1 / 9
第1話 出立
雑用係の野営の朝は早い。
スープは昨夜作っておいた大きな鍋を空間収納から取り出して火にかける。
この空間収納なら熱いまま保存することも可能だけど、いったん冷ますことで具材に味がよく染み込む気がするので、いつもわざとそうしている。
パンも昨夜のうちに仕込んでおいた生地を厚手の金属で出来た蓋つき鍋で焼く。
この鍋は他のいろんな料理にも使えて本当に便利だ。
朝の飲み物は聖女様と賢者様は紅茶、他はコーヒーを好むのでその準備も忘れない。
食器の準備も整えて声をかける。
「皆さん、おはようございます!朝食の支度ができましたよ」
私は冒険者ギルドから魔王討伐パーティの活動を支援するための雑用係として派遣された。
正式には後方支援役という名称らしいが、一般的に雑用係の方がすっかり馴染んでいる。
実は募集に対して手を挙げる者が誰もおらず、顔なじみのギルドマスターから直接頼み込まれて引き受けた。
ベテランの有能な雑用係は各冒険者パーティが囲い込んでいて専属扱いになっているし、私のようにその都度雇われる者もそれなりにいるけれど、高報酬でも拘束される期間が長いことがネックになったようだ。
魔王討伐の出陣式は王宮で開かれ、王都では華やかな壮行パレードも行われた。
裏方である私はひたすら準備で走りまわっていたので、まったく見ていないけれど。
冒険者ギルドは独自のつながりを持っているので、私に役目を押し付けたギルドマスターに頼んで各地の冒険者ギルドに協力を依頼してある。
野営は数え切れないほど経験しているから慣れているし、生活魔法もそれなりに使えるから普段とやることは変わらないけれど、問題は魔王討伐パーティの面々とうまくやれるかどうかだった。
魔王討伐が必要になった時、女神様に選ばれた人達の身体に紋章が現れる。
当代の魔王討伐パーティは4人。
勇者様は上級冒険者として活動していたけれど実は伯爵家の三男。
聖女様は大聖堂に仕えているけれど侯爵家のご令嬢。
魔術師様は魔法庁長官である公爵様の次男。
賢者様にいたっては国王陛下の一番下の弟君ときたもんだ。
平民より貴族の方が魔力が多いため、歴代の魔王討伐パーティもほとんどが貴族だったと聞いている。
孤児院育ちのしがない冒険者の私が、はたして貴族様ばかりの中でやっていけるのか?
何か無礼があったらどうしよう?
というか、何がよくて何が悪いのかさえさっぱりわからないんだけど。
そんな不安は最初の顔合わせで解消された。
「俺はずっと冒険者としてやってきたから気を遣わなくていい。そしてお前も含めてこのパーティでは本来の身分は関係なしで対等な関係でいく、ということで全員の了承を得ている。だからお前も言いたいことがあれば遠慮とかするなよな」
上級冒険者として多くの冒険者達の憧れや尊敬の対象である勇者様がそう言ってくださった。
私に出来ることを全力で取り組もう。
そう思った。
壮行パレードは派手だったらしいが、魔王討伐パーティは地味な馬車でひっそりと王都を出立した。
地味なのは見かけだけで、仕様は最高級なんだけどね。
2頭立ての馬車で、どちらもとてもいい馬だ。
勇者様は自分の馬に乗って移動するので、馬車に乗っているのは魔術師様と聖女様と賢者様の3人。
そして私の定位置は御者台。
馬車の扱いも慣れているから何の問題ない。
「おい、問題ないか?」
時々勇者様が声をかけてくれる。
「はい。こんなにいい馬車を扱うのは初めてで、ちょっと緊張してますけど大丈夫です」
「そうか。無理すんなよ」
スープは昨夜作っておいた大きな鍋を空間収納から取り出して火にかける。
この空間収納なら熱いまま保存することも可能だけど、いったん冷ますことで具材に味がよく染み込む気がするので、いつもわざとそうしている。
パンも昨夜のうちに仕込んでおいた生地を厚手の金属で出来た蓋つき鍋で焼く。
この鍋は他のいろんな料理にも使えて本当に便利だ。
朝の飲み物は聖女様と賢者様は紅茶、他はコーヒーを好むのでその準備も忘れない。
食器の準備も整えて声をかける。
「皆さん、おはようございます!朝食の支度ができましたよ」
私は冒険者ギルドから魔王討伐パーティの活動を支援するための雑用係として派遣された。
正式には後方支援役という名称らしいが、一般的に雑用係の方がすっかり馴染んでいる。
実は募集に対して手を挙げる者が誰もおらず、顔なじみのギルドマスターから直接頼み込まれて引き受けた。
ベテランの有能な雑用係は各冒険者パーティが囲い込んでいて専属扱いになっているし、私のようにその都度雇われる者もそれなりにいるけれど、高報酬でも拘束される期間が長いことがネックになったようだ。
魔王討伐の出陣式は王宮で開かれ、王都では華やかな壮行パレードも行われた。
裏方である私はひたすら準備で走りまわっていたので、まったく見ていないけれど。
