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第二部
鼻のきく同行者②
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魔王とツヴァイに仮眠を即却下され「若干怒ってるかな。ちょっと調子に乗りすぎたかも…」と小声で呟くヴラドに同情の気持ちは湧かなかった。
そのわたしの両肩を不意にがしっと掴んだ大きな手のひらに心臓が飛び出る思いをした。
振り返ればガエルがとびきりの笑顔でわたしに笑いかけている。
「なら、ゲーデが抜けた分人手が足りぬだろう。俺様がその抜けた穴を埋めよう!」
「え、いやでも三人でもーー」
人探しできるよと言おうとしたわたしに据わった目をして視線を合わせてきた。目力が凄い。
「頼む聖女殿、俺様も連れて行ってくれ! 後生だ!!」
声のトーンを落とした鬼気迫る要望に察した。
そうか、ツヴァイの書庫の文献確認作業がそれほどまでに辛いのか。あの蔵書量だからまだまだ当分終わらないだろう。文字を読むと眠くなると言っていたけれど本当に苦手なようだ。
それなら人助けと思って推薦しよう。
「あの、ガエルもいてくれたら王子探しもはかどると思うよ。ほら、魔獣に匂いで探してもらうとか」
「魔獣を犬扱いか。だがまぁいいだろう。人手はあったほうが早い。ガエル、お前も参加しろ」
「御意!!」
こんなに情感たっぷりな"御意"は初めて聞いたなと思いながら涙目のガエルに「よかったね」と労いの言葉を送った。
するとガエルはブルースが全開に開けていた窓に駆け寄り窓枠に右足をかけると指笛を吹いた。
綺麗な高音が辺りに響きわたり数秒。
どこからか返事をする様に犬の遠吠えが響いた。
遠くから砂埃が舞い上がりだんだん近づいてくる。
「な、何が来るの?」
砂埃の中から白い影が魔王城の城壁の上に飛び上がり、こちらに一息にジャンプしてきた。
そしてそれは勢いよく前足で窓枠にしがみついてくる。
頭の先から尻尾の先まで10メートルはあるだろう巨躯。鋭く尖った牙にぴんっと立った大きな耳、新雪のように白い毛皮、白い影の正体は巨狼フェンリルだった。
そう、以前魔王支配領域内の瘴気の調査をした際に遭遇して戦い、保護してガエルに預けておいたフェンリルだ(捕獲し丸投げして放置していたとも言う)。
「よーしよしよしよしよし! よく来たなロウ!」
「ワフッ!」
ガエルがわしゃわしゃとフェンリルの頭を撫で回した。フェンリルも嬉しげに目を細め、口を笑みに見える形に開け長い舌を出しガエルの顔を舐めている。ふさふさの尻尾はブンブンと横に振られていた。
あの野性的だった巨狼がまるで飼い犬のように懐いている。
あれからのたった数日でここまでの別人ならぬ別フェンリルにしてしまうとは、ガエルは凄腕の魔獣使いなのだと実感した。
「ほれ、お前の恩人の聖女殿だ。挨拶しろ」
「ワフッ!」
フェンリルはわたしに顔を向けると、窓から室内に入り近づいてきた。見上げる位置にある金色の瞳にじっと見つめられ迫力に固まっていると目の前に立ち止まり顔に鼻先を寄せてきた。そしてふんふんと匂いを嗅ぐとわたしの頬を長い舌でべろりと舐めた。これはよろしくという意味のひと舐めだろうか?
その光景を腰に手を当て眺めていたガエルは満足気にウンウンとうなずいた。
「迎え入れてもらった礼を伝えられて良かったなロウ! 人探しにはこいつの鼻が役に立つ! いざオーランド王国に向かおうぞ!」
そのわたしの両肩を不意にがしっと掴んだ大きな手のひらに心臓が飛び出る思いをした。
振り返ればガエルがとびきりの笑顔でわたしに笑いかけている。
「なら、ゲーデが抜けた分人手が足りぬだろう。俺様がその抜けた穴を埋めよう!」
「え、いやでも三人でもーー」
人探しできるよと言おうとしたわたしに据わった目をして視線を合わせてきた。目力が凄い。
「頼む聖女殿、俺様も連れて行ってくれ! 後生だ!!」
声のトーンを落とした鬼気迫る要望に察した。
そうか、ツヴァイの書庫の文献確認作業がそれほどまでに辛いのか。あの蔵書量だからまだまだ当分終わらないだろう。文字を読むと眠くなると言っていたけれど本当に苦手なようだ。
それなら人助けと思って推薦しよう。
「あの、ガエルもいてくれたら王子探しもはかどると思うよ。ほら、魔獣に匂いで探してもらうとか」
「魔獣を犬扱いか。だがまぁいいだろう。人手はあったほうが早い。ガエル、お前も参加しろ」
「御意!!」
こんなに情感たっぷりな"御意"は初めて聞いたなと思いながら涙目のガエルに「よかったね」と労いの言葉を送った。
するとガエルはブルースが全開に開けていた窓に駆け寄り窓枠に右足をかけると指笛を吹いた。
綺麗な高音が辺りに響きわたり数秒。
どこからか返事をする様に犬の遠吠えが響いた。
遠くから砂埃が舞い上がりだんだん近づいてくる。
「な、何が来るの?」
砂埃の中から白い影が魔王城の城壁の上に飛び上がり、こちらに一息にジャンプしてきた。
そしてそれは勢いよく前足で窓枠にしがみついてくる。
頭の先から尻尾の先まで10メートルはあるだろう巨躯。鋭く尖った牙にぴんっと立った大きな耳、新雪のように白い毛皮、白い影の正体は巨狼フェンリルだった。
そう、以前魔王支配領域内の瘴気の調査をした際に遭遇して戦い、保護してガエルに預けておいたフェンリルだ(捕獲し丸投げして放置していたとも言う)。
「よーしよしよしよしよし! よく来たなロウ!」
「ワフッ!」
ガエルがわしゃわしゃとフェンリルの頭を撫で回した。フェンリルも嬉しげに目を細め、口を笑みに見える形に開け長い舌を出しガエルの顔を舐めている。ふさふさの尻尾はブンブンと横に振られていた。
あの野性的だった巨狼がまるで飼い犬のように懐いている。
あれからのたった数日でここまでの別人ならぬ別フェンリルにしてしまうとは、ガエルは凄腕の魔獣使いなのだと実感した。
「ほれ、お前の恩人の聖女殿だ。挨拶しろ」
「ワフッ!」
フェンリルはわたしに顔を向けると、窓から室内に入り近づいてきた。見上げる位置にある金色の瞳にじっと見つめられ迫力に固まっていると目の前に立ち止まり顔に鼻先を寄せてきた。そしてふんふんと匂いを嗅ぐとわたしの頬を長い舌でべろりと舐めた。これはよろしくという意味のひと舐めだろうか?
その光景を腰に手を当て眺めていたガエルは満足気にウンウンとうなずいた。
「迎え入れてもらった礼を伝えられて良かったなロウ! 人探しにはこいつの鼻が役に立つ! いざオーランド王国に向かおうぞ!」
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