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第一部
魔物の森の聖女①
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なんで魔王の魔力が…まさか近くにいたのだろうか。
なんでこんなところにいるの。
…なんでわたしを助けてくれたんだろう。
「リンカ、大丈夫かい? ポーションもう一本飲むかい?」
呆然としていたわたしを心配そうにウィルがのぞきこんでいた。
周りになんの気配もなく安全だと判断したウィルはすぐさまわたしを治療すべく、怪我の治療薬のポーションを取り出した。
そしてわたしの口元に瓶の飲み口を当て少しずつ飲ませてくれた。
飲み干してすぐ回復したので起き上がろうとしたわたしに「もっと安静にしていて」「木に寄りかかって休むかい? 抱えて運ぼう」とかやたらと世話を焼こうとするのを丁重にお断りした。
とりあえずわからないことは考えてもしょうがない。
切り替えてまずは目の前の問題から片付けよう。
「ウィル、大丈夫だから落ち着いて」
「しかし、君は頭を打ったし心配だよ。本当になんともないのかい?」
「うん、本当に大丈夫。それよりあの魔物、オルトロスだよね。
なんであんな強力な魔物が魔王の支配地域じゃないところにいるんだろう」
「そうだね、おかしなことだ。この辺りは瘴気は少ないから強力な魔物は存在しないはず。どうなっているのか少し調べたい」
世話焼きから注意をうつし、彼はオルトロスの遺体があった場所に近づいていった。
その姿をぼんやりと追っていると彼は足を止め、しゃがんでなにかをじっと見ている。
「どうしたの?」
「これは…精霊昌の残骸。そうか、オルトロスはこれが原因か」
「え?」
確認するとよく占い師がもっている球状の水晶玉…の一部欠けたものがあった。
三分のニくらいしかない。
「精霊昌って何? 水晶球じゃないの?」
「精霊昌は精霊から発せられる精霊力が長い年月をかけて結晶化したものだよ。精霊がたくさん住む土地に産み出される」
「へえ」
精霊もこの世界いたのか。聖女講座では説明なかったな。
浅く狭い内容しか叩き込まれず送り出されたからか。
「精霊昌は瘴気を寄せ付けないため清廉な環境を維持できるから神聖な神々を祀る祭壇や神殿を守るため精霊昌はよく置かれる」
「じゃあこの精霊昌は祭壇にあったものなんだ」
「おそらくは。古い神々の祭壇は人々に忘れ去られて森の中に放置されていることは珍しくないからそういう代物かもね」
現在この世界の神様一番人気は『創造神アウレリア』様。
そういえば他の神様は信仰が廃れて力を失くしてしまった、と講義を受けた気がする。
ここで祀られてた神様もそうした一柱なんだろう。
この世界、信心深いものだと思ってたのに意外だなと思って覚えていた。
「ただし、精霊昌の内包するその精霊力は時間経過や、内包した力を使い切ればなくなってしまう。そうするとただの透明な石、昌石になる。そして昌石はビビ割れたり欠けたりして壊れると機能が変わる」
「変わる? どうなるの?」
「こんどは周囲にある精霊力や魔力などの力を吸収して溜め込んでしまう。これは瘴気を取り込んだんだろう。この辺りは瘴気は薄いけれど長い年月をかけて溜め込んだ。そして瘴気を宿しているものを飲み込むと生き物はそれから瘴気を取り込んでしまう。弱い動物、たとえネズミだろうと強力な魔物に変化する。あくまでも僕の推測だけれどそんなところだろう」
危険物だ。
凶悪な誤飲事故だ。
そんなものほったらかしにしてないで回収しろ。
なんでこんなところにいるの。
…なんでわたしを助けてくれたんだろう。
「リンカ、大丈夫かい? ポーションもう一本飲むかい?」
呆然としていたわたしを心配そうにウィルがのぞきこんでいた。
周りになんの気配もなく安全だと判断したウィルはすぐさまわたしを治療すべく、怪我の治療薬のポーションを取り出した。
そしてわたしの口元に瓶の飲み口を当て少しずつ飲ませてくれた。
飲み干してすぐ回復したので起き上がろうとしたわたしに「もっと安静にしていて」「木に寄りかかって休むかい? 抱えて運ぼう」とかやたらと世話を焼こうとするのを丁重にお断りした。
とりあえずわからないことは考えてもしょうがない。
切り替えてまずは目の前の問題から片付けよう。
「ウィル、大丈夫だから落ち着いて」
「しかし、君は頭を打ったし心配だよ。本当になんともないのかい?」
「うん、本当に大丈夫。それよりあの魔物、オルトロスだよね。
なんであんな強力な魔物が魔王の支配地域じゃないところにいるんだろう」
「そうだね、おかしなことだ。この辺りは瘴気は少ないから強力な魔物は存在しないはず。どうなっているのか少し調べたい」
世話焼きから注意をうつし、彼はオルトロスの遺体があった場所に近づいていった。
その姿をぼんやりと追っていると彼は足を止め、しゃがんでなにかをじっと見ている。
「どうしたの?」
「これは…精霊昌の残骸。そうか、オルトロスはこれが原因か」
「え?」
確認するとよく占い師がもっている球状の水晶玉…の一部欠けたものがあった。
三分のニくらいしかない。
「精霊昌って何? 水晶球じゃないの?」
「精霊昌は精霊から発せられる精霊力が長い年月をかけて結晶化したものだよ。精霊がたくさん住む土地に産み出される」
「へえ」
精霊もこの世界いたのか。聖女講座では説明なかったな。
浅く狭い内容しか叩き込まれず送り出されたからか。
「精霊昌は瘴気を寄せ付けないため清廉な環境を維持できるから神聖な神々を祀る祭壇や神殿を守るため精霊昌はよく置かれる」
「じゃあこの精霊昌は祭壇にあったものなんだ」
「おそらくは。古い神々の祭壇は人々に忘れ去られて森の中に放置されていることは珍しくないからそういう代物かもね」
現在この世界の神様一番人気は『創造神アウレリア』様。
そういえば他の神様は信仰が廃れて力を失くしてしまった、と講義を受けた気がする。
ここで祀られてた神様もそうした一柱なんだろう。
この世界、信心深いものだと思ってたのに意外だなと思って覚えていた。
「ただし、精霊昌の内包するその精霊力は時間経過や、内包した力を使い切ればなくなってしまう。そうするとただの透明な石、昌石になる。そして昌石はビビ割れたり欠けたりして壊れると機能が変わる」
「変わる? どうなるの?」
「こんどは周囲にある精霊力や魔力などの力を吸収して溜め込んでしまう。これは瘴気を取り込んだんだろう。この辺りは瘴気は薄いけれど長い年月をかけて溜め込んだ。そして瘴気を宿しているものを飲み込むと生き物はそれから瘴気を取り込んでしまう。弱い動物、たとえネズミだろうと強力な魔物に変化する。あくまでも僕の推測だけれどそんなところだろう」
危険物だ。
凶悪な誤飲事故だ。
そんなものほったらかしにしてないで回収しろ。
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