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第一部
魔王の誕生②
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嘘で嘘を塗り固めて、本当の歴史を、世界を救った英雄を歴史の闇に葬った。
みんな呆然とした顔をしていた。
あまりのことに事態をすんなりと受け入れられない。
「…しかし想定外のことが起きました」
話はなおも続く。
この上まだ何かあったのか。
教皇は地下洞窟の暗い空を仰ぎ見た。
「邪神を封印し世界は救われました。しかしその平和はたった200年で終わりを告げました。… 『女神エールヒルデ』の施した封印が損傷し邪神が復活しそうになったのです」
「たった200年で…」
「なんでだ…女神が命をかけた封印だろう?」
ウィルとフェルが問いかける。
「邪神自身の放つ瘴気があまりに強く、封印の内側から蝕んでいたのです。このままでは邪神が復活してしまう。勇者一族はすぐに気づきました。異世界の神もまた『聖女』を遣わしてくださった。協力してくれる仲間も集まりました。かくして『魔王討伐』が行われました」
「待ってください! なぜ『魔王討伐』なのですか。それは作り話だったのでしょう。実際は『邪神の復活阻止』ではないですか!」
嘘の歴史をまた重ねた行いにウィルは悲鳴を上げるように非難した。
「人々は嘘の歴史を信じきっていました。聖教会は『魔王が復活した』と公表しました。人々に邪神の話を勇者一族が説明しても信じてはもらえず、聖教会に訂正を願っても聞き入れられはしませんでした。勇者は表向き魔王討伐として行動することになってしまいました」
「…リュシオン本人はどうしたのです。封印が解けかけて意識はあったのでしょう?」
「かの御方は意識が戻り体も自由に動かせるようになっておられました。身の内に邪神を留めたまま封印の地にて勇者一行を待っていた。しかして勇者一行が『魔王討伐に来た』。…かの御方は事態を察したのです。『自分が魔王だ。世界を救いたければ自分の心臓を剣で貫き殺すがいい』と、そう自ら魔王を名乗り胸に剣を受けたそうです。そうして弱体化した邪神ごと再びリュシオン様は女神の残した封印の影響を受け眠りにつきました」
それは初代勇者アーサーが親友ごと邪神を封印した手順と同じ。
封印は勇者と聖女の力で邪神を弱体化させなければ成功しなかった。
その状況さえ再現できればいいと、そのためにとった芝居。
魔王に仕立て上げられて歴史の闇に葬られた英雄。
彼は事態を察し感情全てを飲み込み、邪神の復活阻止のために動いた。
「壊れかけた封印はまだ効力が残っていたので再封印はできました。しかし『女神エールヒルデ』の壊れかけた封印の修復はできませんでした。人間には手のつけられない高度な魔法陣だったのです。だから邪神を弱体化させるため、器であるお方ごと討つ。そして再び邪神の力が回復して目覚めるまでの間だけでも平和を享受する。そう延命措置をとり、目覚めるたびに魔王討伐を繰り返し、それが現在まで続いています」
それが『魔王討伐』の真実。
「しかし…」
「ウインドブレード」
「伏せろ!」
静かな術の詠唱が洞窟内に響き、わたしの頭を手のひらで抑えつけたたリュシオンの声に全員地に身を伏せた。
風が強く吹きぬけて髪が乱される。
洞窟の壁に風魔法が大きな音を立ててぶつかり、硬い岩石が落下する音がした。
「そして、修復されなかった封印は徐々に崩壊が進み続け近々完全に壊れる。その時『創造神ゲオルギウス』様は復活される。我らの真の神が1000年の悲願を叶え世界を滅ぼすのだ」
みんな呆然とした顔をしていた。
あまりのことに事態をすんなりと受け入れられない。
「…しかし想定外のことが起きました」
話はなおも続く。
この上まだ何かあったのか。
教皇は地下洞窟の暗い空を仰ぎ見た。
「邪神を封印し世界は救われました。しかしその平和はたった200年で終わりを告げました。… 『女神エールヒルデ』の施した封印が損傷し邪神が復活しそうになったのです」
「たった200年で…」
「なんでだ…女神が命をかけた封印だろう?」
ウィルとフェルが問いかける。
「邪神自身の放つ瘴気があまりに強く、封印の内側から蝕んでいたのです。このままでは邪神が復活してしまう。勇者一族はすぐに気づきました。異世界の神もまた『聖女』を遣わしてくださった。協力してくれる仲間も集まりました。かくして『魔王討伐』が行われました」
「待ってください! なぜ『魔王討伐』なのですか。それは作り話だったのでしょう。実際は『邪神の復活阻止』ではないですか!」
嘘の歴史をまた重ねた行いにウィルは悲鳴を上げるように非難した。
「人々は嘘の歴史を信じきっていました。聖教会は『魔王が復活した』と公表しました。人々に邪神の話を勇者一族が説明しても信じてはもらえず、聖教会に訂正を願っても聞き入れられはしませんでした。勇者は表向き魔王討伐として行動することになってしまいました」
「…リュシオン本人はどうしたのです。封印が解けかけて意識はあったのでしょう?」
「かの御方は意識が戻り体も自由に動かせるようになっておられました。身の内に邪神を留めたまま封印の地にて勇者一行を待っていた。しかして勇者一行が『魔王討伐に来た』。…かの御方は事態を察したのです。『自分が魔王だ。世界を救いたければ自分の心臓を剣で貫き殺すがいい』と、そう自ら魔王を名乗り胸に剣を受けたそうです。そうして弱体化した邪神ごと再びリュシオン様は女神の残した封印の影響を受け眠りにつきました」
それは初代勇者アーサーが親友ごと邪神を封印した手順と同じ。
封印は勇者と聖女の力で邪神を弱体化させなければ成功しなかった。
その状況さえ再現できればいいと、そのためにとった芝居。
魔王に仕立て上げられて歴史の闇に葬られた英雄。
彼は事態を察し感情全てを飲み込み、邪神の復活阻止のために動いた。
「壊れかけた封印はまだ効力が残っていたので再封印はできました。しかし『女神エールヒルデ』の壊れかけた封印の修復はできませんでした。人間には手のつけられない高度な魔法陣だったのです。だから邪神を弱体化させるため、器であるお方ごと討つ。そして再び邪神の力が回復して目覚めるまでの間だけでも平和を享受する。そう延命措置をとり、目覚めるたびに魔王討伐を繰り返し、それが現在まで続いています」
それが『魔王討伐』の真実。
「しかし…」
「ウインドブレード」
「伏せろ!」
静かな術の詠唱が洞窟内に響き、わたしの頭を手のひらで抑えつけたたリュシオンの声に全員地に身を伏せた。
風が強く吹きぬけて髪が乱される。
洞窟の壁に風魔法が大きな音を立ててぶつかり、硬い岩石が落下する音がした。
「そして、修復されなかった封印は徐々に崩壊が進み続け近々完全に壊れる。その時『創造神ゲオルギウス』様は復活される。我らの真の神が1000年の悲願を叶え世界を滅ぼすのだ」
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