冒険者ギルドは独自のつながりを持っているので、私に役目を押し付けたギルドマスターに頼んで各地の冒険者ギルドに協力を依頼してある。
野営は数え切れないほど経験しているから慣れているし、生活魔法もそれなりに使えるから普段とやることは変わらないけれど、問題は魔王討伐パーティの面々とうまくやれるかどうかだった。
魔王討伐が必要になった時、女神様に選ばれた人達の身体に紋章が現れる。
当代の魔王討伐パーティは4人。
勇者様は上級冒険者として活動していたけれど実は伯爵家の三男。
聖女様は大聖堂に仕えているけれど侯爵家のご令嬢。
魔術師様は魔法庁長官である公爵様の次男。
賢者様にいたっては国王陛下の一番下の弟君ときたもんだ。
平民より貴族の方が魔力が多いため、歴代の魔王討伐パーティもほとんどが貴族だったと聞いている。
孤児院育ちのしがない冒険者の私が、はたして貴族様ばかりの中でやっていけるのか?
何か無礼があったらどうしよう?
というか、何がよくて何が悪いのかさえさっぱりわからないんだけど。
そんな不安は最初の顔合わせで解消された。
「俺はずっと冒険者としてやってきたから気を遣わなくていい。そしてお前も含めてこのパーティでは本来の身分は関係なしで対等な関係でいく、ということで全員の了承を得ている。だからお前も言いたいことがあれば遠慮とかするなよな」
上級冒険者として多くの冒険者達の憧れや尊敬の対象である勇者様がそう言ってくださった。
私に出来ることを全力で取り組もう。
そう思った。
壮行パレードは派手だったらしいが、魔王討伐パーティは地味な馬車でひっそりと王都を出立した。
地味なのは見かけだけで、仕様は最高級なんだけどね。
2頭立ての馬車で、どちらもとてもいい馬だ。
勇者様は自分の馬に乗って移動するので、馬車に乗っているのは魔術師様と聖女様と賢者様の3人。
そして私の定位置は御者台。
馬車の扱いも慣れているから何の問題ない。
「おい、問題ないか?」
時々勇者様が声をかけてくれる。
「はい。こんなにいい馬車を扱うのは初めてで、ちょっと緊張してますけど大丈夫です」
「そうか。無理すんなよ」
あなたにおすすめの小説
私と母のサバイバル
だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。
しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。
希望を諦めず森を進もう。
そう決意するシェリーに異変が起きた。
「私、別世界の前世があるみたい」
前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?
《完結》悪役聖女
ヴァンドール
ファンタジー
聖女になり、王妃となるため十年間も教育を受けて来たのに蓋を開ければ妹が聖女の力を持っていて私はには聖女の力が無かった。そのため祖国を追放されて隣国へと旅立ったがそこで……
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
精霊に愛される(呪いにもにた愛)少女~全属性の加護を貰う~
如月花恋
ファンタジー
今この世界にはたくさんの精霊がいる
その精霊達から生まれた瞬間に加護を貰う
稀に2つ以上の属性の2体の精霊から加護を貰うことがある
まぁ大体は親の属性を受け継ぐのだが…
だが…全属性の加護を貰うなど不可能とされてきた…
そんな時に生まれたシャルロッテ
全属性の加護を持つ少女
いったいこれからどうなるのか…
追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている
潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。
きっと幸せな異世界生活
スノウ
ファンタジー
神の手違いで日本人として15年間生きてきた倉本カノン。彼女は暴走トラックに轢かれて生死の境を彷徨い、魂の状態で女神のもとに喚ばれてしまう。女神の説明によれば、カノンは本来異世界レメイアで生まれるはずの魂であり、転生神の手違いで魂が入れ替わってしまっていたのだという。
そして、本来カノンとして日本で生まれるはずだった魂は異世界レメイアで生きており、カノンの事故とほぼ同時刻に真冬の川に転落して流され、仮死状態になっているという。
時を同じくして肉体から魂が離れようとしている2人の少女。2つの魂をあるべき器に戻せるたった一度のチャンスを神は見逃さず、実行に移すべく動き出すのだった。
女神の導きで新生活を送ることになったカノンの未来は…?
毎日12時頃に投稿します。
─────────────────
いいね、お気に入りをくださった方、どうもありがとうございます。
とても励みになります。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。