魔王城での聖女生活~異世界に聖女として呼ばれましたが実は世界を守ってた魔王を聖女の力で助けます~

四乃

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第二部

邪なる者と復讐者の戦い①

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ひらりひらりと涼しい顔で放つ魔術をかわす仇をメトセラールは注意深く観察した。憎しみに任せ考えなしにつっこんでは千載一遇の機会を逃すと考えたからだ。放った氷の槍を軽やかに避けた体の重さを感じない対象は呑気に尋ねてきた。


「ねぇ、他に攻撃手段はないの? 飽きてきちゃった」


あくびをする対象に悪意は感じない。ただただ本心を口に出しているのだろう。ならばあえて乗ってやろうと風の魔術で渦を生み出し対象を中心に竜巻状にした。


「ふーん、それから?」


竜巻内に無数の氷の刃を生み出し、竜巻に乗ったそれらは中心に向かって加速し襲いかかった。


「へー、面白い」


楽しげに避けて遊んでいる。この化け物にとってはこの程度の魔術はお遊びか。ならばと今度はその中に雷を落とした。はたして効果があるかは疑問だが。


「ははっ、障害物が増えてより面白くなった」


これもやはり効かないらしい。あとは火の魔術をつかえるが使ったところでなしのつぶてだろう。


「貴様は何者なのだ?」
「ん? 僕に聞いているのかな?」
「わたしは父の持つ遺産すべてを相続し、邪神信仰者らにも探りを入れたがはっきりと断定できておらん。"神子"と呼ばれているがその由来もだ。貴様、これほど魔術を喰らっても平気でかわす。人の身体能力では無理だ。人外か?」
「うーん、半分当たりで半分ハズレかな」
「半分とは?」
「ふふっ、素直に教えてしまうのはつまらないから、僕に一撃入れられたら答えてあげる」
「いいだろう」


それを横目にクイールとカサンドラは魔術を発動直前で止め、睨み合っていた。クイールは苛立たしく裏切り者に詰問した。


「カサンドラ、失望したぞ。公爵については以前から裏切りの疑惑を抱いていたが」
「やっぱり。言葉や閣下を見る目つきから、もしかしたらそうではないかと思っていたのよ。閣下に行動を注意なさるよう進言していて正解だったわね。少しは時間を稼げた」
「ふん。父親の後を継いでから領内を厳しく管理し、我らの活動にあれこれ口を出しては杜撰だとして許可を出さないことがしばしばあった。王に近づき特権を得てオーランドを傀儡政権にし乗っ取ると豪語していたが、先代までの方針と違うため真意は別にあるのではとな。カサンドラ、貴様は我らに幼少の頃から加わった。公爵にはわたしから紹介した。信心深い同志だと信じていたのだが、よもや貴様らグルだったとはな。いつから公爵の手先だった?」
「最初から。閣下に出会ったのちに無関係なふりをしゲオルギオス教に入信したのよ。わたしはね、家族を失い隣村に引き取られた。貰われた先の家では労働力として一日中働いた。時々どうしようもなく家族に会いたくなって廃村になった実家跡にきて泣いて過ごした。そんなある日、一年目の命日に閣下に出くわした。そこでわたしは事件の真相を知り、閣下の元で手足となり復讐者になることを誓った!」


カサンドラは圧縮した風をクイールに放った。それはクイールの風の魔術に相殺され、2人に強風が返ってきた。


「何をいう。奴も我ら側、加害者側だ。復讐対象だろうに!」
「そうよ。わたしは亡くなった全ての人に懺悔を捧げている閣下の言葉であらましを知り、殺意を持って護身用に携帯していたナイフで襲いかかった。けれど所詮10にも満たない子どもの力、簡単に手首を捻り上げられた。喚くわたしの事情を察した閣下は『殺すのは自分が復讐を遂げてからにしてくれ。その後ならば、君に差し出そう』と言った」
「では、奴も殺すと? 忠誠を誓っておきながらか!?」
「ええ、約束を閣下は守るとおっしゃった。だから
閣下に全身全霊で協力し、本懐を遂げた暁には…!」
「はっ、貴様狂っておるわ!」
「その言葉、邪神を崇めるあなたにそっくりお返しするわ!」


今度は火の魔術を互いに放ちすんでのところで互いにかわす。クイールは右袖が焼け、カサンドラは左の頬を掠め編み込まれた髪が一部焼け髪型が乱れた。
クイールとカサンドラの実力は拮抗しているようだった。もし万が一敗れるなどとなったら……崇拝する神子様の面前で失態を演じるのは憤死ものである。そう苛立つクイールは確実に勝利を呼び込むため、ある手を用いることを考えた。
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