「世莉は炭酸が嫌いなのか?」
「ジンジャーエールは好きだよ。でも私に当たるのは、ちょっと特殊なヤツばっかりでね」
媚薬ですよ、媚薬。
私が媚薬だと告げたときの蒼吾君の呆れた顔が忘れられません。
本当にアレ飲んだらどうなるんだろう。……飲まないけど。
「じゃあ今度からは俺のジンジャーエールと交換すればいい」
「いや、もうランダムボタンでは買わないから」
「そうか……」
紅太郎君は、しゅーんと項垂れた。
アレキサンダーだったら、耳と尻尾が垂れているだろう。
「まあいい。では世莉、お前は蒼吾とデキているわけではないんだな?」
「ないない」
キリッとした表情で顔を上げた紅太郎君に見つめられて、私は苦笑した。
私と蒼吾君とかないわー。なんでそんなこと聞いてくるんだろう。
……ハッ! もしかして前世の友が言っていたかけ算?
「良かった」
「ぴゃ?」
変な声が出てしまったのは、紅太郎君に抱き寄せられたからだ。
低い声が耳元で言う。
「好きだ、世莉。……俺と結婚してくれ」
「け、結婚?」
「嫌か?」
「嫌というか……私達、会ってからまだ二週間も経ってないよね?」
「再会してからは二週間経ってないが、アレキサンダーを介して出会ってからは十年以上過ぎている」
小学校入学前だった私達も十八歳以上になってるしねえ。
「俺はお前が好きだし、お前の裸の胸を見た責任も取りたい!」
「え、ちょ、裸の胸っていつ?」
「謝罪に行ってアレキサンダーを処分するかもしれないと言ったとき、噛まれた痕も残っていないと叫んで着ていたワンピースを脱ぎ捨てたではないか」
あー、うー、思い出してきた。
蒼吾君や沙姫ちゃんに男の子だと思われていたように、公園でアレキサンダーに抱き着いたときはパンツルックだったんだ、私。でも紅太郎君が家まで謝罪に来てくれたときはワンピースだった。
アレキサンダーは甘噛みだったから痕なんか残っていないと証明しようとして玄関でワンピースを脱いだ私は、それから何度もおばあちゃんに言われたっけ。服はお風呂場と寝室でしか脱いじゃいけないよ、って。
「こ、子どもが子どもの前で服を脱いだからって、そんな……」
私が言うと、紅太郎君は真っ赤になった。
ちなみにまだ抱き寄せられたままなので、見えているのは太い首と短く刈った真っ赤な髪から覗いている耳だけだ。
「確かに子どもだったが、俺はあのとき欲情した。それまでは女装していることになんの疑問も抱いていなかったけれど、あれから自分が男だということを意識するようになった。筋トレに打ち込むようになったのも、目を閉じれば浮かんでくるお前の裸を打ち消すためだ」
うわーお。
「ずっと墨羽に見守らせていたが、いつほかの男に取られるかと不安でならなかった。お前がスマホゲームでフレンド登録して、キャンペーンのたびにパーティを組んでいた前のところでの男友達どもを何度始末しようかと思ったことか……」
「いや、ただのゲーム仲間で、って、墨羽さんに見守らせ? え? 私、ずっと忍者に監視されてたの?」
「監視ではない、見守らせていたんだ」
「え、いや……えー?」
なんだこれ。
蒼吾君を監禁男にしないよう頑張って来たけど、もっと激しいストーカーがここにいたよ? しかも対象が私だよ?
え、え、どうしよう。どうしたらいいの? とりあえず、紅太郎君の太くて力強い腕から逃げられないよ?
