魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

教会の住人①

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「ありがとう、みんなが来てくれたおかげで楽しく過ごせたよ」
「ううん、わたしもリンカ様とお話しできて楽しかったです。また来てお話ししてもいいですか…?」
「もちろん! 次はアルマの普段のお仕事の話とかお休みの日に何をしているのか聞きたいな」
「お休みの日は、ないよ?」
「え!? 魔王配下ってブラック!」
「はい、職場である魔王城は黒いですが…?」
「ブラック企業とか労働基準法の概念がそもそもないのか…」

長々と付き合ってもらったけれど彼らにもやることがあるだろうと、第一回家庭菜園会議はお開きになった。
アルマが扉を開け、ジョゼフィーヌが回収した食器を載せたワゴンを押してペコリと礼をして部屋から出て行く。

「お夕食は食堂でとるようにと。それまでは聖女の力を使わなければ自由に城内を散策してよいそうです」
「いいの?」
「はい。昨日から大量に魔力を消費しているので、しばらく体調の変化がないか見ているように魔王様から仰せつかっていました。アルマとジョゼフィーヌは知りません。そして僕の判断は『異常なし』です。異常なしならそう伝えるよう指示を受けています。ではこれにて失礼します」
「あ、ど、どうも」

ゼルマが出ていき部屋に一人になりぼーっとした。
まさかお昼を持ってきてからずっと観察されてたとは思わなかった。
あの子は細かいことに気がつきそうだし人選はピッタリだろう。アルマには和ませられてリラックスしたし、ジョゼフィーヌと接してうれしくて意識が向いていたから観察しやすい状況だったのではないだろうか。それをあえて作っていたのかと思うと頭いいなと感心した。
それにしても、そんな指示を出したとは気配りのできる魔王様だ。

とりあえず許可が出たから散歩しよう。
そう思いベッドから降りようとしたわたしの視界に黒いものが過ぎる。
顔を向けるとコウモリが何匹も窓の外を飛んでいた。昼間からコウモリなんて珍しいと目で追いかけると、居館の陰にある教会に向かっている。今やご飯のお知らせ用になっている鐘がある建物だ。寝ぐらにしているのだろうか? 行ったことがなかったのでどうせだから行ってみることにした。

城内を一階まで降りていきながら瘴気がなくなっていてどこの空気もすっきりしているのがわかった。
そして所々、廊下の窓際に昌石が置いてあり、魔王が有言実行してくれたのがわかった。また瘴気石を浄化して昌石を量産しておこう。
中庭を横切り目当ての教会にたどり着く。

「しつれいします…」

両開きの扉を片方引いてちょっとだけ開き、中の様子を見た。正面のステンドグラスから淡く光が差し込み、教会内はほどほどに明るかった。コウモリの姿は見えないけれど屋根裏にでもいるのだろうか。
それにしてもステンドグラスがとても綺麗だ。教会だしモチーフは神話なのだろうけれど遠くて描かれている内容は読み取れない。近くで見たくなり教会の中に足を踏み入れた。
両脇に並ぶ長椅子の間に伸びる通路を進みながら周りを見回して気づいた。教会内は意外にも掃除されていて埃がなく、蜘蛛の巣なんかもない。魔王の配下が教会で礼拝なんてしないだろうになぜこんなにいい状態に保たれているのだろう?

ステンドグラス前の祭壇へとたどり着き見上げた。
これはたぶん最高神が神様を生み出している世界創生の場面だろう。それはつまり創造神ゲオルギウス
が描かれているわけで、この魔王城にあるにはあまりに皮肉めいた取り合わせだった。気まずくて視線を下げた祭壇の向こうの床にあった物にわたしはギョッとした。

ひつぎ…? なんでこんなところに」

それは西洋式の黒い棺だった。
よく昔のホラー映画なんかで出てくるーー

「ふふ、またお会いできましたね聖女様。お近づきの印にちょっと噛んで血を飲んでもいいかな?」
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