魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

サプライズは時と場合と人による①

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ーー遡ることその日の昼。


「はぁ…」
「ど、どうしたんですかリンカ様?」
「…なにか悩み事でしょうか?」


麦わら帽子を被り腕を捲ったアルマと、いつもどおり布を頭から被ったジョゼフィーヌが屈んだわたしの顔を覗き込んできた。

昨日は一日中あちこちの地脈を見て回ったのでさすがに疲れた。今日は魔王城で一日過ごしてもいいか魔王に聞こうと思って朝に食堂にいくと、向こうから今日は一日城でゆっくりするように言われた。


「体力的に疲れただろうし、一日の終わりに精神的にも疲れただろう。すまないな」


優しい。そしてよくわかっていらっしゃる。
そう、昨日のゲーデの態度に思いの外わたしの心はダメージを受けていたようで、落ち込んでいた。
わたしが悪いわけではないのはホッとしたけれど、あれほどあからさまに避けられるとくるものがある。


「わたしは魔王城のみんなの温かさにすっかり甘えていたんだね…」
「「??」」


二人が揃って首を同じ方向に傾げた。
どうやら伝わらなかったらしい。


「最初、魔王城に住むことにしたけどわたしは結構びくびくしてたんだよ。でもみんなわたしを温かく迎え入れてくれたでしょう? うれしかったし受け入れてもらうことに慣れてきていていつのまにか当たり前みたいに思ってたみたい。今回のことで調子に乗っていたなぁって反省したの」
「それで甘えていた、ですか?」
「うん、みんなの人の良さに甘えていたな、って」


久しぶりに顔を合わせたゼルマも今日は手伝ってくれていた。
わたしたちは今、魔王城の中庭の一角に家庭菜園を作るべく集まっていた。

先日の中庭の浄化後、料理人を中心にして使用人のみんなで家庭菜園に植える野菜について大会議が開かれたそうだ。
アルマとジョゼフィーヌがわたしと育てる野菜について話し合いをした日、使用人たちに何が起きたのかと詰め寄られたらしい。中庭で何か変化があったのはなんとなくわかったらしいけれど、非戦闘員には瘴気の気配がなくなったなんていうのは離れていてはわからなかった。直接近くに行けば魔族の端くれとしてわかるらしく、確認に行った者が「いつの間にか中庭の瘴気がなくなっている」と伝えるとちょっとした騒ぎになったようだ。
そうして詰め寄る使用人たちにとって食われる思いをして怯えながら一連の事を話すと、みな拳を突き上げ歓声を上げ中には泣き出す者もいたそうだ。
「家庭菜園くらいで大袈裟な」と思ったけれど「この生命の誕生しない死の大地に緑が蘇るのだ!」という奇跡の瞬間だったらしい。
そういえば緑1つない土地だったと思い出し、自分の考えの浅さを恥ずかしく思った。
そして彼らは城中にすぐに伝達し、遠く世界中に広がった仲間の魔族たちに念話で一斉に伝達した。

『この地で育つ野菜の種、あるいは苗を人命を賭して推薦せよ!』と。

いや、事が大きくなりすぎである。
城のメンツで、内輪で、試しにいくつか植えてみればいいじゃない。
そう言ったところ「1000年不毛の地で復活の大地での第一作目に選んだ植物がもし万が一枯れでもしたら耐えられない」とのこと。そんなにか。
そんななか選抜された精鋭が今回植える種たちだ。


「リーフレタス、かぶ、ほうれん草。無事に育つといいね」


魔王支配領域は曇りが多くほぼ常に瘴気により日差しが遮られ気温は低めで秋のような気候。
使用人大会議において秋に植える野菜が合っているのではないかとの意見が集まり、比較的育てやすい3種が選ばれた。
手際よくゼルマが土を盛って畝を作り、アルマが小さなスコップで穴を掘り種を植え、ジョゼフィーヌがジョウロで水を撒いた。
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