魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第一部

襲撃①

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 魔王は1000年生きてて不死身?
 勇者にも聖女にも倒せないなんて、なんて絶望的なラスボスだろう。


「…体が消滅しても復活できるの?」

「そうだ。200年程度で復活しそれをまた勇者一行で倒す、それの一連のことを1000年繰り返している」

「そんな…」


 終わりがない戦いじゃない…
 あの死にものぐるいで戦い抜いた勇者パーティでの旅、あれは無駄だったのか。
 あんなにがんばったのに。わたしも。ウィルも。


「しかし無駄ではない。魔王討伐に意味はある。それが世界を守ることになっている。そしてそれができるのは勇者と、聖女のお前だけだリンカ」

「世界を守る…?」

「そうだ。そしてお前とならば守るよりもさらに上、この世界を救うことさえできる。俺はそう確信している」

「救う? どういうこと?」

「…この世界は滅びへと向かっている。このままでは100年保たないだろう」

 
 …世界が滅びるなんて現実感が湧かない。
 あと100年足らずで? 本当に?


「1000年前、世界を未曾有の危機が襲った。それは世界を滅ぼそうとした邪神が人類の大虐殺を行い、大地を瘴気まみれにし始めたからだ。しかし、初代勇者がその邪神を封印し危機は去った」


 初代勇者。
 たしかウィルの祖先で、エルグラン王国を作った初代国王だったはず。


「だが近々、1000年前に俺に封印した邪神が完全復活する。その邪神が世界を滅ぼすだろう」


 …どうしてそんなものがあなたに封印されてるの。
 魔王は勇者の敵なんでしょう?
 なのにその立ち位置はーー協力者みたいだ。


「…あなたは何者なの? リュシオン」

「それはーーー話の続きは迷惑極まりない客を叩っ斬ってからだ」


 急にリュシオンがわたしの腕を引いて立たせた。
 自分を盾にするようにわたしを背中側に誘導すると抜剣した。

 窓ガラスを突き破り無数の矢が飛んできたがリュシオンは剣で全て切り落とした。


「敵襲だ!!」


 リュシオンが大声で襲撃を知らせれば廊下に通じる両開きの扉が蹴破られウィルとフェルが飛び込んできた。
 駆けつけるのが早すぎる。
 まさか扉のすぐ外にいて聞き耳でも立てていたのだろうか。

 すると窓から今度は氷の矢が飛んできた。


「アイスウォール!」


 フェルが魔法を使いわたしたちを氷の矢から守るように氷の壁を出現させた。
 向こうが透けて見え氷の矢が氷の壁に突き刺さりひびを入れていく様がはっきり捉えられた。
 そして窓から室内に侵入してきた顔を布で隠した複数の襲撃者の姿も。

 氷の壁が砕け落ちて行くなか、ソファーセットにあったローテーブルをリュシオンは敵に向かって宙に蹴り飛ばし当たった二人を足止めした。


「あの重いの蹴りやがったっ」


 テーブルを蹴っ飛ばす光景に引きながらも襲撃者の手に握られたナイフをフェルは自らの剣でなんとか応戦している。
 だけど相手は戦いのプロ、しかも様子から見て暗殺者。実力差があるだろう、荷が重そうだ。
 そこへウィルがカバーに入り一人切り伏せた。


 その間にリュシオンはテーブルで動きを鈍らせた二人を剣で仕留めていた。
 わたしはなにもできずずっとリュシオンに背後に守られていた。
 さらに侵入してきた二人を一人をウィルが、もう一人をリュシオンが素早く切り捨てた。
 ウィルとリュシオンは視線を無言で交わしていたけれど今度は廊下が騒がしい。
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