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第二部
時を止めた城①
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書庫は壁側に天井まで届く高い棚が並び、室内にも棚がたくさん並び、その全てが本で埋め尽くされていた。
本が日の光で痛まないようにするためか、窓は明かり取りとしてだろう小さな天窓があるだけだ。
「ホーリーエリア」
食堂より一回り広い一室を丸ごと浄化すると、棚に収まっていた黒ずんだ本が色とりどりの背表紙に変わった。
ツヴァイが本棚に駆け寄り、次々に本を抜き取り手に取っている。
「ああっ、これはかのグローダーの書! はっ これは魔導学の始祖とされるニールセンの幻の魔導書! 現存していたとは!」
熱意に当てられ引き気味に見ていると、本を山の様に抱えて書庫の一角にあるテーブルに陣取り、一心不乱に読み始めた。
見ていた棚は魔導書の棚だったから、きっかけとなった卵(仮)の文献とは到底思えない。趣味に走っただけなんじゃ…
「あいつはほっとけ。そのうち書庫内の本をすべて読み漁るだろう。その中にその妙な物の情報があれば儲け物だ」
魔王ははじめから書庫で調べ物が見つかるとは思っていなかったようだ。いわく、「あんな人外らしき奴が渡してくるようなものが、人間の書物に記載されているとは思えない」からだそう。
確かに、と納得した。
「ツヴァイは何を研究しているの?」
「魔導に関する全てのことだな。人の身でどれだけのことができるのか限界を知りたいらしい」
本人とっくに人間やめているけどそれはいいのだろうか。
「自身もまた人から魔族になった興味深い研究対象らしい。魔族になっていく過程も日記や血液検査などして詳細に自らのデータをとっていたらしく、できれば自分を解剖してみたいらしい」
マッドサイエンティストだった。
どうかそのうち同僚の四天王や上司を解剖しないことを祈る。
その同僚のガエルはツヴァイにテーブルに引っ張って行かれて新たな本の山を押し付けられしょぼくれた顔をしている。
「とっとと退散するとしよう」
魔王に腕を掴まれ回れ右して入ってきた扉へと向かう。廊下に続く扉をくぐる際に「俺様は本を読むと気絶する体質なので見逃してくれ」という生贄の声を聞いたが振り切った。
ガエル、強く生きろ。わたしと魔王は連れ立って静かにその場を離れた。
「ツヴァイ、夢中になってたね」
「1000年前の蔵書だからな。今では手に入らない物もあり貴重なのだろうよ」
そうか、1000年前に邪神とともにこの城は封印されて時を止めていたわけか。日本でいうところの平安時代。それは貴重だろう。
1000年か……長いな。それだけの年月が経てばだいぶいろいろ変わっただろう。
隣を歩く魔王を見る。
1000年、ほとんどの時間を封印されて眠って過ごしてきて、時代が移り変わって、人だった頃の昔の知り合いも死んでしまっている。彼はさみしかったりしないのだろうか。
わたしはほんの半年、元の世界から離れただけでさみしかったり懐かしかったりしている。
平和な向こうの生活に戻りたいとも思っている。
…まぁ、わたしを待っていてくれる人も、居なくなって悲しんでくれる人もいないのだけど。
するとこちらを見ていた魔王が口を開いた。
「リンカ、どうした? 具合が悪いのか。顔色が良くない」
優しい言葉に沈んだ気持ちが浮上する。
ああ、いけない、心配をかけてしまった。
なるべく自然に見える笑顔を心がけて作った。
「ううん、なんでもない」
本が日の光で痛まないようにするためか、窓は明かり取りとしてだろう小さな天窓があるだけだ。
「ホーリーエリア」
食堂より一回り広い一室を丸ごと浄化すると、棚に収まっていた黒ずんだ本が色とりどりの背表紙に変わった。
ツヴァイが本棚に駆け寄り、次々に本を抜き取り手に取っている。
「ああっ、これはかのグローダーの書! はっ これは魔導学の始祖とされるニールセンの幻の魔導書! 現存していたとは!」
熱意に当てられ引き気味に見ていると、本を山の様に抱えて書庫の一角にあるテーブルに陣取り、一心不乱に読み始めた。
見ていた棚は魔導書の棚だったから、きっかけとなった卵(仮)の文献とは到底思えない。趣味に走っただけなんじゃ…
「あいつはほっとけ。そのうち書庫内の本をすべて読み漁るだろう。その中にその妙な物の情報があれば儲け物だ」
魔王ははじめから書庫で調べ物が見つかるとは思っていなかったようだ。いわく、「あんな人外らしき奴が渡してくるようなものが、人間の書物に記載されているとは思えない」からだそう。
確かに、と納得した。
「ツヴァイは何を研究しているの?」
「魔導に関する全てのことだな。人の身でどれだけのことができるのか限界を知りたいらしい」
本人とっくに人間やめているけどそれはいいのだろうか。
「自身もまた人から魔族になった興味深い研究対象らしい。魔族になっていく過程も日記や血液検査などして詳細に自らのデータをとっていたらしく、できれば自分を解剖してみたいらしい」
マッドサイエンティストだった。
どうかそのうち同僚の四天王や上司を解剖しないことを祈る。
その同僚のガエルはツヴァイにテーブルに引っ張って行かれて新たな本の山を押し付けられしょぼくれた顔をしている。
「とっとと退散するとしよう」
魔王に腕を掴まれ回れ右して入ってきた扉へと向かう。廊下に続く扉をくぐる際に「俺様は本を読むと気絶する体質なので見逃してくれ」という生贄の声を聞いたが振り切った。
ガエル、強く生きろ。わたしと魔王は連れ立って静かにその場を離れた。
「ツヴァイ、夢中になってたね」
「1000年前の蔵書だからな。今では手に入らない物もあり貴重なのだろうよ」
そうか、1000年前に邪神とともにこの城は封印されて時を止めていたわけか。日本でいうところの平安時代。それは貴重だろう。
1000年か……長いな。それだけの年月が経てばだいぶいろいろ変わっただろう。
隣を歩く魔王を見る。
1000年、ほとんどの時間を封印されて眠って過ごしてきて、時代が移り変わって、人だった頃の昔の知り合いも死んでしまっている。彼はさみしかったりしないのだろうか。
わたしはほんの半年、元の世界から離れただけでさみしかったり懐かしかったりしている。
平和な向こうの生活に戻りたいとも思っている。
…まぁ、わたしを待っていてくれる人も、居なくなって悲しんでくれる人もいないのだけど。
するとこちらを見ていた魔王が口を開いた。
「リンカ、どうした? 具合が悪いのか。顔色が良くない」
優しい言葉に沈んだ気持ちが浮上する。
ああ、いけない、心配をかけてしまった。
なるべく自然に見える笑顔を心がけて作った。
「ううん、なんでもない」
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