魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

託された箱を探して②

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その二人のやりとりを後ろから見ていたゲーデはポツリとつぶやいた。


「…二人は心の距離がずいぶん近いのだな」
「そうだね。それに僕には二人が対等な関係に見える」
「対等…」


魔王陛下と聖女がか。
立場も違えば片や1000年世界を守ってきた真の英雄とまだ十数年しか生きていない異世界からきて聖女になり日の浅い二人がか。


「上も下もなく、どちらかが先頭に立ってもう片方が着いていくでもなく、対等に横並びに立っている。とはいえ陛下は守るつもりなのだろうけれど、彼女は守られてばかりは良しとしなそうな芯の強さがある」
「…芯の強さはわかる」
「ふふ、女の子の褒め言葉としてはどうかと思うけれど根性ありそうだよね」
「そうだな…」


過去の幻視で顔を青白くしながらも耐えて魔物化した者たちの解放を成し遂げた姿は聖女というよりは女戦士という言葉が合っていそうなくらいには勇ましかった。いままでにいたかは知らないが女勇者という表現の方がしっくりくるくらいに。
伝え聞いていた今までの聖女とは毛色が違うようだ。そして自分が見てきた人間とも。
ゲーデは聖女の少女を見る自身の目が変わりつつあることを悟りながら自然と彼女を目で追っていくようになっていた。
そしてその聖女を抱えた自らの主君である魔王の歩みが止まった。


「ここだよ」


大きな岩の前で立ち止まり、その場に聖女を下ろすと王が魔法で地面を掘り返し目当てのものを見つけたようだ。
王がこれまた魔法で頑丈そうな金属製の箱を宙に浮かせ取り出した。
大きさは昔ながらの革の学生鞄くらいだ。


「これは魔封箱だな」
「魔封箱ってたしか魔力をもつ物を外に魔力が漏れないように保管する特別な箱だっけ? 聖女教育で習ったよ」
「そうだ。箱を開ける。何が出てくるか分からんから離れていろ」
「はいはーい、リンカちゃんは僕らの後ろにいようね」
「え、鑑定魔法でまず調べたりとかは…」
「この箱は魔法を弾くから無効だ」


ヴラドに背中を押されて距離を取らされると魔王が解除の魔法を唱え蓋が自動で開いた。
幸い危険なことはなかったのでわたしたちは宙に浮かせたままの箱の中を覗き込むと、そこには真っ黒な瘴気石が3つあった。


「どうやらここは瘴気石の製造もやっていたようだな」
「あれだけの瘴気溜まりならいくらでも作れたでしょうね。っとおや、なにか箱の底にあるようだ
ね?」
「…魔法陣?」
「これは転移の魔法陣だ。この魔法陣で瘴気石を何処どこかに送っていたのだろう」
「どこか。あるいは誰かかな?」


誰か。
そこで鉱山で聞いた声がふと頭をよぎった。


『この実験が成功し、最凶の魔物が生み出せたとなれば、様もお慶びになられるだろう。強く濃い瘴気を生み出せるようになればーーー』



「ミコ」
「何?」
「『ミコ様』に送っていたのかもしれない」
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