美味しかった。一緒に出してもらった冷たい緑茶も喉に心地良い。
夕食の皿もすべて片付けられ、少し開いた襖の向こうも暗くなってきた。そろそろ帰ろうかな。人の家に来ておいて、人の家の車で送ってもらうってなんか失礼極まりない気もするが、エロゲ世界だから仕方がない。
「……世莉」
「ああ、うん。そろそろ帰るねー」
「ちょっと待て。話がある」
「話?」
紅太郎君は眉間に皺を寄せ、私から目を逸らした。
ふたりの間にローテーブルはない。どら焼きはテーブルの端に載せて、その横に座っておしゃべりしながら食べていたのだ。
「……この前、俺も桜山もいないのに蒼吾のマンションへ行ったそうだな」
「うん。学園にある裏庭自販機のランダムボタンで出るジュースを交換してもらったの」
「裏庭自販機?」
「そう。私は蒼吾君お目当ての炭酸ばっかり出るし、蒼吾君は私が欲しいお茶ばっかり出てたから」
そういうことにすることになった。
「なんだ、それは。お茶が欲しいならお茶を買えばいいだろう」
「ランダムボタンで出てくるのは特別なんだよー」
購買でランダムに買えるパンにはサキュバスジュースのようなハズレはないのだが、毎日お弁当をみっつももらってるから買いに行く理由がないのだ。買っても食べきれないし。
夏休みに入ったら買いに行こうかな。
紅太郎君の眉間の皺が深くなり、不機嫌そうな顔になる。
「お茶……お茶か。くそっ。俺はあのランダムボタンではジンジャーエールしか出ないぞ!」
やっぱり出てくるものが偏っているらしい。
蒼吾君は夏休み前に学園に働きかけて、あの自販機で購入した経験とランダムボタンで購入できた商品を確認するアンケートを実施すると言っていた。
赤城邸へ来る途中のリムジンの中で聞いたら、沙姫ちゃんはお茶(学力)とジンジャーエール(運動)とミックスジュース(魅力)が均等に出るって言ってた。もちろんサキュバスジュースが出たことはないという。
「世莉は炭酸が嫌いなのか?」
「ジンジャーエールは好きだよ。でも私に当たるのは、ちょっと特殊なヤツばっかりでね」
媚薬ですよ、媚薬。
私が媚薬だと告げたときの蒼吾君の呆れた顔が忘れられません。
本当にアレ飲んだらどうなるんだろう。……飲まないけど。
「じゃあ今度からは俺のジンジャーエールと交換すればいい」
「いや、もうランダムボタンでは買わないから」
「そうか……」
紅太郎君は、しゅーんと項垂れた。
アレキサンダーだったら、耳と尻尾が垂れているだろう。
「まあいい。では世莉、お前は蒼吾とデキているわけではないんだな?」
「ないない」
キリッとした表情で顔を上げた紅太郎君に見つめられて、私は苦笑した。
私と蒼吾君とかないわー。なんでそんなこと聞いてくるんだろう。
……ハッ! もしかして前世の友が言っていたかけ算?
「良かった」
「ぴゃ?」
変な声が出てしまったのは、紅太郎君に抱き寄せられたからだ。
低い声が耳元で言う。
「好きだ、世莉。……俺と結婚してくれ」
「け、結婚?」
「嫌か?」
「嫌というか……私達、会ってからまだ二週間も経ってないよね?」
「再会してからは二週間経ってないが、アレキサンダーを介して出会ってからは十年以上過ぎている」
小学校入学前だった私達も十八歳以上になってるしねえ。
「俺はお前が好きだし、お前の裸の胸を見た責任も取りたい!」
「え、ちょ、裸の胸っていつ?」
「謝罪に行ってアレキサンダーを処分するかもしれないと言ったとき、噛まれた痕も残っていないと叫んで着ていたワンピースを脱ぎ捨てたではないか」
あー、うー、思い出してきた。
蒼吾君や沙姫ちゃんに男の子だと思われていたように、公園でアレキサンダーに抱き着いたときはパンツルックだったんだ、私。でも紅太郎君が家まで謝罪に来てくれたときはワンピースだった。
アレキサンダーは甘噛みだったから痕なんか残っていないと証明しようとして玄関でワンピースを脱いだ私は、それから何度もおばあちゃんに言われたっけ。服はお風呂場と寝室でしか脱いじゃいけないよ、って。
「こ、子どもが子どもの前で服を脱いだからって、そんな……」
私が言うと、紅太郎君は真っ赤になった。
ちなみにまだ抱き寄せられたままなので、見えているのは太い首と短く刈った真っ赤な髪から覗いている耳だけだ。
「確かに子どもだったが、俺はあのとき欲情した。それまでは女装していることになんの疑問も抱いていなかったけれど、あれから自分が男だということを意識するようになった。筋トレに打ち込むようになったのも、目を閉じれば浮かんでくるお前の裸を打ち消すためだ」
うわーお。
「ずっと墨羽に見守らせていたが、いつほかの男に取られるかと不安でならなかった。お前がスマホゲームでフレンド登録して、キャンペーンのたびにパーティを組んでいた前のところでの男友達どもを何度始末しようかと思ったことか……」
「いや、ただのゲーム仲間で、って、墨羽さんに見守らせ? え? 私、ずっと忍者に監視されてたの?」
「監視ではない、見守らせていたんだ」
「え、いや……えー?」
なんだこれ。
蒼吾君を監禁男にしないよう頑張って来たけど、もっと激しいストーカーがここにいたよ? しかも対象が私だよ?
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